声優・上田瞳インタビュー#3「『代えがきかない声優』になるために」
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2026.07.03
「ウマ娘 プリティーダービー」のゴールドシップ役をはじめ、「来世は他人がいい」の染井吉乃役、「気絶勇者と暗殺姫」のアネモネ役など、力強い声と繊細な表現力を活かした演技力で数々の話題作で鮮烈な印象を残し続ける上田瞳さん。このインタビューでは、全3回にわたってその意外な素顔から役作りまで、出演作品とキャラクターを振り返りながら、その人となりに迫ります。
■再生回数300万回超えの「サンキューピッチ」阿川先生

――YouTubeの「ジャンプラチャンネル」公式動画で、「サンキューピッチ」の阿川先生をいろいろな声優さんが演じていますよね。なかでも、上田さんの回は評判でした...!
「ありがとうございます...(笑)。でも、あの動画に関しては、正直私の回はズルいんですよ! ほかの方々は作品のシリアスなシーンだったり、長めのシーンをしっかりお芝居として演じてらっしゃるのに、私だけ阿川先生の一発ギャグのようなシーンを3~4連発で繋げてますので...」
――いや、阿川先生へのハマり方が本当に尋常じゃなかったですよ...!どんなことを意識して演じたんでしょうか?
「まずは理想の先生像になるといいな、と思って収録に臨みました。じつは原作を読んだときに、『初登場のときとそれ以降でもしかしたら見せ方が少し変わっているのかも...?』と感じたんです。
きっと『初登場時のインパクトを期待して、私をキャスティングしてもらえたのかな』と思ったので、そこは私なりの解釈で表現をしっかり見せたいなと思って」
――あの短いセリフのなかでも生徒との距離感とか、阿川先生のキャラのリアリティが抜群でしたよね。
「イメージは、いわゆる『気のいい体育会系の部活の顧問の先生』なんです。学校に一人はいるじゃないですか、『お前らやってるかー?』ってラフに部屋に入ってくるおじさん先生(笑)。そのパブリックイメージを土台にして、そこに阿川先生独自の『乙女成分』を足して肉付けしていきました」
――おじさん先生に、乙女成分を...(笑)。現場ではどんな反応でした?
「『上田さん、ちょっと酔いすぎです』って言われたりもしました...(笑)。私としては全然、酔っ払ってるつもりはなくて、あくまで『気のいいおじさん先生』の延長だったんですけど(笑)」
――おもしろすぎる(笑)。じつは、ファンの間でも「阿川先生って、絶対に上田さんの声でしょ」と、原作の段階から解釈一致の声が多く上がっていたそうです...!
「ありがたいことに、そういう声を私自身もじつはちらほら耳にしていて...。だから本当にオファーをいただけたときは『やった、キャスティングしてもらえた!』ってすごく嬉しかったです。でも、現場に行ったら『今回は、原作サイドの方の指名でお仕事をもらいました』という裏話を伺って、逆にすごいプレッシャーでした(笑)」
――そうだったんですね。今日(インタビュー日)時点で、あの動画の再生回数300万回を超えていて、すごいことになっています...!
「ありがたいことに、少年ジャンプ+のチャンネルの中で再生回数1位の動画になっているみたいで...。でもこれもズルくて、他の方の新しい動画が出るたびに、『よし、上田のやつ、もう1回聴いておくか』ってループ再生してもらえてるみたいで。比較してもらえる対象になれたのはラッキーでした(笑)」
――めちゃ謙虚...。
「あ、でもこの結果がなんとか次のお仕事に繋がらないかな、とは心の底から思っていますよ!(笑)。関係者のみなさま、お仕事お待ちしていますね!」
■息遣い、2文字の生返事に感じた先輩声優のすごみ

――現場で刺激を受ける共演者の方々はいらっしゃいますか?
「直近で言うと、やっぱり石田彰さん、平田広明さんですね。大先輩方で、いまでもご一緒させていただくと緊張するんですけど、本当に圧倒的で。とくに、私は短いセリフになればなるほど、役者としてのすごみが出ると思っているんです」
――短ければ短いほど、ごまかしが効かない?
「そうなんです。たとえば、前々回のインタビューでもお話した『来世は他人がいい』の現場で、私が演じる吉乃が水族館で深山霧島(cv:石田彰さん)にグッと腕を引かれるシーンがあるんですね。その腕を引くときの石田さんの『息遣いのお芝居』が、もう素晴らしすぎて...!」
――なんと。もう一度見返したい...!
「その一瞬の息の音だけで、霧島が吉乃に対してどんな感情を抱いているのか、なにを考えているのかがものすごく伝わってくるんです。現場では、テストのときにそのお芝居を石田さんがやっていらっしゃったんですが、本番の収録では音声の被りを防ぐために、そこだけ別録りをすることになって」
――本番では、その息遣いを聞くことはできなかったんですね。
「そうなんですよ! 本当はあのリアルな声を聴いた状態でしゃべりたかったんですが、それは難しくて。テストのときに受けた、あの衝撃を必死に頭の中で思い出しながら本番に臨んでいました。それくらい強烈に心に残り続けるお芝居でしたね」
――それだけ短いお芝居でも、キャラの感情を表現することができるんですね...。
「そうなんですよ。もう一つ、アニメ『片田舎のおっさん、剣聖になる』の現場では平田さん演じるベリル先生が、中盤以降のシーンでアリューシアに対して『ああ』って生返事をする場面があるんです。その何気ない返事のトーンが、もう本当にすごい...」
――そこに、どんなすごみを感じたのでしょう。
「ベリル先生がアリューシアに対して抱いている複雑な感情や、その瞬間の気持ちが、その『ああ』にぎゅっと凝縮されているんですよ。『こういう理由だからこういう感情でしゃべろう』と頭で考えながらお芝居をしていたら、絶対に出ない声でした」
――たった一言でも、そこまでわかるんですね。
「声って、狙って計算して言っていたら、聞いてる側にも『いま考えてから喋ったな』ってわかっちゃうじゃないですか。だから、考えて話すとそれも含めた表現になってしまうんですね。そうではなくて、とっさに出た生々しい『ああ』なのに、それが完全にベリル先生の言葉になっている。平田さんが役としてそこにちゃんと立っているからこそ、溢れ出た表現なんだなと思って、本当に衝撃を受けました」
――アニメを見ていると、逆に自然すぎて素通りしてしまいそうです。でもその一瞬に、声優さんのすごさが詰まっているんですね...!
「そう、文字数としてはたった2文字だったり、セリフにすらなっていない息の音だったりするけど、そこに詰まっているものはすごく濃くて深い。客観的な理屈を介さずに、ダイレクトにお客さんの心に感情を伝える表現なんです。きっと、心からその役に入りきっていないと出せないものだと思うので、そういうお芝居を間近で見るたびに、『私もいつか、先輩方のようなお芝居ができるようになりたい』と感じさせてもらっています」
■自分のピークを更新し続けられるような声優でありたい

――声優としての今後の目標などはありますか?
「声そのものを変えて演じ分けるのではなくて、しゃべり方や声の動き、抑揚の付け方によってまったく違う別人になれる。そんなお芝居ができる先輩方を尊敬しているので、私も、声質に頼りすぎず演じ分けができるようになれたら、と思っています」
――声のトーンではなく、お芝居のニュアンスで別人に見せる?
「『キャラクター』じゃなくて『生きている人間』を表現できるようになる、といったほうが近いでしょうか。作品にもよるかもしれませんが、記号的なキャラがしゃべっているんじゃなくて、『そこに人間が立ってしゃべっているよね』って言ってもらえるような、血の通ったお芝居ができるようになりたい、というのがいまの目標です」
――その先に考えていることもありますか?
「いろんな作品やコンテンツ、番組に関わり続けて、とにかくお仕事をずっと長く続けていけるような存在になりたいですね。自分がいろんな作品に関わらせていただけるようになって、スタッフのみなさんとお話していくなかで気づいたんですけど、私のお芝居って、結構、極端なことが多いなと感じていて...。オーディションでも『このキャラクターは上田さんしかいないよね』ってドハマりしたときに決まることが多いなと思っているんです」
――そうなんですか...?!
「じつは以前、ある音響監督さんからも『お前はヒットを狙いに行くな。ホームランか、三振しろ』って言われたことがあるんですよ。『その分、オーディションに受かる数は減るかもしれない。でも、当たったときに代えがきかないドハマりする役と出会えるし、それこそが息を長く続けていける声優だと思うから、上田はそこを目指せるような役者になった方がいい』って言ってくださって。確かに...!と納得しました」
――その音響監督さんから見て、それだけ上田さんが個性的、ということだったんでしょうか?
「たしかにそのとき『上田って、ちょっと変わってるんだよな』とも言われました。でも、私自身には変わったことをしている自覚がまったくなかったから、自分の個性をどうやって守っていけばいいのか、そのバランスはちょっとまだ自分の中で模索中なんですけどね」
――きっと、アニメファンの間では「この役、やっぱり上田さんだった!」というくらいには、存在感と個性が浸透してると思いますよ...!
「本当ですか!? いつも、それ伝えてほしい(笑)。じつは、これまでのキャリアを振り返ると、オーディションではつねに偉大な先輩方と戦うことが本当に多くて。『やっぱりこの方に負けたか、またダメだった......』って悔しい思いをすることが数え切れないくらいあったんです。でも、石田さんをはじめとする素晴らしい先輩方といろんな現場でご一緒してきて、ちょっとずつ自分も成長できているんじゃないかとは思うんです」
――きっと大きな経験になってると思います。
「そうやって重ねてきたキャリアが、演出やお芝居と少しずつ噛み合ってきたからこそ、いま出会える作品が増えてきたのかなって。だからこそ、ここから『いまがピーク』にならないように、つねに自分のピークを更新し続けられるような声優でありたいですね」
■勝気な性格の奥に、ほのかに香る品格|「片田舎のおっさん、剣聖になる」スレナ・リサンデラ

(C)佐賀崎しげる・鍋島テツヒロ/SQUARE ENIX・「片田舎のおっさん、剣聖になる」製作委員会
――世界的にも人気な「片田舎のおっさん、剣聖になる」では、スレナ・リサンデラを演じられています。演じるにあたってどんなことを意識されていたんでしょうか。
「スレナはブラックランクという最上位ランクの冒険者なので、強者としての自信と、あとはちょっとした品格を、"フレグランス"程度に込められたらいいなと思っていました。乱暴になりすぎてほしくない、というか...」
――それはどんな思いからきているんですか?
「スレナって、両親を亡くして、ベリル先生のご家庭で守っていただいた期間があったからこそ、強くなりたいと願って、先生に才能を見つけてもらったわけです。けれど、もし魔物に襲われていなければ、ごくふつうの町娘だったと思うんですよ。たしかにキャラのカテゴリでいえば、勝ち気でワイルド、クールな騎士のアリューシアと対比される存在なので、粗暴に聞こえるセリフも多い。けれど、私はスレナのことをギルドを通した一人の『社会人』だと思っているんです。生まれ育った環境も含めて、一本の品がある、ブレない強さみたいなものが彼女にはあるんじゃないかなって」
――生まれ持っての「気の強さ」というよりも、環境によってそうなった、ということですね。
「そうなんです。じつは第1話の収録のときに、原作の佐賀崎先生も来てくださっていて。そのときに私から佐賀崎先生に、自分の解釈をお話ししてみました。スレナは、アリューシアに対しては『負けたくない』って気持ちがあるから、幼なじみの小競り合いのような態度を取るけれど、ベリル先生に対しては恩義を感じている。だからこそ、きっちりと礼節を持って接するはずだし、人として、『社会人』としての線引きをちゃんとしていると思うんですけど、どうでしょう、と。そしたら佐賀崎先生からも『その感じでやってみましょう』と言っていただけて。そこは、自分の中でもあんまりブレさせたくないなと思っていた部分だったので、すごく覚えています」
■ギャップある多彩な表情と面倒見の良さ|「片田舎のおっさん、剣聖になる」スレナ・リサンデラ

(C)佐賀崎しげる・鍋島テツヒロ/SQUARE ENIX・「片田舎のおっさん、剣聖になる」製作委員会
――上田さんが思う、スレナの魅力ってどんなところですか?
「ギャップ...ですね。アリューシアには露骨にライバルとしての顔を見せるし、ちょっと幼稚なケンカもする。ほかの人には、ブラックランクの冒険者としてプライドを持って仕事をする。いわゆるスレナの"社会人"的な部分。一方で、ベリル先生に見せる素直さ、というか子どもっぽさ、みたいなものも、演じるうえですごく意識していました。そこが彼女のかわいいところですよね。そんなふうに、いろんなギャップある表情を持つのが彼女の魅力だなって感じています」
――ご自身とスレナで感じている、共通点はありますか?
「いや、共通点はない......かな。ないとは思うんですけど(笑)、面倒見がいいところには、すごく親近感が湧きます」
――どんなところにそれを感じるんでしょうか?
「ギルドで新人を教育していたり、ベリル先生のところでお世話になることになったミュイという子に対しても、お姉さんとして接したり。『先生のことを舐めるなよ』なんて言いながらも、結局はミュイの面倒をちゃんと見てあげているので、そういうシーンには、なんだか親近感を覚えますね。けっして私が自分のことを面倒見がいいと思っているわけではないんですけど、スレナのそういう振る舞いを見ていると『いいな』って思います」
■背中で語り引っ張ってくれたベリル役の平田さん|「片田舎のおっさん、剣聖になる」スレナ・リサンデラ

――アフレコ現場での思い出についても教えてください。
「第一期の頃、プロモーション系のお仕事が増えていくにつれて、ベリル先生役の平田広明さんとの距離がグッと縮まる感じがしたんです。アリューシアの東山奈央ちゃんが間に入ってくれて、ベリル先生のお弟子さん役みんなで何度か飲みに行ったりして。第二期の収録が始まる頃には、弟子チームがすごく仲良くなっていたので、すごくいい雰囲気で収録にのぞめていたと思います」
――作品と同じく、平田さんが師匠って感じで?(笑)

(C)佐賀崎しげる・鍋島テツヒロ/SQUARE ENIX・「片田舎のおっさん、剣聖になる」製作委員会
「そうですね、平田さんは背中で語ってくださるタイプの師匠でした(笑)。こちらがうまくいかなかったときのフォローがすごくやさしくて、本当、紳士なんですよね。あるときは、自分が収録のときにほかのお仕事と重なっちゃって、遅れて収録に参加したことがあったんです。で、私は自分の分だけ抜き(ほかの声優と別で収録すること)で録るものだと思ってたら、平田さんが私のセリフに付き合ってくださって...!」
――ええ、素敵...!
「もう、心遣いがすごい。言葉多くアドバイスをくれるというよりも、空気感がみんなを引っ張ってくれる感じがしていました。収録終わりにも、平田さんが声をかけて何回か飲みに行く機会を作ってくださったり、本当に素敵な方でした」
――そういう方がいらっしゃると、現場に信頼感が生まれそうですね。上田さんの中で、印象に残っているスレナのセリフなどはありますか?
「そうですね、具体的にどのシーン、というわけではないんですが、アリューシアと早口で言い合うシーンはやっぱり思い出深いですね。元々、あの作品は全体的にセリフが少し早めなんです。それがベースなので、言い合いだと、もう一段階さらに早いしゃべりをしなきゃいけないので、なかなか大変だったんです。だから、OKテイクが取れたときは奈央ちゃんと『やったー!』って一緒に喜んで(笑)」
――バチバチ火花散らしてたやりとりからの仲良し、想像するとおもしろいです(笑)。
「それくらい達成感がありましたね(笑)。あとは、やっぱりベリル先生に対してのセリフも。スレナの場合、アリューシアと違って先生に対しては恋心と違う感情を、先生に対して持っていると思うんですよね。感謝、というか。だから、なんとなく父とか兄とかに対する思いに近いイメージを意識していました」
――そういう存在に近いんですね。
「一緒に収録していると、そういう感謝の気持ちを自然と起こさせてくれる平田さんと同じ現場に入れたことは、私にとってはすごくいい経験になったと思います。そんなスレナが抱く感情にも注目して、第一期を見返していただけたら嬉しいです」
■へたに"愛されるクズ"にしちゃいけない!|「真夜中ぱんチ」十景

(C)2024 KADOKAWA/P.A.WORKS/MAYOPAN PROJECT
――"マヨぱん"の愛称でも親しまれる「真夜中ぱんチ」では、お金に目がないヴァンパイア・十景(トカゲ)を演じられています。アフレコ現場はどんな雰囲気でしたか?
「やっぱり現場ではファイちゃん(ファイルーズあいさん)が話題の中心にいて、みんなを引っ張ってくれていましたね。あとは、伊藤ゆいなちゃんがこの作品で初めてのレギュラーだったらしくて。初めてだからこその緊張や、わからないことも多かったと思うんですけど、そこを茅野愛衣さんがやさしく支えたり、絶妙なフォローを入れていたのをよく覚えています。座長のハセミ(長谷川育美さん)も、本当にみんなのことをすごく気遣ってくれていました」
――作中の5人の息の合った掛け合いからも、その仲の良さが伝わってくるようでした。
「アフレコ当時は、ご時世的に人数を絞ってのグループ収録だったんですが、あの作品はコメディーですし、なにより5人の空気感を大事にしたいということで、『マヨぱんメンバーは全員揃って録る』というのが必須条件だったんです。なので、私たちはいつも5人一緒に収録していました」
――そうだったんですね...!
「『どんな作品でも、現場の仲がいいに越したことはない』と私は思っていて。ベタベタと、過剰に距離感を近づける必要はないですが、緊張感がありすぎると、ガチガチになって本来の力が出しきれないこともあると思うんです。とくに新人の頃は。緊張しすぎない空気感はすごく大事だと思うので、みんなで賑やかに、のびのびと、いい意味でそれぞれがやりたいことを勝手にやれるあの環境は、コメディーの作品としてはすごく大切だったと思います」
――十景を演じるにあたっては、どんなことを意識されていましたか?
「彼女のセリフって、たとえば『~だったのさ』みたいに、独特のセリフ回しがすごく多いんです。一歩間違えるとおばちゃんっぽくなりかねないような...(笑)。だから、語尾はしゃくるように工夫して、少しだけかわいげが出るようなニュアンスを意識していました。意識しないと、つい忘れそうになってしまうので、つねに心の底に置いていましたね」
――前回のインタビューで、上田さん自身は「クズな役が多い」ということで、この十景の名前も挙げていましたが、改めて十景のクズな部分はどんなふうに役作りをしていったんでしょうか?(笑)

(C)2024 KADOKAWA/P.A.WORKS/MAYOPAN PROJECT
「『こう言われたらちょっとウザいな』って相手が感じるような言い方を台本を読みながらいろいろ考えてました(笑)。自分でも言いそうなナチュラルなセリフを、"クズっぽいニュアンス"に変えたいときは、とにかく『人の顔色を一切伺わない言い方』をするようにしてみたり、いい具合に鼻につくようにハッタリをかます感じにしてみたり」
――十景の目の前に立っていたとして、言われたらイラっとする表現を探していったんですね(笑)。
「はい(笑)。やっぱり十景がクズだからこそ、周りが怒ったり呆れたりして、ギャグとしての会話がカチッと成立するんですよね。それに、十景に関しては、へたに『愛されるクズ』にしちゃいけないなとも思っていて。『クズすぎるからこそ、そこがいい』というキャラなので、かわいさを強調するような小細工は一切せず、徹底的にナチュラルなクズを表現したくて、演じていました(笑)」
■最後まで成長しない部分があるのが、またいい|「真夜中ぱんチ」十景

――「真夜中ぱんチ」の中で、とくに印象に残っているエピソードを教えてください。
「個人的には、十景の初登場回だった第3話ですね。パチンコ屋や牛丼屋のくだりなど、オーディション原稿のセリフがほぼすべて詰め込まれていたんです。だから『ここが十景の最大の魅せ場だ!』と思って、かなり気合を入れて臨みました」
――初登場シーンながら、十景の強烈なキャラクターが一発で伝わってきました(笑)。

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「ありがとうございます(笑)。初登場回でOPに入る前の『いいね』っていうセリフも、ふつうならテンション高く言うほうがキャラっぽいんですが、あえてフックにしたくて低めのトーンでしゃべってみたんです。ちょっと狙いに行った感じではあったんですけど、現場でも好評で嬉しかったですね。逆に、第3話で気合を入れ切ったので、それ以降の話数はいかに『クズなガヤ』として場を賑やかせるかっていう部分を意識していました(笑)」
――「クズなガヤ」はパワーワードですね(笑)。チーム全体としての思い出の回というと?
「やっぱり、みんなで無人島に行った第6話ですね。収録自体もすごく楽しかったですし、スタッフさん側からも『ここでおもろいことやってほしい!』っていう熱量と期待をビシバシ感じて(笑)。プレッシャーもありつつ、みんなでキャッキャしながら録っていました」

(C)2024 KADOKAWA/P.A.WORKS/MAYOPAN PROJECT
――無人島回も、しっかりガヤ役に徹していたわけですね(笑)。
「本当、賑やかし担当でしたね。みんなでいるときの十景は、ヒナ壇から立ち上がって『なんでだよ!』とツッコむ芸人さんのイメージで、どれだけ場を盛り上げられるかが鍵だと思ってましたから」
――作品全体の魅力については、上田さんはどう感じていますか?
「結構、好き嫌いが分かれる作品だとは思うんですけど、私は主人公の真咲も、十景とは別の意味でちゃんと『クズ』なのがすごくいいなと思っていて(笑)。いまは、アニメもたくさんあって、ある程度内容が安定していないと最後まで見てもらえなかったりするじゃないですか。そのなかで、真咲がクズだからこそ『この先どうなっていくんだろう』って見続けたくなる魅力があるんですよね」
――クズだけど...というより、クズだからこそ見たくなる(笑)。
「そう(笑)。ハセミのお芝居も本当に素晴らしくて。私は元々、彼女の表現力が大好きなんですけど、今回の現場でも真咲の魅力がストレートに伝わってきたんですよね。物語の始まりは、真咲が動画撮影のチームメイトを殴って脱退するところからスタートするじゃないですか。そして、最終話ではヴァンパイアたちにドッキリを仕掛けられて、怒ってチームメイトを殴って終わる(笑)。きれいに、始まりと終わりが繋がるという...」
――たしかに"パンチ"に始まり、"パンチ"に終わってますね...!
「仲間を通して変わっていく部分や、絆が深まっていく部分はもちろんあるんですけど、結局最後は手が出ちゃうっていう、変わらないクズさもちゃんと残っている。そのバランスがすごく綺麗だし、"マヨぱん"らしくて大好きなんです。最近は能力やスキルが上がっていく作品が多いなか、こういうどうしようもない泥くささ、変わらなさ、人間くささを見せてくれる作品だったのが、すごくよくて。ある意味、スポ根にも通じる熱い気持ちとか、気持ちのぶつかり合いとかもあるし。元々、スポ根系のジャンルも好きなので、いつかそういう作品にも出演してみたいな、と私の中で夢も広がった作品でした」

取材・文/郡司 しう 撮影/梶 礼哉




