アニメ「Dr.STONE」完結記念インタビュー!松下周平監督が明かす「作品の肝となるエピソード」制作秘話

アニメ「Dr.STONE」完結記念インタビュー!松下周平監督が明かす「作品の肝となるエピソード」制作秘話

ある日、謎の光によって石となった地球上の全人類。それから約3700年後、自力で復活した科学少年・千空が、仲間たちと共にゼロから文明を築き上げていく――。原作・稲垣理一郎、作画・Boichiによる人気コミックを原作としたアニメ「Dr.STONE」が、ついに最終回を迎えた。テレビスペシャル「Dr.STONE 龍水」からシリーズに参加し、最終シーズンまでを手掛けたのが松下周平監督だ。長年連れ添った友達との別れのような寂しさをにじませる松下監督に、作品の本質、アニメ化へのこだわり、そして完結への思いを聞いた。

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――シリーズ完結まで走り切っての率直なご感想をお聞かせください。

「私自身、シリーズ途中からの参加とはいえ、4年以上関わってきたので、『終わった』と言われても最初は寂しいというか、毎日会っていた友達に急に会えなくなるような感覚がありました。ですが、無事に最後まで走り切れたことはやはりうれしかったです。物語の最後までアニメ化できる作品は決して多くないので、終わりまで描き切れたのは本当に恵まれていたと思います」

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――改めて、「Dr.STONE」という作品の魅力をどのように感じていますか?

「『今あるものを再発見できる』作品だと思っています。普段当たり前に使っているものにも、実は長い歴史がある。千空たちが巨大なスマホを一から作り、それが少しずつ現代のサイズへ近づいていく過程にも、科学史の積み重ねを感じていました。また、『適材適所』も大きなテーマだと思います。千空がどれだけ天才でも、一人では科学は成立しない。大樹の力やクロムの発想力など、それぞれの役割があって初めて前に進める。科学だけでなく、人間の力をとても大切にしている作品だと感じました」

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――科学に詳しくない視聴者にとって、入口になるキャラクターは誰だと思っていましたか?

「クロムですね。ゼロベースで物事を考えられるキャラクターで、『本当にそれでいいのか』という本質的な視点を持っている。視聴者に一番近い存在だったと思います」

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――終盤で『科学の加速度』を象徴していた存在は誰だったのでしょうか?

「やっぱりDr.ゼノですね。千空だけの力では月には行けなかったと思いますし、ゼノという教師でありメンター(指導者・相談相手)が現れたことで、全ての歯車がかみ合った感覚がありました。物語後半のスピード感は、現実世界で1960〜70年代以降にコンピューターが普及し、一気に科学が加速していった時代とも重なるものを感じていました」

――アニメ化にあたって、特に大切にしていたことは何でしょうか?

「テンポ感は一番意識していました。『ジャンプ』を読んでいる時のスピード感を、そのままアニメでも再現したかったんです。子どもたちが見ていることも強く意識していましたし、内容が難しくなりすぎないよう、原作にあるギャグや顔芸も大切にしました。そういう緩急がないと、後半の難しい科学の話についていくのがしんどくなってしまうんですよね」

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――色彩や演出面でのこだわりも印象的でした。

「第4期ではアメリカ大陸へ行くので、日本とは空気感や湿度も全く違う。美術監督と相談しながら、美術ボードからもかなり作り直しました。植物の植生や川の色、石の色、炎の温度による色の違いまで、とにかく調べました。原作はモノトーンなので、映像化する際には『これは何色なのか』を決めないといけないんです。『科学に関してはうそがないように』というのは、この作品の根幹だと思っていました。説明しなくても、『違う場所に来た』と視覚的に伝わる映像を目指していました」

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――第4期23話「ひとりぼっちのサイエンティスト」は、特に大きな反響を呼びました。

「原作で読んだ時から、『この作品の肝になるエピソードだ』と思っていました。脚本段階から、どこで盛り上げるか、どこで区切るか、かなり試行錯誤しましたね。一時は、『千空を復活させたところで2クール目を終える』という案もあったくらいでした」

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――アニメオリジナルの描写も印象的でした。

「『一回失敗しても諦めずにやる』という描写は絶対に必要だと思っていました。なので、スイカが硝酸畑を守るために屋根を作ったり、失敗しても何度もやり直したりする、トライ&エラーの過程を追加しました。科学監修のくられ先生から、江戸時代の文献や当時の天候への対策など情報をいただいて、リアリティーのある失敗とリカバリーを描いていきました」

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――制作現場の熱量も大きかったそうですね。

「本当にすごかったです。多くのアニメーターや演出家が『あの回をやりたい』と言って集まっていました。それまで仲間たちが石化していくストレスフルな展開が続いていたので、現場にとっても救いになるエピソードだったんです。あと、個人的には生活感をすごく大事にしていて。スイカの家の中をかわいくしたり、食事シーンを細かく描いたりもしました。そういう部分からキャラクターの感情が見えるのが好きなんですよね」

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――エンディング演出も話題になりました。

「映像とのタイミングを合わせるために、第2クールエンディングテーマの音羽-otoha-の歌う『no man's world』をレーベルに相談して曲の長さを調整していただいたりもしました。皆さんのおかげで、納得のいく形になったと思っています。そして、スイカ役の高橋花林さんが本当に素晴らしかった。ほぼ一人芝居の30分を演じ切っただけでなく、幼い頃のスイカと、7年後の成長した声までしっかり演じ分けてくださいました」

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――ホワイマンの描写で意識されたことはありますか?

「ホワイマンの集合体は、異質感や気持ち悪さを出すために3DCGで表現しました。ぬらぬら、ぐにゃぐにゃと動く感じですね。かなり実験を繰り返して今の形に落ち着きました。でも、この作品って、最終的に『倒す』ではなく『理解しようとする』んですよね。そこがすごく『Dr.STONE』らしいと思っていました。最後に一人だけついてきたホワイマンが、『面白そうだから来た』というのも、この作品の本質だと思っています。本当の意味での悪人はいなくて、思想の違いで対立しているだけなんです」

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――最後に、ファンの皆さんへメッセージをお願いします。

「皆さんのおかげで、月までたどり着くことができました。本当にありがとうございました。改めて1話から見返すと、千空のとがり方やキャラクターたちの成長も感じられると思いますし、稲垣先生の鮮やかな伏線回収にも改めて驚くと思います。ふと月を見上げた時に、『ああ、あそこまで行ったんだな』と、千空たちのことを思い出してもらえたらうれしいですね」

取材・文/中村実香 撮影/永田正雄

【プロフィール】
松下周平(まつした・しゅうへい)
アニメーション監督・演出家。数々の人気作品で演出や絵コンテを担当し、「Dr.STONE」は「龍水」から最終(ファイナル)シーズン「SCIENCE FUTURE」まで監督を務めた。主な参加作品に、劇場版『DEEMO サクラノオト -あなたの奏でた音が、今も響く-』など。

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