声優・ファイルーズあいインタビュー#3「かつての私のような、悩んでいる人の"希望"になりたい」

声優・ファイルーズあいインタビュー#3「かつての私のような、悩んでいる人の"希望"になりたい」

「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」の空条徐倫役をはじめ、『チェンソーマン』のパワー役、「怪獣8号」の四ノ宮キコル役など、数々の人気作品で圧倒的な存在感を放つキャラクターを演じるファイルーズあいさん。みずから道を切り拓いていくような力強くパワフルな声と、内面に深く潜り込む繊細な表現力は、どこから生まれるのか。このインタビューでは全3回にわたって、出演作品や役に抱く思いとともにファイルーズさんの素顔に迫ります。

■ジョニィのポーズは2秒と持たない

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――今日は「ジョジョ」を感じさせるポーズの撮影もしましたが、魅力的に見せるコツを教えてください!

「コツは......腰のひねりと、指先まで配慮を巡らせることですね!あとは気持ち。子どもがヒーローの変身ポーズをとるのと同じ、純粋な気持ちで楽しむのが一番です。練習する時は、まず画像を左右反転させて、鏡を見ながら位置を合わせるんですよ」

――そこまで練習を徹底するんですね...!ちなみに、いままでで苦戦したポーズは?

「いちばん苦戦したのは、コミックス51巻の表紙のナランチャのポーズ。とにかく腹筋がヤバくて『腹筋が壊れちゃう...!』ってなりますよ(笑)。あと、いつかチャレンジしたいのは、扉絵にあったジョニィ・ジョースターのポーズです。寝た状態でお尻ごと上に上げ、足だけでバランスをとるポーズなんですけど...」

――聞くだけでヤバそうな...(笑)。

「お尻を浮かせて、ここ(背中の上部)だけで地面を支える。家で何回も練習しているんですけど、2秒と持たないです(笑)」

■コンプレックスを乗り越えて、強さに変えていく

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――共演者の方々から刺激を受けることも多いと思いますが、最近「この人はすごいな」と圧倒された声優さんはどなたかいらっしゃいますか?

「それこそ、前々回のインタビューでお話した『黒猫と魔女の教室』という作品で、主人公のスピカ・ヴァルゴを演じられている本渡楓ちゃんは、圧倒されましたね。『推しが武道館いってくれたら死ぬ』という作品でも共演したのですが、当時から本当に魅力的なお芝居をされる方で。今回のスピカ役でも、ツッコミのシーンとかを彼女がやるととにかくおもしろくなるんですよ。ツッコミって、どうしてもパターンが決まって単調になりがちなんですが、本渡さんのお芝居は、毎回こちらの予想や期待をはるか上を超えてくる。現場でつい笑っちゃいそうになるくらい、キャラクターをさらに魅力的に輝かせていて素敵だなと思います」

――本渡さんもこのインタビュー企画にご登場いただいたことがあるんですが、すごく明るくてムードメーカーな方ですよね。ファイルーズさんとお二人が現場にいると、その場がパッと明るくなりそうです。

「もちろん明るい子なのですが、私にとっては『すごく穏やかで、繊細に人の気持ちを汲み取ってくれる人』という印象のほうが大きいんです。細かく気を配ってくれたり、ちいさな変化にも気づいてくれたり。人の話に耳を傾けるときの姿勢がものすごくやさしい。役者としてはもちろん、一人の人間としても心から尊敬しています」

――素敵な関係性です...!そんな周りからの刺激にあふれる環境のなかで、ファイルーズさん自身が理想としている「声優像」や、これからの「目標」はどこにあるのでしょうか。

「じつを言うと"目標"という意味では、私はもう少女の頃からの夢を叶えることができたので、自分の中では一つ、大きな場所には到達できたと思っているんです。もちろん業界の中でいえば、まだまだなんですけど...!」

――そうか、前回のインタビューで「徐倫を助けたい」という思いで、声優を志したとおっしゃっていましたよね。それで本当に徐倫を演じることができたから...!

「そうなんです。だから、そんな大きな個人的な夢を叶えられたのも、本当に、周りのすべてへの感謝しかないんですよ。それは『ジョジョ』という作品以外もすべて。私にチャンスをくださった方、作品に出会わせてくれた方。もし『ジョジョ』のオーディションを受けるまでの間に、ほかのどの作品にも受かっていなかったら、きっと『ジョジョ』の空条徐倫役にも受かっていなかったはずなので...」

――たしかに。そういう意味では、その過程も含めてすべてに感謝、なんですね。

「そう。いままで私が出会ってきてくれたすべてのキャラクターたち、任せてくださった制作スタッフのみなさんや、原作の先生方、そして事務所のみなさん。これ以上ないくらい恵まれていて、本当に私は幸せものだなと思います」

――素晴らしいことですね。これから、またどんなステップに入っていくのか、ご活躍が楽しみです!

「個人的には、従来の型にはまらず、自分のコンプレックスやルーツを乗り越えて、それを『強さ』に変えて道を切り開いていく人にすごく惹かれるので、私もそんな人を目指していきたいと思っています。たとえば、オードリー・ヘプバーンや、女性初のパイロットであるアメリア・イアハート、レディー・ガガさんやLiLiCoさん。本人が放つ圧倒的な輝きに、周りの人たちが自然と触発されちゃうような存在になりたいです」

――徐倫もそうですけど、芯が強くて周りを引っ張っていくような女性像はファイルーズさんにぴったりですね。

「ありがとうございます...!かつてはミックスルーツであることで周囲になじめなくて、学生時代はたくさんつらい思いもしました。でも、そんなときに、LiLiCoさんのような方がメディアで堂々と輝いている姿を見て、ものすごく希望をもらえました。ご自身のルーツや体質で悩んだ過去を打ち明けながらも、それを強さに変えて進んでいく姿は、私が『どう生きるべきか』を見つけるための大きなヒントになりましたし、なによりつらい時期の心も救われました。だからこそ、今度は私が、かつての私のように悩んでいる誰かの『希望』になりたい。声優としても、人間としても、そんな存在であり続けたいなと思っています」

■悔し涙のオーディション|「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」空条徐倫

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――さて、ここからは本格的に「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」のお話をお伺いしていきたいと思います。まずは、徐倫役に決まったときの思いを、あらためて教えていただけますか?

「まず、ストーンオーシャンのオーディションはステップがあって、最初のテープオーディションの段階では、じつはF・F(フー・ファイターズ)、徐倫、エンポリオの3役を振っていただいたんです。でも正直、私は地声が高いので、その時点では『徐倫役に自分が受かるわけがない』と思っていました」

――オーディションのときの本命は、F・Fとエンポリオだったんですね。

「そうなんです。私の夢が『徐倫を助ける存在になること』だったこともあって、マネージャーさんからその3役を提示されたときも『徐倫は絶対に無理だろうな』って。せっかくいただいたチャンスなので、一生懸命に演じましたが、憧れが強すぎて、自分の中ではオーディションもあまりしっくりきていなかったんです」

――そうだったんですね。

「そしたら後日、マネージャーさんから『徐倫だけ進みました』と言われ...、『終わった』と思いました(笑)。手応えのあったF・Fやエンポリオではなく、いちばん自信がなくてハマっていないと感じていた徐倫だけが通ってしまったので、これは難しいかも、って。『なにかの間違いで、スタジオでエンポリオのセリフも聞いてもらえないかな』って本気で考えていました(笑)」

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――なにかの間違いで...(笑)。でも、不安を抱えたまま本番のスタジオへ向かったんですね。

「そう、なのでスタジオオーディションはボロボロ...!緊張しすぎて台本を持つ手が震えて、シャカシャカと紙が擦れる音が鳴るほど。でも、なんとか『「ジョジョ」が大好き!』という気持ちだけでも伝えたいと思って、ジョジョ展で買った第6部のクリアファイルを持って、「ジョジョ」っぽいめちゃくちゃ派手な服装で、いかにも『ジョジョ展帰りです!』みたいな装いで行ったんです」

――それは「ジョジョ愛」が伝わりそう...!

「なんですけど、スタッフさんがいるブースに入った瞬間に、『この人たちがいたおかげで、私の青春のアニメが作られ、高校時代の自分が救われたんだ......!』と思ったら、感謝と感動で涙が止まらなくなってしまって......。初手で泣いているので滑舌は回らないし、同じセリフを何度も読み直すしで、ひどい有りさまでした」

――でも、逆にいえばそれだけ思いが強かったんですね。

「スタジオを出るときには、もうドン底の気分で『ありがとうございました...』と言って去って。大の大人が派手な格好をして、涙を垂れ流して大泣きしながら歩いて帰って(笑)。家に帰ってからも、自分の情けなさが悔しくて、その気持ちを日記に正直に書き殴りました。『本番でできなきゃ意味ない!』って、すごくきつい言葉を自分に浴びせて。でも、これを自己嫌悪で終わらせたらプロ失格だと思って、なんとか気持ちを切り替えようとしていました」

――かなり落ち込んでいたんですね。

「そうなんです。でも、驚くことに後日、『最終オーディションがあります』という連絡が来たんです。ふつうはスタジオオーディションで終わりなのに、もう一度チャンスがある。しかも、『資料用にカメラが入るから気をつけてきてください』と言われて...!悔しかった思いをバネに気持ちを切り替えて、挑みました。そうして最終では、スタジオの時よりも噛まずに言えたし、泣かずにやり切ることができた」

――リベンジを果たせた、と。

「そう思ってセリフを言い終えたら、スピーカーから『ありがとうございました。では、ファイルーズさんが徐倫役ということで決まりです!』って監督の声が流れてきて......。じつはその最終オーディション、私へのサプライズだったらしく、スタジオオーディションの時点でもう決まっていたらしいんです」

――ええっ!?

「私があまりにも『ジョジョ』が好きすぎるから、制作スタッフのみなさんが、その決定の瞬間を大切にしようと、集英社のスタッフさんたちもたくさん集めてサプライズの場を作ってくださったんです。それを知った瞬間に、また滝のような涙が...!そのときの映像も、後日いただいたのですが、いま思い出しても本当に泣きそうになります。なんて温かい...」

――ファイルーズさんの「ジョジョ愛」がみなさんを動かした瞬間ですね。その映像は、番組で流れるとかではなく...?

「はい、完全に私専用の映像として撮影してくださって。本当に大切に保管しています。どんなに辛いことがあっても、その動画を見返せば『私はこんなにも素晴らしい人たちに恵まれて、夢を叶えられたんだ』って、いつでも原点に戻れる。あんな瞬間は、人生でまたとない。まるで時が止まったようでした」

■必死にくらいついて一緒に成長していった|「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」空条徐倫

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――徐倫を演じるにあたっては、どんなところに苦労されましたか?

「私にとっては憧れが強すぎる存在だったので、無意識のうちに神格化していた部分があって、最初はそこで苦戦しましたね。というのも、徐倫って最高に強くてクール、どんなことがあってもへこたれない無敵のメンタルの持ち主だって思っていて。私の人格形成期にかなりの影響をくれたキャラクターなので、そんな彼女の強さを見せようという気持ちのまま、第1話に臨んでしまいました」

――その気持ちでいいような気もしてしまいますが...。

「いや、とくに物語の最初の頃の徐倫はまだそこまで成長していなくて、監督からは『いまの徐倫はまだただの不良娘だから、そんなに強そうにやらなくていい』っていうディレクションがあって。私は地声が高いので『かわいさは出したくない』と思ってなるべく低い声を意識していたら、『ドスが効きすぎ』と(笑)。強くあろうとしすぎて、その場面においての徐倫の人物像を、的確に表現できていなかったんだと気付かされました」

――なるほど、最初から"強さ"を前面に打ち出すのは違ったんですね。

「そうなんです。監督が『徐倫と一緒に成長してくれる人にやってほしかったから、ファイルーズさんにしたんだよ』とも言ってくださって...。そこで、『だから私だったんだ』っていうのが腑に落ちました。それからは"強さ"を無理に作ろうとせず、『いまの私にできる精一杯をやればいいんだ』と思えるようになったんです」

――じゃあ、そこで迷いはふっきれて...?

「いや、『ジョジョ』という作品も、徐倫のことも好きすぎるので、やっているうちにだんだん『徐倫らしさってなんだ!?』ってゲシュタルト崩壊してわからなくなっちゃうこともありました(笑)」

――ドツボにハマる感じですね(笑)。

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「そこで大事だったのが『やれやれだわ』っていうセリフですかね。最初の頃は、それをけだるそうに言う感じで、あえてちょっと"抜く"っていうのかな。全力で振りかぶらない。そこから物語の進展に合わせて少しずつ強さを足していく感覚でした」

――たしかに、そう聞くと徐倫のイメージとぴったりな感じがします。

「ですよね!で、だんだんとそんな徐倫にも慣れてくるんですが、とはいえ、作中で彼女が成長していくスピードは本当に早くて、置いていかれそうになることもしばしば。『待ってよ!』っていうくらい、必死で食らいつかなきゃ、という感じでした。でも、そうやって必死になってやることで、自然と徐倫と一緒に強くなっていけたのかもしれないです。それを見越しているんだから監督は本当にすごい(笑)」

――徐倫とともに全力で走ってきたわけですね。

「どちらかといえば、私が徐倫に引っ張ってもらう感覚です。アフレコの中で、どうしてもうまくいかなくて焦る気持ちが大きすぎたり、気負いすぎて口が回らなくなっちゃったりするときは、頭の中に『イマジナリー徐倫』を召喚して、スタンドみたいに寄り添って後ろから背中をさすってくれているような想像をするんです(笑)。それで『よし、私は大丈夫』って自分に暗示をかけながら、2人で一緒にアフレコを乗り越えてきた感覚ですね」

■第6部以外で好きなエピソード3|「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」空条徐倫

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――ストーンオーシャンのエピソードの中で、ファン投票で第1位に選ばれたのは最終話(第38話)でしたが、ファイルーズさん自身がとくに強い思い入れのあるシーンを選ぶとしたらどこでしょうか?

「映像を手がけたクリエイターのみなさんへの感謝を込めて選びたいのは、亡くなってしまったウェザー・リポートの元に、徐倫が駆けつけるシーンです。原作の徐倫はそこまで泣いていなくて、切なげな表情で地面に足を突いている、ヒキの描写なのですが、アニメでは彼女の顔がアップになって、涙を流しているんです。そのシーンを観たとき、私も悲しみが湧き上がってきて、演技に思わず"しゃくり"の音が入ってしまって」

――ご自身でも想定外だった...?

「そうなんです。でも、私の出したそのしゃくりの芝居を汲んで、じつは後からアニメーターさんが徐倫の動きを付け足してくださったんです。本当に細かい部分ですが、お互いの表現がリンクした瞬間として深く感謝しています」

――そうだったんですね...!逆に第6部以外のエピソードで、大好きなエピソードを3つ挙げるとしたら、どこですか?

「3つか、難しいですね......!でも、まずは黄金の風 第17話の『ベイビィ・フェイス』戦です。『メローネが好き』というのもあるのですが、アニメならではの動きが加わったときの、あの絶妙な気持ち悪さが最高で(笑)。じつは、原作でのこの戦いの中で発せられるジョルノの『人というのは成功や勝利よりも「失敗」から学ぶことが多い............』というセリフがあるのですが、それが私の人生の指針になっているんです」

――ファイルーズさんの生き方の軸に、その言葉があると。

「はい。失敗するたびにこの言葉を思い出して、『いまは辛いけれど、確実に成長しているんだ』と自分を奮い立たせるキーフレーズにしています」

――続いてのエピソードは?

「ダイヤモンドは砕けない 第11話、第12話の『レッド・ホット・チリ・ペッパー』戦です。私、『ジョジョ』の全キャラクターの中で、徐倫の次に音石くんが好きなんですよ!自惚れが強くて、すぐ調子に乗るヒャッハー系の悪役なんですけど、彼なりの美学がある。適度にいなせで品がない感じが大好きなんです(笑)」

――「品がない感じが好き」はパワーワードですね(笑)。

「マンガで読んでいた『ライトハンド奏法!』とかの独特な擬音が、アニメでどう表現されるのかなと思っていたら、ゴリゴリにエフェクトがかかったセリフ回しになっていたので、あれは感動しました。森久保祥太郎さんの演技も、ギターの弦をかき鳴らす音に合わせたような絶妙な言い回しで、本当に最高でしたね」

――素晴らしい審美眼です...!

「最後の一つは、ダイヤモンドは砕けない 第8話、第9話の『山岸由花子は恋をする』の、辻彩(シンデレラ)のエピソードです! 原作だと数話かけてじっくり描かれるお話ですが、アニメでは1話にギュッとテンポよくまとめてあって見やすくなっています。なにより演出が素晴らしくて、アルフォンス・ミュシャという画家のタッチをイメージした描き方になっているんですよ。ステンドグラス風の背景や、髪の束感まで完璧なミュシャのオマージュで」

――そうだったんですね。全然気づかなかった...!

「私、本場のチェコまで旅行に行ったくらい、ミュシャが本当に大好きすぎて...!だからアニメを見たときは、『アニメを見ている』というより『美術館の映像を見ている』かのような美しさに圧倒されました。見るたびに自分の美的感覚が研ぎ澄まされる、本当に大好きな回です」

――もう一度、見返したくなってきますね。

「本当に、『ジョジョ』の話を始めたら終わりがないですよ(笑)。いくらでも語れてしまいます」

■自分で立ち上がることの大事さを教えてもらった|「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」空条徐倫

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――「ジョジョ」という壮大な作品に深く関わったことで、ご自身の中で変化したことや、新しく芽生えた意識などはありますか?

「大好きすぎる作品だからこそ、興奮しすぎて我を見失いそうになる瞬間がありました。でも、私はいまここにプロとして立っているのだから『ただのファンでいてはいけない。プロとしての仕事をまっとうしなきゃいけない』という意識は、すごく強くなりました。好きな気持ちに甘えず、どう表現したらこの作品の魅力がより多くの人に伝わるか、というプロ意識の大切さですね。それを改めて強く感じました。これまで以上に、仕事に対して襟を正して向き合うようになりましたね」

――ファンとしての熱量と、プロとしての客観性。かといって、ファンとしての熱量もゼロにすればいい、という話でもなさそうですよね。

「そうですね。ファンの方の中には『ファイちゃんが全力で「ジョジョ」オタクをしてる姿が見たい!』と言ってくださる方もいるので、完全にオタクな自分をオフにするわけではないんです。ただ、そのメリハリをきちんと大事にして、一つひとつのお仕事に誠実に向き合っていきたいな、というのはあらためて思いながら臨んではいました」

――いまのファイルーズさんにとって、空条徐倫ってどんな存在ですか?

「徐倫を目指して必死に走っていた頃は、ただただ遠い『憧れの存在』でした。でも演じきったいま、おこがましいかもしれないですが、隣で『一緒に歩んでいく存在』だと思っています。彼女は、私が辛いときに道を指し示して、そっとストーンフリーの糸を伸ばしてくれる。でも、その糸に頼りっぱなしになるんじゃなくて、あくまでそれは方向性を示してくれているだけで、そこに自分の力で立ち上がっていくことが大事なんだ、ということを徐倫は教えてくれたと思います」

――前に進もうとする意志・エネルギーこそが"強さ"なんですね。いまでも徐倫が道筋を示してくれることはありますか?

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「直接的に『イマジナリー徐倫』が出てきて、ということはだいぶ少なくなったと思いますが、彼女の精神はやっぱり私の中に生きてますよね。じつは最近、アンガーマネジメントの本を読んだんです。怒りをコントロールする方法って、深呼吸をしたり、目を閉じたり、人によって合うものが違うらしいんですね。それで『自分にとって一番しっくりくる方法は何だろう』と考えたときに、行き着いたのが、徐倫の『やれやれだわ』という言葉だったんです」

――先ほども出てきた「やれやれだわ」ですね。

「そうなんです。この言葉って、相手を無理に変えようともしないし、自分をすり減らすこともしない、すごくニュートラルなスタンスなんですよね。だから、日常でちょっとイラッとすることがあっても、心の中で『やれやれだわ......』ってつぶやくと、不思議とすっと怒りが収まるんです。自分を穏やかに保つための、最高のマインドセットになっています」

――いいですね...!それは明日から自分の生活にも取り入れられそう(笑)。

「本当におすすめですよ! 男性とか、承太郎が好きな人なら『やれやれだぜ』でもOK。日常でプッツンしそうになったら、ぜひ心の中で呟いてみてください(笑)」

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取材・文/郡司 しう 撮影/梶 礼哉

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