李承信が語るコベルコ神戸スティーラーズの現在地とリーグワン初優勝の鍵

李承信が語るコベルコ神戸スティーラーズの現在地とリーグワン初優勝の鍵


ラグビーが教えてくれたこと~楕円球に魅せられた人々の熱い思い~

昨シーズン、リーグワン3位のコベルコ神戸スティーラーズ。リーグワン初制覇を目指す中、共同キャプテンのUTB(ユーティリティバックス)李承信がチームの進化と自身の役割、そして来年に控えたラグビーW杯への思いを語った。

――昨季は3位でした。振り返って、良かった点はどんなところでしたか?

「デイブ・レニーディレクターオブラグビー/ヘッドコーチ(以下HC)が2年目を迎える中、選手一人ひとり、そしてチーム全体として、神戸がやりたいラグビー、目指すべきラグビーを理解できる選手が増えてきたことが大きかったと思います。それを一人ひとりがしっかり役割として遂行できていましたし、シーズン序盤から試合を重ねるごとに正しくフィードバックしながら取り組めていました。

そして、それを毎週積み重ねていくことによってチームとして成長できていたことが、3位という結果につながったと思います。優勝には届きませんでしたが、3位という結果には自信を持っていいシーズンだったと感じています」

――今シーズン、開幕戦こそ負けましたが、その後は好調で首位争いをしています。昨シーズンのラグビーを踏襲できていると感じていますか?

「そうですね。まだ完全に完成しきったチームではないと思いますが、ゲームの中で『ここは集中しないといけない』『ここは大事な場面だ』ということをチームとして理解できて、しっかりフィットできているので、昨シーズンからの成長は感じています」

――具体的に、今シーズンに向けて特に意識して取り組んだところは?

「アタックのところでは本当に積み重ねてきたものがあるので、引き続き、クリエイティブなラグビーや、出られるところ、そしてボールをいろんなスペースに展開できるところは継続していると思います。その中で特に、ディフェンスやブレイクダウンのところは、本当にチーム全体として時間をかけて取り組んでいる部分です」

260420_rugby_02.JPG

――今シーズン、李選手から見て神戸の強みはどんなところですか?

「まず、『誰を代表して、何のために自分たちがラグビーをするのか』というところが明確になっていることだと思います。そこはレニーHCやウェイン・スミス(ラグビーコーチメンター/ チームアンバサダー)など、そういう方たちが築いてきてくれたレガシーでもあると思いますし、会社とのつながり、地域とのつながりもあります。

いろんな背景がある中で、この神戸スティーラーズという存在を応援してくれている方々が多いので、そういった部分も大きな強みです。そして、神戸らしいラグビーがあることです。『神戸はどういうラグビーをするんだ』ということが、見ている人にも印象として残るラグビーができていると思います。明確なラグビーを持っているのは本当に強みだと思います。

(神戸のラグビーは)アタックで判断しながらいろんなバリエーションを使えるところは、当然、フィジカル、セットピースも強い。現代のラグビーも踏まえた上で、オンリーワンの強みを持ちながらできればいいなと思っています」

――李選手は25歳、神戸在籍6年目になります。もう中堅という感覚でしょうか?

「もう『若手です』という感じではなくなりましたね(苦笑)。共同キャプテンという立場もあるので、このチームに対する思いや愛着はより強くなっています。レガシーやカルチャーも神戸のチームとしての強みだと思うので、若い選手や新しい選手にも伝えながら、優勝に向かっていきたいと思います」

――あらためて神戸に入団した経緯を教えてください。帝京大学を(2年時に)中退し、ニュージーランド留学を考えている中、コロナ禍となりその後、しばらくしてから神戸に入団されるまでの経緯を教えていただけますか。

「大学中退後、予定していた留学がコロナ禍の影響でキャンセルになりました。その時期はアルバイトをしながら一人で、家の近所の公園や体育館で黙々と自主練習をする日々でした。何も将来が決まっていなかったので『もう、ラグビーを辞めようか...』と考えたこともありました。そんな時期が半年くらい続き、いつチャンスが来てもいいように準備を続けていた時、ラグビースクール時代のコーチ(当時神戸Sのチームディレクター福本正幸)から声を掛けてもらいました。

地元であるこの神戸に入団できたことは、何よりも大きかったです。幼少期から神戸でラグビーを始めたので、チームとのつながりもありましたし、ラグビーができる環境がない中で、スティーラーズがラグビーをする場所を与えてくれて、本当に今でも感謝しています。いろんな方々の支えがあって、今、神戸でプレーすることができて、本当に誇りを持っています」

――'27年ワールドカップは、いよいよ来年に迫っています。

「本当にあっという間だったなと思います。(前回大会最終戦の)アルゼンチン代表戦で負けた直後にスタジアムを見渡しながら、『4年後に自分はここに立っているのかな...』とすごく考えましたし、悔しさもありました。その時から考えると、もう来年は4年が経ちます。本当に早いですね! その中でも、今年のテストマッチシリーズは自分の中ですごく大きいものになると思うので頑張りたいと思います」

――昨年は、日本代表でもリーダーを務めて、テストマッチにも全試合に出る活躍を見せました。

「そうですね。去年のテストマッチで全試合経験できて、得たものは大きかったです。フィジカルやプレッシャーの中でどれだけ経験を積んで、高いパフォーマンスを常に維持して出せるかというのは本当に大事だと思います。ワールドカップになればまた別物になるので、そこでどれだけ自分の力を発揮し続けられるかが大事になると思います」

――エディー・ジョーンズHCのラグビーにはだいぶ慣れてきましたか?

「エディーHCが考えているラグビーも理解できてきましたし、何より本当に何も取り繕わず、ストレートに自分の課題や伸ばしていくべきところを一緒に考えてくれます。1対1のミーティングも本当に多いです。リーグワンが始まってからはあまり連絡を取り合うことはありませんが、関係性としてはすごく良いものを築けていると思います」

――昨シーズン、日本代表でプレースキック成功率が高かったのは、やはり練習の成果でしょうか?

「多分、成功率は9割くらいあったと思います。去年の日本代表はPNC(パシフィックネイションズカップ)くらいから、自分の感覚が本当に良かったです。何か大きく変えたというわけではないですが、常に試合に向かうまでのキックの本数や一貫性を大事にしました。

僕はそこまで本数を蹴るタイプではなくて、その日の感覚を大事にしながら、毎練習10本くらい。感覚が悪ければ切り上げることもありました。日本代表戦では、いろんな国、グラウンドでやる中で、自分のキックに一本一本に集中することを大事にしていました。入るか入らないかではなくて、ボールの置き方やどう蹴るかというプロセスにフォーカスを当てて、できていたのが大きかったと思います」

260420_rugby_03.JPG

――あらためて、ワールドカップに向けての思いは?

「予選プールの対戦相手も決まりました。'23年が終わって、'24年、'25年と代表でプレーさせてもらう中で、自分たちでチームを作り上げている感覚があります。僕自身も日本代表というチームに対する思い、ジャージーを着る重み、このチームで勝たないといけないという思いが年々強くなっています。まだラグビー選手として夢を成し遂げられていない悔しさもあります。だからこそ、まずはリーグワンでの勝負を大事にし、その先で、ワールドカップでベスト8、さらに上を目指していきたいと思います」

――最後に、ラグビーファンに見てほしいところは?

「自分の目標でもあるW杯に向けて、どんな時でも諦めずに挑戦する姿は見ていただきたいですし、そこはぜひ応援していただきたいと思います。自分の強みでもある、タフに諦めない姿勢や気持ちが、見てくださる方に少しでも伝わればうれしいです」

Personal Words
父と2人の兄の影響で、4歳の頃からラグビーを始めました。高校時代は決して恵まれたとはいえない環境でしたが、仲間と花園を目指して努力した経験が今の自分の土台になっています。大学を中退し海外留学を目指しましたが、コロナ禍の影響で断念。公園や体育館で、一人で自主練習していた時期もありましたが、そんな状況の中で声を掛けていただきラグビーをできる環境を与えてくださった神戸には本当に感謝しています。

260420_rugby_04.jpg

Profile
'01年1月13日生まれ。兵庫県出身。176cm /85kg。大阪朝鮮高級学校→コベルコ神戸スティーラーズ。ポジションはUTB。'23年W杯日本代表、29キャップ('26年4月7日現在)。

取材・文/斉藤健仁  (C) KOBE STEEL, LTD.

ラグビーが教えてくれたこと~楕円球に魅せられた人々の熱い思い~

連載一覧はこちら

ラグビーが教えてくれたこと~楕円球に魅せられた人々の熱い思い~

連載一覧はこちら

スポーツ 連載コラム

もっとみる

スポーツ インタビュー

もっとみる