福澤達哉が読み解くSVリーグチャンピオンシップの行方「引退を控えたムセルスキー選手、進化する佐藤淑乃選手らトップ選手の嗅覚に注目」

福澤達哉が読み解くSVリーグチャンピオンシップの行方「引退を控えたムセルスキー選手、進化する佐藤淑乃選手らトップ選手の嗅覚に注目」

バレーボール男子日本代表として長年活躍し、現役引退後は解説業のほか、所属先であった大阪ブルテオンのチームアンバサダーを務める福澤達哉。今回は「大同生命SVリーグ チャンピオンシップ 2025-26」に向け、プロの視点から注目選手や見どころを語ってもらった。「大同生命SVリーグ 2025-26」は、男女全試合を「J SPORTSオンデマンド」でLIVE配信中。

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「大同生命SVリーグ チャンピオンシップ 2025-26」は女子がすでに始まっており、男子もまもなく開幕します(※取材日は4月8日)。昨今のバレーボール自体の盛り上がりに伴って、国内リーグへの注目度の高まりを感じますね。男女ともにレベルが上がったことはもちろん、2026年1月には男子のウルフドッグス名古屋とサントリーサンバーズ大阪の試合に1万4,000人もの観客が来場するなど、数字上のインパクトも印象的なシーズンになりました。

私の現役時代にSVリーグが始まっていたらどうなっていただろうかと、正直に思うところはあります。海外のトッププレーヤーたちと対戦できることや、諸外国の名将と呼ばれる指導者の方々が並ぶ環境は、一人のプレーヤーとして、とても成長できる場になるでしょう。これほど注目される中でプレーできている今の選手たちが、素直にうらやましく感じます。

■ムセルスキー選手とブリザール選手がもたらす衝撃。世界基準のプレーがSVリーグをレベルアップさせる

今回はチャンピオンシップ進出チームから注目選手を選ぶということで、男子からはサントリーサンバーズ大阪のドミトリー・ムセルスキー選手と、大阪ブルテオンのアントワーヌ・ブリザール選手の2名を挙げたいと思います。

まず、今季限りでの現役引退を表明したムセルスキー選手です。日本における8年間の競技生活において、常に安定したパフォーマンスだけでなく、日本のリーグの性質を理解しながらチームに対してアプローチをするなど、あらゆる面で多大なる功績を残しました。まだまだ現役でプレーできるでしょうし、どのリーグに行ってもオポジットのスタメンを張れることは間違いありません。レギュラーシーズンでもアタック、ブロック、サーブのすべてでリーグ上位の成績をマークしました。「まだこれだけ決まるのかい!」と思わずツッコミたくなってしまうほどです(笑)。彼が最後のステージに大同生命SVリーグを選んでくれたことは、それだけ価値のあるリーグであることを彼自身が体験し、表現してくれたのだと受け止めています。

続いて、ブリザール選手に関しては、来日が決まったときから非常に興味がありました。トスだけでなくアタックもサーブもブロックもできる、日本には少ないタイプの攻撃型セッターだからです。実際のプレーを見ていると、試合の流れを読むことに非常に長けていると感じます。流れが悪い局面や「ここで1点が欲しい」場面で、自らのツーアタックやブロックで得点してスイッチを入れられるのが、まさにブリザール選手です。こうしたスタイルは世界のトレンドといえ、彼の活躍を見てあらためてそのことを実感しました。トッププレーヤーの姿を見た次世代の子どもたちが「ああいうセッターになりたい」と憧れを抱き、近い将来、似たタイプの日本人選手が登場するのではないかと想像しています。ムセルスキー選手もブリザール選手も実績はさることながら、日本のバレーボールを変えてくれた、そして、今後変えてくれるかもしれない、という点で今回は選ばせていただきました。

■佐藤淑乃選手に見る女子バレーの新潮流。攻撃的サーブと「勝負を決める覚悟」

女子では、NECレッドロケッツ川崎の佐藤淑乃選手が日本代表シーズンから引き続き躍動し、SVリーグでも存在感を発揮してくれました。彼女の持ち味の一つが、サーブです。最近は女子でもジャンプサーブを交えるなど、攻撃的なサーブを積極的に仕掛けていく傾向が見られます。佐藤選手は、その中心として流れを変えるサーブを打つ姿勢が光ります。

また、元々オールラウンダーな選手でしたが、今季は勝負強さが一段と上がった印象です。ルーキーイヤーだった昨シーズンに優勝まであと一歩届かなかった悔しさを胸に、「今季はチームを勝たせるために自分が何をしなければならないか」という覚悟がプレーの端々に現れていると感じました。この先もチームを勝たせられる選手になっていくのかどうか、非常に注目したいところです。

私自身、試合を見ていて目に留まるのは「ここでこのプレーをチョイスするか」と思わずうなってしまう選手です。それはトリッキーな意味ではなく、流れを汲んだなかで自ら仕掛け、確実に1点をものにする選手です。女子の佐藤選手や男子の高橋藍選手(サントリー)は、守備も安定しているオールラウンダーですが、今季の姿を見ていると、流れに応じて攻撃と守備を使い分け、自分たちの手で試合をコントロールしている印象を受けます。とりわけ高橋選手は、キャプテンとしてのプレッシャーを背負いすぎることなく、むしろ楽しみながら自身の成長につなげようとしています。

■西田有志選手、宮浦健人選手ら日本人スターの共演。チャンピオンシップで生まれる極限の駆け引き

確実に1点を取り切る力でいえば、西田有志選手(大阪B)や宮浦健人選手(WD名古屋)も素晴らしいですね。「この1点が欲しい」という勝負どころへの嗅覚は、トッププレーヤーが必ず持ち合わせているものです。そうした選手が多く在籍している点がSVリーグの魅力ですし、チャンピオンシップでは特に重要になってきます。

チャンピオンシップになると、選手たちの試合に懸ける思いなどの背景に触れることで、いっそう感情移入がしやすくなるものです。女子では最後の1枠を争うドラマもありましたが、チャンピオンシップではその熱量がさらに高くなります。やはり「負けたら終わり」というプレッシャーがかかる中で、目の前の1球に対する重みや向き合い方が目に見えてガラリと変わるからです。

1戦目の結果次第で、2戦目にどちらがどのように仕掛けていくのか。さらに、どの選手がどうやって戦況を打開していくのか。短期間でものすごくたくさんの駆け引きとドラマが生まれることでしょう。最終的にどのチームが優勝するのか、そして各チームがシーズンの集大成とどう向き合うのか。SVリーグのさらなる盛り上がりに期待しながら、私もチャンピオンシップを見届けたいと思います。

※高橋藍の「高」は正しくは「はしご高」

取材・文/坂口功将

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