板垣李光人が映画『口に関するアンケート』で挑むホラーならではの「見せる」芝居

板垣李光人が映画『口に関するアンケート』で挑むホラーならではの「見せる」芝居

口元の写真を表紙に、カセットテープを模したデザインとサイズ感で販売されているホラー小説「口に関するアンケート」。そのビジュアルや、衝撃的な内容から多くの話題を集めたこの小説が、清水崇のメガホンによって映画化された。この原作にひかれて出演を決めたという主演の板垣李光人に、本作の魅力を聞いた。

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――まずはタイトルにちなんで一つ、"口に関するアンケート"をさせてください。これまでの俳優人生の中で、板垣さんの"口"から発せられたセリフで特に印象的なものは何ですか?

「自分の口から発したものではないのですが、映画『ミーツ・ザ・ワールド』で、蒼井優さん演じるユキが言っていた『人が人を変えられるのは45度まで』というセリフが好きです」

――板垣さんにとって、どんなところが刺さったのですか?

「あの作品は、由嘉里(杉咲花)がライ(南琴奈)を変えたくて悩んで奔走する物語です。由嘉里に限らず誰しもが、友達や仕事で関わる人の中に『自分とちょっと合わないな』と思う人もいるだろうし、由嘉里みたいにちょっとおせっかいをしてしまいたくなるときってあると思うんです。だけど『人は45度しか変えられない』と思っておくことは、人間関係を築いていく上で大事なことだと思うし、変えられる側としてもそう思っておきたいなと思います」

■文字の面白さを映像化。清水崇監督作への出演を決めた理由

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――では、映画『口に関するアンケート』について伺っていきます。まずはオファーを受けたときの印象や出演の決め手を教えてください。

「まずは原作を読んで、30分ほどで読める短さにも関わらず文字の面白さを生かした作品だと感動しました。ただ、お話をいただいた時点では脚本が出来上がっていなくて、プロットをいただいたんですね。そのプロットでは、この短い原作をどうやって映画の長さにしていくのかという想像がつかなくて。でも原作が面白かったことと、清水崇監督とご一緒したこともなかったのでやってみたいなと思って、お受けしました」

――ホラーは得意ですか?

「どうなんだろう? ヒトコワ系は結構見ますね」

――では、ホラーが嫌いということはなかったんですね。

「はい。嫌いではないです」

――板垣さんが演じたのは翔太。翔太という人物をどのように解釈しましたか?

「この作品の登場人物全員に共通してくるところでもありますが、人間の欲というか性(さが)だと、触れてはいけないと言われたものは触りたくなるし、見てはいけないと言われたものは見たくなる。でも我々は普段それらを、生きてきた中で得た理性などで制御するわけですが、翔太は自身がもともと持っているものに加え、外部からの干渉によって理性が外されてしまって、ああいうふうになっていく。そういう意味では、とても人間らしいなと思いました。『呪い』という抽象的な、日常ではなかなか想像しがたい概念が出てくる作品ではありますが、キャラクターはみんなとても人間らしくて、普通の人たちだなと思いました」

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■ホラー映画ならではの「見せる」芝居。モニターで見つけた表現の工夫

――翔太は人間らしいという解釈をされたということですが、演じるうえでホラー映画ならではの表現やお芝居は何か取り入れましたか?

「『見せないといけない』と思いました」

――「見せないといけない」?

「はい。『芝居を見せる』ということをしないといけないなと。今までやってきた作品ももちろん『伝える』ということはしていますが、それが先頭に立っているかといったらそうではない。感情を自分で動かし、動かされるところを監督やカメラマンさんに切り取ってもらって、それが伝わる、という形。だけどホラーの場合は、恐怖の対象が怖いのはもちろん、劇中で我々がどう怖がっているか、怖がっている様子がどう見えるかも重要になってきます。例えば、目を見開いていたとしてもカメラがドリーで上がっていくのにあわせて映像が俯瞰(ふかん)になっていくと、見え方としては伏し目になってしまうじゃないですか。だからドリーにあわせて、わからないくらいほんの少しだけ顔を上げて目を見開いているという状態を長く強く見せるようにする。そういった『見せる』ということをするのは、こういう作品ならではだなと感じました」

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――それは清水監督の演出だったんですか?

「いえ、モニターを見ていて『自分が思っている以上に見えなくなるな』と思って、そういうことを仕込んでいきました」

――そうだったんですね。では、清水監督の演出はいかがでしたか?

「Jホラーの巨匠なので、お会いする前は『どういう方なんだろう』と、怖かったんですけど、実際にお会いしてみるとすごく明るい方だったんです」

――明るい方なんですね!

「そうなんです。明るくて、お茶目な方でした。セッティング中にはベースからマイクを通して現場のスピーカーにボケを放り込んだりしてくださって。ああいう作品なのに、現場自体は和やかで明るかったです。一方で、もちろんホラーの芝居に対する指示はものすごく的確でした。例えば『首を吊ると人間の体はどうなるか』とか、そういうことに対して素早く的確に演出してくださって。長年これだけのホラーを撮られてきたという監督の軌跡を感じましたし、『一つのことを突き詰めていくとこうなるんだ』と、かっこよく感じました」

――完成した映画をご覧になった感想を教えてください。

「僕は自分が作った側なので、『怖いのが苦手な方でも意外と見られるんじゃないか』と思いましたけど、こういう取材で皆さんに話を伺うと結構怖いみたいですね(笑)」

――怖かったです。

「やっぱりそうですよね。ちょっとそこが麻痺(まひ)してしまって(笑)。冒頭で『原作は文字だからこその面白さがあった』と話しましたが、映画は映画で、小説にはない音や映像があります。これを映画館という、暗くて逃れられない密室という状況の中で浴びるのは、面白いなと思いました。原作の気味の悪さもしっかりと感じられましたし、映画の強みを生かした作品になっていると思います」

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■原作との相乗効果で広がる恐怖。言葉が持つ「言霊」とこれからの夢

――板垣さんは「もう麻痺してしまった」とおっしゃいましたが、「怖そう」と思って見に行くのを悩んでいる方に本作をおすすめするならどう伝えますか?

「この作品はどちらかと言えば『じわじわ系』で、ジャンプスケア(びっくり演出)ではないので『バン!』と何かが出てくるのが苦手という方には、そういうのはないですよとまずお伝えしておきます。あとは、原作を先に読んでいただくのも良いと思います。というのも、今回の脚本は原作を膨らませる上で、原作者の背筋さんの頭の中にあった、もう一つの『口に関するアンケート』である『杏に関するアンケート』を混ぜ込んでいるんです。そういう意味では原作を読んでも、映画のすべてが書かれているわけではない。だから、原作を読んでいただいて、なんとなくこの世界がどういうものなのかをつかんでから、映画『口に関するアンケート』をご覧いただくと、原作の補完ができる感じもあるので、より楽しんでいただけるかなと思います」

――板垣さんも30分くらいで読めたとおっしゃっていたように、読みやすいですしね。

「はい。本当にすぐに読み終わるので、活字に苦手意識のある方も読みやすいと思います(笑)」

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――最後にまた、"口に関するアンケート"です。「言霊」という言葉がありますが、今の板垣さんが口にして叶えたい大きな夢と小さな願望を教えてください。

「やりたいこといっぱいあるんですよねぇ。でもとりあえず、週末の台風、来ないでほしい(笑)(※台風7号と台風8号が関東に接近する予報が発表されていた)」

――板垣さんの今の言葉が言霊となって、台風が逸れることを切に願います(笑)。ちなみにやりたいことは口に出したいタイプですか? それともなるべく言わずに叶えたい?

「ちゃんと考えてから口に出したいです。『なんとなくやりたい』と思って口に出すこともあるかもしれないけれど、できれば自分の中できちんと腹をくくってから口に出したいと思いますね。今まで『これが好き』とか『こういうことをやりたい』とか『ここに行きたい』と言っていると、それをどこかで聞いてくださった方がいて実現させてくださってきたので」

――まさに言霊ですね。ではその言霊を使って、今叶えたい、大きな夢を教えてください。

「今まで通り、何かしら抱えているものを演じる、人間くさい役は引き続きやりたいです」

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PROFILE
2002年1月28日生まれ。2012年、俳優デビュー。映画『八犬伝』『はたらく細胞』『陰陽師0』で第48回日本アカデミー賞 新人俳優賞を受賞。近作に『ババンババンバンバンパイア』、『ミーツ・ザ・ワールド』、『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』、NHK連続テレビ小説「ばけばけ」などがある。7月23日スタートのドラマ「大空港~GATE24~」(毎週木曜21時〜テレビ朝日系)に出演予定。

取材・文/小林千絵 撮影/梁瀬玉実
ヘアメイク/信沢Hitoshi スタイリスト/石井大
ジャケット¥57,200(BRÚ NA BÓINNE/ブルーナボイン)、リング左¥37,400(PLUIE/プリュイ)、シューズ¥103,400(KIDS LOVE GAITE/キッズ ラブ ゲイト)、その他スタイリスト私物

チャンネル:

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