鈴木亮平の「画面からはみ出す不快感」がすごすぎる映画『孤狼の血 LEVEL2』【尾崎世界観】
映画 連載コラム
2026.05.10
今回選んだのは、2021年に公開された映画『孤狼の血 LEVEL2』です。1作目の『孤狼の血』(2018年)は、公開されたときに映画館で観ました。確か銀座で、平日昼間の映画館の、あの独特な雰囲気をよく覚えています。
今回、結構スケジュールがバタバタしていて。すごく追い詰められているタイミングで観たら......疲れましたね(笑)。忙しいときに観るべきではなかった......。観ている間、ずっと力が入ってしまうので。
■鈴木亮平の「物理的な不快感」が生む、画面からはみ出す圧倒的な迫力
『孤狼の血』は、広島の架空都市を舞台に、警察と暴力団組織の攻防を描いたシリーズです。第1作は刑事同士のぶつかり合いなど、人間ドラマを中心に描いているような印象を受けましたが、『LEVEL2』はよりアクションシーンも多くなって、かなり派手です。だからストーリー自体は分かりやすいですが、その分、役者の方々の芝居に焦点が当たっている。そこにとても潔さを感じるし、分かりやすいからこそ、演技を存分に、100パーセント食らうことができる。
その中でも本作に関しては、暴力団の組長・上林成浩を演じる鈴木亮平さんの芝居が本当にすごい。画面で観ていても距離を取りたくなるくらいの迫力と言うか。例えば電車で座っていると、ちょっとこっちにはみ出してくる人っていますよね。物理的にもそうだけれど、人として、こちらのスペースに堂々と割って入ってくるような。あの「嫌な感じ」がずっと画面から出ている。今にも飛び出してきそうなあの迫力はどうやったら出せるのか、自分もステージに立つ人間として気になります。それに日本人の役者さんであんな体形の方は他にあまりいないですよね。そこも含めて、この映画の鈴木亮平さんは、観ていて本当に怖くなるし、こちらに常に不快感を与えてくる。役柄という以上に、人間の本質的なものが迫ってきます。他にも、瀬島という刑事を演じる中村梅雀さんの存在も印象的でした。中村梅雀さんは、どの作品で観ても「この人どっちなんだろう?」という怪しい雰囲気を醸し出しますよね。

松坂桃李
■満身創痍で強くなる。松坂桃李演じる刑事・日岡秀一に見た「ゾンビ」の側面
あと、僕にとって『孤狼の血』シリーズは「ゾンビ映画」という側面もあるんです。なぜなら、松坂桃李さん演じる刑事の日岡秀一が、とにかく死なないから(笑)。どれだけやられても立ち上がるし、なんなら日岡が傷だらけになってからが始まり、と言ってもいいかもしれない(笑)。
あのやられっぷり、ボロボロになればなるほど強くなっていく姿には、怖さすら感じますね。『LEVEL2』では、日本刀で切られても立ち向かって行ったり。そういう部分に注目してみても面白いかもしれません。ヤクザものの映画って、役者の演技合戦も大事な見どころの一つになると思うんですが、日岡の粘り強さはその極致にある気がします。
■感覚をリセットする2時間20分。余裕があるときにこそお勧めしたい「劇薬」
映画『孤狼の血 LEVEL2』は、約2時間20分、体がこわばり続けるという、他にない体験ができる映画です。僕は忙しいときに観てヘトヘトになってしまったので(笑)。だからこれを読んで気になった方には、余裕があるときに観ることをお勧めします。
特に、最近いいことが続いていて逆に不安になってしまう、そんなときに観ると「世の中、甘くないな」と思えて、いい具合に気分がリセットされるかもしれません(笑)。
取材・文/天野史彬
尾崎世界観 (クリープハイプのボーカル・ギター)
ロックバンド「クリープハイプ」のボーカル・ギター。 小説『転の声』が第171回芥川賞候補作に選出。小説家としても活躍する尾崎世界観が、好きな映画を語りつくす。
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