2児の母・菊地亜美が北川景子主演映画『ナイトフラワー』に抱いた痛切な共感
映画 見放題インタビュー
2026.05.10
北川景子さん主演の映画『ナイトフラワー』が、今まさに育児に奮闘する私の心に深く突き刺さっています。第49回日本アカデミー賞で優秀主演女優賞を受賞された名作ですが、プライベートでも仲良くさせていただいている景子さんの主演作ということで、私自身も一人のファンとして、ずっと観たいとすごく楽しみにしていた作品でした。私自身、2人目の子どもが生まれてから初めての本格的な映画鑑賞だったこともあって、今までとは全く違う「母親の視点」で観てしまいました。

菊地亜美
■北川景子が魅せた「憑依型の演技」。キラキラを封印した切実な母親の姿
まず驚いたのは、スクリーンに映った景子さんが、私の知っているいつものキラキラした景子さんではなかったことです。顔もげっそりしていて、魂を削りながら生きている一人の切実な母親・永島夏希がそこにはいました。劇中で、デスボイスで歌うシーンがあるのですが、その姿を見た瞬間に一気に物語に引き込まれました。「これ、本当にあの景子さんなのかな?」と疑ってしまうくらい、役に憑依している姿に圧倒されて、俳優としてのすごさを改めて突き付けられた気がします。
物語の内容は、正直に言ってすごく重いです。夏希が貧困の中で、子どもたちのためにドラッグの密売という「絶対にあってはならないこと」に手を染めていく。独身時代の私だったら、「どんな理由があってもダメなものはダメでしょ」と切り捨てていたはずです。ところが、今の私はどうしても彼女を責めきれませんでした。もちろん、やっていることは犯罪です。でも、隣で「お腹が空いた」と泣いている子どもを前にして、お金もなくて、誰にも頼れなくて......。そんな窮地に立たされたとき、母親は一線を越えてしまう危うさを誰しも持っているのではないかと、ヒリヒリするような感覚で観ていました。

■犯罪と隣り合わせの「強すぎる愛」。今の私には夏希を責めることはできません
特に印象的だったのが、餃子弁当を盗んでしまうシーンです。あれは絶対にいけないことなのですが、でも「この子に美味しいものを食べさせてあげたい」という、母親としての強すぎる愛ゆえの行動なんですよね。自分も、美味しいところは全部子どもにあげて、自分は余った端っこを食べるのが当たり前になっている毎日なので、その「自分を犠牲にしても守りたい」という切実な気持ちには、痛いほど共感してしまいました。母親の愛は美しくて尊いものですが、時として狂気にもなり得るのだと、自分の心の中にある危うさを見せつけられたような気がします。
そんな絶望的な状況の中で、女性格闘家の多摩恵(演:森田望智)さんが現れて、夏希が少しずつ笑顔を取り戻していく姿には、本当に救われました。やはり、一人で抱え込まずに、誰かに助けてもらうことは、子育てにおいて何よりも重要なんですよね。私自身、1人目のときは「完璧なママでいなきゃ」と、全部自分でやろうとして「大丈夫」が口癖になっていました。でも2人目が生まれてからは「ちょっとお願いしていい?」と周りに頼れるようになって、すごく心が楽になった経験があります。この映画を観て、ママが元気でないと子どもも気を遣ってしまいますし、家族の空気を良くするためには、まず自分が笑える環境を作ることが大切なのだと再確認しました。

■「不完全な母」でもいい。子どもが教えてくれる「今日を楽しむ」ことの大切さ
映画の中で、子どもが路上で演奏してお金を稼ごうとするシーンがあるのですが、あそこはもう涙腺が崩壊しました。自分の子どもと重ね合わせてしまって、「こんな思いをさせてごめんね」という夏希の葛藤が自分の中に入ってきて、しばらく涙が止まりませんでした。でも、どんなに辛いことがあっても、翌朝には子どもたちが起きてきて、ご飯を作って、日常が始まっていく。私も去年、祖父を亡くしてすごく悲しかったとき、笑っている子どもたちの姿に救われたことがありました。子どもは、母親を振り回す大変な存在でもありますが、同時に自分を現実の世界に繋ぎ止める強力な錨(いかり)でもあるんですよね。
最後に、今まさに育児を頑張っているパパやママたちに、ぜひこの映画を観てほしいなと思います。観終わったあと、ハッピーエンドなのか、それとも......といろいろ考えさせられる作品ですが、私は「不完全な母」である自分を許してあげてもいいんだ、と思えるきっかけになりました。子育ては計画通りにいかないことばかりですが、それを「臨機応変なサプライズ」として楽しめるくらいの柔軟性を持っていたいなと思います。明日がどうなるか分からなくても、今日という日を精一杯楽しむ。そんなメッセージを、景子さんのすさまじい演技から受け取った気がします。とにかく、今の「母としての私」に深く刺さる、忘れられない一作になりました。
PROFILE
1990年9月5日生まれ、北海道出身。2006年にレプロガールズオーディションにエントリーし、最終審査で落選するも審査員に声をかけられ所属が決定。その後、アイドリング!!!16号として活躍し、2014年に同グループを卒業。2018年に一般男性と結婚し、現在は5歳と0歳の2児の母。2023年には第16回ペアレンティングアワード(ママ部門)、2025年にはトモニテ子育て大賞2025にて「トモニテ特別賞」を受賞。2024年からは親子向けオフラインイベント「MAMARIAL fes.」を開催するなど、ママタレとしても活躍中。
取材・文/永田正雄




