坂元裕二脚本の『ファーストキス 1ST KISS』など、一流クリエイターとのタッグで松たか子の映画女優としての魅力がより光る名作4選
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2026.07.09
6月10日に49歳の誕生日を迎えた女優・松たか子。40代最後の1年となる2026年は、カンヌ国際映画祭への初参加も話題となった主演映画『ナギダイアリー』(9月25日公開)を控え、同作で共演した石橋静河がヒロインを務める2026年度後期の連続テレビ小説「ブラッサム」で"朝ドラ初出演"を飾るなど、さらに成熟した活躍ぶりを見せている。
4度目のカンヌで、コンペティション部門への初選出を果たした『ナギダイアリー』の深田晃司監督をはじめ、実力派の作り手たちとタッグを組み、着実なキャリアを築き上げてきた松。ここでは、そんな彼女の"映画女優"としての輝きを引き出してきたクリエイターの存在にも目を向けながら、秀逸な4作品をピックアップしてみた。
■名匠・岩井俊二監督と二十数年ぶりに再タッグ!"手紙がつなぐ愛"に心揺さぶられる『ラストレター』

『ラストレター』 (C)2020「ラストレター」製作委員会
松が映画初主演を飾った1998年公開の『四月物語』から二十数年、名匠・岩井俊二監督と再びタッグを組んだ作品が『ラストレター』(2020年)だ。
岩井監督の名を広く知らしめた名作『Love Letter』(1995年)と同じく"手紙がつなぐ愛"を描いた本作は、現代と過去、2つの時代が交錯するラブストーリー。過去を紐解く重要なパートで、『Love Letter』で共演した中山美穂、豊川悦司が出演していることも話題を呼んだ。

『ラストレター』 (C)2020「ラストレター」製作委員会
姉・未咲の葬儀に参列した裕里(松)は、未咲の娘・鮎美(広瀬すず)から、未咲宛ての同窓会の案内と、鮎美に残した手紙の存在を告げられる。姉の死を伝えるために同窓会へと参加するが、再会を喜ぶ同級生たちから姉本人だと勘違いされてしまう。その帰り道、初恋相手の鏡史郎(福山雅治)から声をかけられた裕里は、成り行きから、姉のふりをしたまま文通を重ねていく。
学校のヒロインだった姉の未咲に対し、裕里はどこか等身大な魅力を持つ女性。雰囲気にのまれて姉の死を言い出せない困惑ぶりや、自分勝手な夫・宗二郎(庵野秀明)に対する呆れ、義母の逢瀬をウキウキで尾行する好奇心旺盛さなど、親しみやすい人物像を、松は表情豊かに浮かび上がらせる。
鏡史郎の突然の訪問に慌てふためく様子などユーモアを交えながら演じており、鏡史郎に実らぬ片想いをしていた過去を断ち切り、今を生きる聡明な女性像が好印象。また、岩井監督の出身地である宮城県・仙台市でロケが行われたこともあり、監督の"原点"ともいえる『Love Letter』とシンクロしたかのような世界観が心に温かな余韻を残す作品だ。
■脚本家・坂元裕二による名セリフの数々も...松村北斗(SixTONES)扮する夫への恋心を体現した『ファーストキス 1ST KISS』

『ファーストキス 1ST KISS』 (C)2025「1ST KISS」製作委員会
現代と過去を行き交う時を超えた恋模様という共通点を持つのが、2025年に公開された主演映画『ファーストキス 1ST KISS』。
これまでにも「カルテット」(2017年)や「大豆田とわ子と三人の元夫」(2021年)といったヒットドラマで、松がその世界観を体現してきた脚本家・坂元裕二によるオリジナル脚本に注目が集まった珠玉のラブストーリーだ。

『ファーストキス 1ST KISS』 (C)2025「1ST KISS」製作委員会
松が演じるのは、結婚して15年目、倦怠期を迎えていた夫の駈(松村北斗)を事故で失った妻のカンナ。新たな人生を歩もうと思っていた矢先、駈と出会った2009年の夏にタイムトラベルしてしまう。夫になる前、まだ20代の駈と触れ合ううちに、再び心を寄せるようになったカンナは、駈が事故死する"15年後の未来"を変えたいと思い至るようになる。
夫婦関係が冷えきった15年という歳月を、痛々しいほど生々しく体現した一方で、思わぬ形で"再会"した駈に再び心がときめいていく過程での、チャーミングな表情はとても魅力的だ。"坂元節"ならではのコミカルなセリフの応酬も小気味よく、作品にリアルなエモーションをもたらしている。
■共同プロデューサーを務めたオダギリジョーへの信頼がうかがえる!秀逸なヒューマンドラマ『夏の砂の上』

『夏の砂の上』 (C) 2025映画『夏の砂の上』製作委員会
前2作とは打って変わって影のある姿を見せているのが、映画『美しい夏キリシマ』の脚本でも知られる劇作家・松田正隆の名作戯曲を映画化したヒューマンドラマ『夏の砂の上』(2025年)だ。
幼い息子を亡くした喪失感からもぬけの殻となった主人公をオダギリジョーが演じており、松とは「大豆田とわ子と三人の元夫」でも共演経験のある間柄。同世代であり、本作で共同プロデューサーも務めるオダギリの存在が、今回の出演の決め手になったことを、映画の完成披露イベントなどでも明かしている。

『夏の砂の上』 (C) 2025映画『夏の砂の上』製作委員会
オダギリ扮する主人公の治を取り巻く人間関係として、妹の阿佐子役に満島ひかり、その17歳になる娘であり、ひょんなことから治と同居することになる姪の優子役に高石あかり(「高」は正しくは「はしご高」)、優子へ好意を寄せる・立山役には高橋文哉...と、人気・実力ともにそろった気鋭のキャストが並ぶなか、松が演じているのが、治の別居中の妻・恵子だ。
治との息がつまりそうな夫婦生活を見限り、かつて治が働いていた造船所の元同僚である陣野(森山直太朗)と関係を持ってしまう。言葉数こそ少ないものの、治に向ける諦めのまなざしなどシリアスな表情で、冷え切った関係や苦しみを浮かび上がらせており、改めて松の凄みを感じることができる。
■夫婦間の危うい愛を体現!西川美和監督のオリジナル脚本も光る『夢売るふたり』

『夢売るふたり』 (C)2012「夢売るふたり」製作委員会
最後に紹介するのは、2025年7月期のドラマ「しあわせな結婚」での夫婦役も話題となった阿部サダヲと初めて共演した映画『夢売るふたり』(2012年)。『ゆれる』(2006年)や『すばらしき世界』(2021年)で国内外の映画祭で称賛の声を集めてきた西川美和監督がメガホンを取り、結婚詐欺に身を投じる夫婦の姿をオリジナル脚本で描いた異色のラブストーリーだ。
阿部と松が扮するのは、東京の片隅で小料理屋を営むも、火事で全てを失ってしまった夫婦。酔った勢いで店の常連客と一夜を共にした貫也(阿部)の浮気をきっかけに、里子(松)の策略で、貫也が言葉巧みに女たちから金を騙し取る"結婚詐欺"を思いつく。
犯罪を重ね、嘘を繰り返していくうちに、夫婦間にズレが生じていく感情の起伏を丁寧に描出。夫を優しく支える賢妻だった里子が、焦燥感や女の嫉妬をたぎらせていく変貌ぶりを体現した松の演技は圧巻の一言だ。

『夢売るふたり』 (C)2012「夢売るふたり」製作委員会
年齢を重ね、成熟した魅力とともに女優として飛躍し続ける松たか子。初参加となったカンヌ国際映画祭で世界的注目を浴び、初の"朝ドラ"出演を控える今、映画ファンに刺さる作り手たちとのタッグによって引き出された映画女優としての魅力を、これらの作品で改めて堪能したい。
文/武山奏戸




