「梨泰院クラス」をリメーク!竹内涼真が巨大権力に立ち向かう
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2024.09.16
2020年に韓国で放送され、日本でも大ブームを巻き起こしたドラマ「梨泰院クラス」の舞台を日本に置き換えてリメークされた作品が「六本木クラス」。連続ドラマとしては異例となる東京・六本木での大規模な撮影を敢行した大作だ。
竹内涼真演じる絶望の淵に立たされた青年・宮部新(あらた)が、復讐(ふくしゅう)を誓って、金と権力を振りかざす巨大企業に立ち向かっていく痛快なストーリーは、本家同様の面白さ。フードビジネスを核とする下克上を主軸にしながら、ラブストーリーと青春群像劇が交錯した物語は、まさに「究極のエンターテインメント」と呼ぶにふさわしい。
物語は、父子家庭で育った宮部新の高校生活から幕を開ける。父・宮部信二(光石研)の「信念を持って生きろ」という言葉を胸に、警察官になることを夢見ながら父と仲良く暮らす新。ある日、信二が転勤することになり、新も転校することに。その前日、養護施設に支援物資を届けに行った際に、信二が娘のようにかわいがる楠木優香(新木優子)を紹介された新だったが、不愛想な性格ゆえにそっけない態度をとってしまう。
転校初日、同じクラスに優香がいて、新が気まずさを感じていると事件が発生する。陰湿ないじめを目撃した新はたまりかねて、いじめていた生徒を殴ってしまう。その生徒は、父・信二が勤める巨大飲食産業「長屋ホールディングス」の会長・長屋茂(香川照之)の長男・龍河(早乙女太一)だったのだ。学校に巨額の寄付をしている父の権力を振りかざし、校内で傍若無人に振る舞っていた龍河だったが、この事件を機に新の運命は大きく暗転する。
以降もあまりに理不尽な出来事が続き、新は数々の辛酸をなめることとなる。やがて待ち受ける長屋ホールディングスとの壮絶な戦いが見ものなのだが、絶望の淵に立たされた新が長屋ホールディングス会長に「土下座して罪を償わせる」という復讐を誓って、居酒屋「二代目みやべ」を六本木に開店。オーナーとして力強く立ち上がっていく姿が胸を打つ。そんな新を演じる竹内の演技が際立っている。父から教えられた「信念を持って貫く」ことを愚直なまでに貫き通し、どんな困難にもめげない新を力強く、爽やかに演じている。
主な登場人物としては、まず前述した楠木優香。長屋ホールディングスが資金援助する養護施設で育ち、支援の担当者であった宮部信二とは親しい間柄。後に長屋に就職し、新とは敵対する立場になる。そして「二代目みやべ」のマネージャーを務める麻宮葵(平手友梨奈)も重要な存在。IQ162で運動神経も抜群、芸術的な才能に恵まれ、インフルエンサーとしても有名な彼女は、徒手空拳で巨大産業の長屋ホールディングに立ち向かう新にとっての強い味方となるが、次第に新を男性として意識するようになっていく。
「二代目みやべ」の盟友として新を支えるのは、ホール担当の内山亮太(中尾明慶)と調理担当の綾瀬りく(さとうほなみ)。さらに、長屋茂の次男でありながら、父に反目して新の仲間に加わる長屋龍二(鈴鹿央士)も重要なキャラクターだ。愛人の子であるために父には疎まれ、兄の龍河にもいじめられて憎しみを抱いている。複雑な背景を持つ龍二の存在が、後に大きな展開を生むことになる。
彼ら若い共演陣の奮闘もドラマに彩りを与えているが、やはり本作を引き締めているのは長屋茂を演じる香川照之の強烈な存在感に他ならない。もともと「半沢直樹」での大和田常務役など、強い悪役を演じるのに定評がある俳優ではあるが、セリフのない場面でもいるだけで、強烈な「悪」の香りを放っていて、目が離せなくなる。
本作は韓国版の魅力を損なうことなく、日本のドラマとして良質なリメークに仕上がっているといえる。特に竹内や香川を中心とする俳優陣の奮闘が、大きく貢献している印象だ。出番こそ多くないが、初回に龍河にいじめられていたところを新に助けられた同級生の桐野(矢本悠馬)が、後半で新のパートナーとして華麗に再登場し、一緒に長屋に復讐する流れも痛快だ。重厚なストーリーとともに、そんな俳優陣が見せる素晴らしい演技に酔いしれてほしい。
文/渡辺敏樹