清野菜名が主演ドラマ「119エマージェンシーコール」で見せる七色の感情表現
2026.07.03
映画『TOKYO TRIBE』(2014年)で華麗なアクションを披露して一躍脚光を浴びた後、映画『東京無国籍少女』(2015年)、映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』(2015年)、映画『キングダム』シリーズ(2022年~)など、話題作に数多く出演。高い身体能力によって"アクションのできる俳優"として重宝される一方、ドラマ「トットちゃん!」(2017年、テレビ朝日系)や連続テレビ小説「半分、青い。」(2018年、NHK総合ほか)などで繊細な人物描写も披露するなど、網羅的に高い演技力を有している俳優、清野菜名。綾瀬はるかと千鳥・大悟が主演を務めることで話題の、是枝裕和監督の最新作『箱の中の羊』(公開中)にも、綾瀬演じる音々の妹・小滝亜利寿役で出演しており、第一線で活躍中だ。

(C)フジテレビジョン
■抑制された条件の下で見せる圧巻の演技
そんな清野の圧倒的な演技力が堪能できる作品が、ドラマ「119 エマージェンシーコール」シリーズ(2025、2026年)だろう。同ドラマは、清野にとって初めてとなるゴールデン帯ドラマ主演作で、消防局の通信指令センターを舞台に、救急車や消防車の出動を指令する消防局員「指令管制員」となった主人公と、その周囲の人々が織り成すヒューマンドラマ。さまざまなスキルを持った、消防・救急のスペシャリスト集団である指令管制員たちが、119番通報に応答し、通信技能と医療知識を駆使して、危機に瀕(ひん)した"命"をつなぐために、日々"声"を聞き、"声"で救う姿を描いている。2025年1月からフジテレビ系"月9"枠で放送され、2026年の1月には続編となるスペシャルドラマも放送された。
この作品で清野は、新人の指令管制員・粕原雪を熱演。雪は銀行員から転職し、自ら司令課への異動を希望して、指令管制員になることを目指して入局したというキャラクターで、かつて幼い頃に家が火事になった際、119番通報に対応した管制員に憧れてこの職に就いたという背景を持つ。通報者を少しでも安心させたい、一人でも多く助けたいという思いが強く、時に理不尽な現実に傷付いてしまうこともあるが、通信指令センターの仲間たちに支えられながら成長していくヒロインだ。

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"緊急通報の応答"という、常に極限の緊張感にさらされた職場であると言っても過言ではない状況の中、多々発生するいたずら電話や、理不尽に怒鳴られ、ののしられることも少なくない119番通報の現実を描く本作。人間の善意や悪意と直接的に向き合って心すり減らしながらも、"命"をつなげるために必死にこらえて、「救命が始まる最初の現場」で戦い続けている登場人物たちに心が揺さぶられるのだが、こと芝居に着目すると清野をはじめとする俳優陣の演技力に圧倒されてしまう。
というのも、映像的には"ヘッドセットを付けてパソコンの画面に向かって通話する"というパターンしかなく、芝居としては上半身、もっといえば"首から上しか使えない"という極めて抑制された条件の下で、命が懸かった緊迫感を出さなければならないというハードルの高い演技を見事に演じ上げているからだ。「よくこんなに表現するのが難しい舞台設定の作品を選んだな」と制作陣のチャレンジ精神にも驚かされるのだが、本当に役者陣の演技がすばらしい。

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■多数のパターンで豊かな感情表現を披露
中でも、座長の清野はキャスト陣を演技でけん引。通報してきた声に小さく頷いたり、目線や目力、表情も駆使して、焦燥感や緊張感、必死さ、懸命さ、後悔、ひたむきさ、誠実さなどを豊かに表現。しかも、応答中であるため心情を表すようなせりふは一切用いず、"声の抑揚やトーンは抑えている"という条件の下で演じ上げているのだから、圧巻というほかない。しかも、全11話の中で多くのエピソードが描かれるため、それぞれの感情表現において多くのパターンが要求されるというおまけ付きなのだ。しかし視聴していると、そんなことは意識外に追いやられて、彼女の演技にのめり込んでしまい、いつしか作品世界に引きずり込まれてしまっている。そうさせてくれるのはひとえに彼女の芝居の説得力によるもの。
加えて、通信指令センターから離れて、ドラマの縦軸で描かれる姉・小夏(蓮佛美沙子)との姉妹の関係では、雪の個人的な思いと家族の絆も別のかたちで表現しており、雪の通信指令センター内とは違った一面も好演。感情表現だけでいくつものパターンを披露しており、図らずも演技の引き出しの多さを垣間見せてくれている。
アクションとは真逆のシチュエーションで、ここまで躍動してみせる俳優・清野菜名の演技の深みをご堪能あれ。
文/原田健




