THE RAMPAGE・川村壱馬、RIKU、吉野北人が役者として魅せる心の機微
2025.01.29
映画『MY (K)NIGHT マイ・ナイト』(2023年)が、2月3日(月)に日本映画専門チャンネルにて放送される。
同作品は、ダンス&ボーカルグループ「THE RAMPAGE」の川村壱馬、RIKU、吉野北人がトリプル主演を務める、横浜を舞台に3組の孤独な男女が織り成す一夜の物語を描いた人間ドラマ。3人の"デートセラピスト"が、それぞれに悩みを抱えた女性客に癒やしを与えるという内容で、映画『四月の永い夢』(2017年)が第39回モスクワ国際映画祭で、国際映画批評家連盟賞とロシア映画批評家連盟特別表彰を受賞した中川龍太郎が監督・脚本を務め、女性客を安達祐実、穂志もえか、夏子が演じる。
刹那(川村)、イチヤ(RIKU)、刻(吉野)は、"一夜限りの恋人"として女性を癒やす「デートセラピスト」。ある夜、刻は夫に浮気され満たされない心を抱える沙都子(安達)とデートへ。また、刹那は余命わずかな母親に婚約者を紹介したい高校教師の灯(穂志)の依頼で婚約者のフリをすることに。そして、イチヤは人気インスタグラマーのmiyupo(夏子)と共に中華街の人気店を巡り、料理や自分の写真をSNSに投稿するmiyupoを手伝う。
思わず引き込まれる気鋭のシネアスト(映画芸術家)・中川龍太郎が仕掛ける演出の数々
「THE RAMPAGE」の3人がトリプル主演を務めているが、安直に「THE RAMPAGEファンのための映画」と思うなかれ!見てみるとなかなかどうして、かなりの良作な人間ドラマとなっており、繊細な心理描写と俳優のナチュラルな演技を引き出す手腕に定評のある気鋭のシネアスト・中川監督の表現力にうなってしまう。
"夜の怪しさ"を感じさせる色味で「デートセラピスト」とのデートを秘密めいた雰囲気で表し、行きつ戻りつするカット割りで疾走感を演出するなど、随所に独特のセンスを散りばめつつ、演出の力だけで視聴者をぐいぐいと引っ張っていく力強さはさすがだ。中でも、3組のそれぞれのストーリーを、同時進行で描くことで単調なオムニバス形式にしていない構成が圧巻。3つの独立したストーリーでありながらどこかでつながっており、"1つの作品にしている理由"をしっかりと持たせている。例えば、イチヤとmiyupoが角を右に曲がると、左から刹那と灯がやってくるというストーリーの切り替え方には、「やられた」と思わずひざを打つ者も少なくないだろう。
役者陣の演技が高次元でマリアージュされているからこそ良作に
また、役者陣の演技も絶妙。川村、RIKU、吉野に関しては、アーティスト活動だけでなく役者としてもドラマや舞台、映画で活躍しているだけあり、"デートセラピスト"として働きながらも、それぞれのバックボーンが垣間見えるシーンを見事な演技と表現力で熱演。特に、刹那が自身の身の上を語るシーン、イチヤがかつての知人と再会してしまった瞬間、刻が沙都子と自宅のアパートの階段を上る場面は必見で、ネタバレになるため詳細は避けるが、それぞれの心の機微がナチュラルに表現されており、ぜひ注目していただきたい。
一方、女性客を演じる3人の演技もすばらしい。名優・安達の引っ込み思案で自分を見失いかけている沙都子のふとした表情や、穂志による入念な役の作り込みでしか表せない、灯の排他的な雰囲気、夏子が貫くイチヤの尻を叩くようなmiyupoの圧の強さなど、彼女たちの演技と主演3人の演技が高次元でマリアージュされているからこそ、良作な人間ドラマとして仕上がっているのだろう。
「THE RAMPAGE」ファンはもちろん、映画ファン、人間ドラマファンも満足できる良作。それを支える"中川監督の手腕"と"役者陣の演技"の2本の柱を中心に見ると、さらに作品の深みにハマれること請け合いだ。
文/原田健