中森明菜、明石家さんまら名犯人回を厳選!「古畑任三郎」極上の心理戦5選
2026.04.28
田村正和の代表作であり、三谷幸喜脚本の中でも屈指の人気を誇るドラマ「古畑任三郎」シリーズが、日本映画専門チャンネルで5月1日(金)~6日(水・祝)に一挙放送される。本作の最大の魅力は、毎話、冒頭で犯人が明かされる"倒叙ミステリー"形式にある。犯人が分かっているため描かれるのは、「どう逃げるか」と「どう追い詰めるか」。つまり、古畑と犯人による濃密な心理戦だ。その構造ゆえに、本シリーズには数々の大物俳優が犯人役として名を連ねてきた。今回はその中から、演技・トリック・完成度のすべてが際立つ珠玉の5本を厳選して紹介する。
■第1シリーズ 第1話「死者からの伝言」(ゲスト:中森明菜)

シリーズの原点にして、「倒叙ミステリーの面白さ」を完璧に提示した記念すべき回。人気コミック作家・小石川ちなみ(中森明菜)は、恋人である編集者に裏切られたことを知り、彼を別荘の地下金庫室に閉じ込めて殺害。何食わぬ顔で「久しぶりに来たら死んでいた」と警察に通報する。そこへ車のガス欠で偶然、別荘の近くにいた古畑が現れる。事情を聞いた古畑は、ちなみの証言や行動に違和感を覚える。

やがて古畑は、「何も書かれていない原稿用紙」に着目し、事件の真相に迫っていく。通常は「何が書かれているか」が鍵となる中で、"書かれていない"こと自体が犯行時の状況を雄弁に物語る逆転の発想が鮮やかだ。また、中森明菜が演じるちなみは、愛に絶望した孤独な女性として描かれ、単なる悪人にとどまらない。共感と不気味さが同居する人物造形も秀逸で、シリーズの方向性を決定づけた一本といえる。
■第1シリーズ 第11話「さよなら、DJ」(ゲスト:桃井かおり)

"わずか3分"の犯行は成立するのか――時間トリックの醍醐味が詰まった傑作。人気歌手でラジオDJの中浦たか子(桃井かおり)は、恋人を奪った付き人に殺意を抱く。深夜ラジオの生放送中、わずかな隙を突いてスタジオを抜け出し、駐車場で付き人を撲殺。その後、何事もなかったかのように番組へ戻る。しかしラジオ局に居合わせた古畑が、わずかな違和感からトリックを見抜いていく。

この回の核となるのは、「短時間で犯行と現場の往復は可能か」というシンプルながら強力な時間トリック。ラジオの生放送という制約が、極上の緊張感を生み出している。さらに桃井かおりの演技も圧巻だ。気だるくクールなDJが、犯行時には「狩り」のように獲物へ向かう狂気を見せる。その落差が強烈な印象を残す。脚本・設定・演技のすべてが高水準で噛み合った、シリーズ屈指の人気エピソードだ。
■第2シリーズ 第1話「しゃべりすぎた男」(ゲスト:明石家さんま)

"言葉"で追い詰める、セリフ劇の完成形ともいえる一本。敏腕弁護士・小清水潔(明石家さんま)は、邪魔になった恋人を殺害し、巧妙なアリバイ工作で疑いを回避。さらに、偶然にも容疑をかけられた古畑の部下・今泉(西村雅彦)を自ら弁護するという大胆な行動に出る。しかし古畑は、些細な違和感から小清水を疑い、静かに追い詰めていく。

この回の見どころは、何と言っても"会話"による攻防だ。饒舌な小清水と、ゆったりとした語り口で核心を突く古畑。その対比が鮮やかで、言葉の応酬そのものがスリルを生む。明石家さんまのパブリックイメージを最大限に生かしたキャラクター造形も見事で、「しゃべりすぎる」ことが自滅へとつながる展開が巧みに描かれる。セリフ劇として群を抜く完成度を誇る。
■第2シリーズ 第10話「ニューヨークでの出来事」(ゲスト:鈴木保奈美)

"犯行シーンなし"で成立する、異色にして極上の会話ミステリー。アメリカを訪れた古畑は、深夜バスで出会った日本人女性・のり子(鈴木保奈美)と会話を交わす。彼女は「友人の話」として、とある毒殺事件の顛末を語り始める。やがて古畑は、その事件の犯人が彼女自身であることに気づき、車中で静かな推理戦を展開していく。

この回の最大の特徴は、犯行の描写が一切ない点だ。それにもかかわらず、緊張感は途切れない。すべては会話と演技によって成立している。鈴木保奈美の抑制の効いた演技は見事で、サングラス越しに感情を抑えながらも、声や間で心理を表現する。その静かな狂気が、作品に深みを与えている。第2シリーズの最終話として放送された本エピソードは、作品の懐の深さを示す実験的かつ完成度の高い一本だ。
■第3シリーズ 第8話「頭でっかちの殺人」(ゲスト:福山雅治)

"知性"が生んだ完全犯罪――論理と狂気が交錯する傑作。車椅子生活を送る化学者・堀井岳(福山雅治)は、かつての恋人を奪った親友への復讐を計画。爆薬を仕込んだ彫像を使い、巧妙な仕掛けで殺害を実行する。さらにその罪を元恋人に着せようとするが、古畑は堀井の思考の歪みに着目し、真相へと迫っていく。

堀井は行動力こそ制限されているものの、その分、知性が極端に研ぎ澄まされた人物だ。理屈だけで構築された完全犯罪は、同時に人間性の欠落も浮き彫りにする。福山雅治は、静かな狂気を秘めた知性派の犯人を繊細に演じ、論理と感情の乖離を見事に体現。ロジック重視の展開と濃密な心理戦が高いレベルで融合した、シリーズ屈指の完成度を誇るエピソードの一つだ。
文/渡辺敏樹




