沢村一樹の真骨頂!ドラマ「絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜」で見せた優しさと狂気

沢村一樹の真骨頂!ドラマ「絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜」で見せた優しさと狂気

フジテレビ系の刑事ドラマ「絶対零度」シリーズは、上戸彩が主演した「絶対零度〜未解決事件特命捜査〜」(シーズン1)として2010年にスタートした。翌年の「絶対零度〜特殊犯罪潜入捜査〜」(シーズン2)を経て、2018年にシーズン3となる「絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜」が7年ぶりに放送された。シーズン3では大幅な路線変更が行われ、沢村一樹が主演を務めている。沢村がリーダーを務める「ミハン」こと未然犯罪捜査班の面々が「犯罪を起こす前に防止する」ために奮闘するという、ユニークな設定がなされた。

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■「AI・監視社会・予防捜査」へ。緊迫のサスペンスに変貌したシーズン3

AIによる犯罪予測やビッグデータ解析、監視カメラ社会の到来という時代背景を前提として、海外ドラマのような予防捜査という概念を、日本の刑事ドラマに落とし込もうという意欲的な作品となった。前シーズンまでの地道な捜査ドラマから、「AI・監視社会・予防捜査」という現代的なテーマを盛り込み、緊迫感のあるサスペンスへ変貌した点が最大の特徴だ。

さらに沢村演じる主人公・井沢範人の人物造形にも工夫が見られる。井沢は元公安のエリート刑事。能天気で飄々(ひょうひょう)としているが、犯罪者を強烈に憎む裏の顔を持つ。彼は公安時代に犯罪組織の報復によって妻と娘を殺害されるという悲しい過去を持ち、内面に闇を抱えていた。過去のトラウマから犯罪者への憎悪のスイッチが入ると暴走しそうになる。そんな危険な主人公を演じる沢村が、新シリーズの核だった。

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■個性的な「ミハン」チームと、沢村一樹が見せる"危険な主人公"のすごみ

警視庁総務部資料課に所属する「ミハン」だが、実態は、AIと膨大な個人情報を用いて"未来の危険人物"を割り出すという裏の秘密組織である。井沢以外のメンバーは、山内徹(横山裕)、小田切唯(本田翼)、南彦太郎(柄本時生)、田村薫(平田満)らの個性的な面々だ。総責任者として東堂定春警部(伊藤淳史)がチームを束ねる。さらに、前シリーズまでの主人公・桜木泉(上戸彩)が重要人物として再登場し、シリーズ全体の世界観が一本につながる構成も秀逸だった。

独自設定の妙に加えて、本作の魅力は、やはり沢村一樹の力量によるところが大きい。本来は二枚目だが、コミカルな演技も抜群だ。柔和な笑顔と丁寧な口ぶりに加えて、軽妙なジョークも口にする。そんな軽やかさも沢村の持ち味といえるが、本作では裏側に殺意と狂気が潜んでいるという複雑な人物像を巧みに表現している。善意の人物でありながら怖さを秘めているため、視聴者は戸惑い、完璧な共感を得られない。そんな不均衡な構造が本作の価値になった。時に凶悪な犯人に対して怒りを爆発させる場面の迫力が抜群で、視聴者はその落差におののくことになり、井沢という人物に魅了されてしまうのだ。

前シリーズよりも、人物同士の疑心暗鬼や内面の狂気、復讐(ふくしゅう)心というマイナスな感情に重点を置き、シリーズの転換点ともなった。沢村一樹のダークヒーロー性を核として、"歯止め役"的な位置に横山演じる山内を配し、さらに本田演じる小田切は、美貌(びぼう)に加えて格闘の達人という設定でアクションシーンでも見せ場を作った。柄本演じる南はクセの強いキャラクターでコミカルな芝居を牽引(けんいん)。平田もあらゆる部署を渡り歩き、爆破物処理から変装まで何でもできる田村を好演した。伊藤演じる東堂にも複雑な過去をにおわせる伏線が張られているなど、レギュラー陣の立体的な造形がドラマの魅力を倍増させていた。

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■「誰が裏切るかわからない」緊迫感。重厚なテーマに挑んだシーズン4

2年後にはシーズン4として「絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜」(2020年)がスタート。シーズン4では、国家権力の暴走という重厚なテーマが盛り込まれ、「正義とは何か」「ミハンの是非」を深掘りする構成でパワーアップしている。新キャラクターとして、法務官僚ながら「ミハン」の統括に関わる香坂朱里(水野美紀)、世界的なホワイトハッカーでミハンに加入する加賀美聡介(柄本明)、元天才子役で演技力を武器に潜入捜査で活躍する吉岡拓海(森永悠希)らが登場。ドラマの世界観も厚みを増している。

さらに、スポーツカメラマン・篠田浩輝(高杉真宙)が重要な役割を果たすことになる。また、シーズン3から続投の捜査一課の刑事・早川誠二(マギー)に加え、彼の部下・門田役で霜降り明星の粗品がレギュラー出演。出番は多くないが、印象的な役柄を好演している。

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シーズン4では、「ミハン」のシステムが新たな危険人物を探知するが、その中に警察関係者や仲間たちも含まれていたことで、井沢たちは「警察内部の危険人物を排除すべきか」という問いに向き合うことになる。一方で、井沢自身の暴力性や過去も再び浮上し、ミハンチームが崩壊寸前に追い込まれていく展開が待ち受ける。シーズン3以上に井沢の持つ危うさが前面に出て、沢村の芝居もよりテンションアップしていく。感情を抑え込む静謐(せいひつ)さと、怒りが噴き出す瞬間の狂気。そんなボーダーラインを繊細に演じる沢村の演技力を強烈に感じさせ、本シリーズの到達点とも呼べるほど高いレベルだ。

全体的に「誰が裏切るかわからない」という構造が緊張感を醸し、ミハンのメンバー内にも疑念が渦巻くことになる。刑事ドラマに警察組織を軸にしたサスペンス要素を加えたドラマ性も高い。国家権力による国民監視の是非、AIによる選別、正義のための暴力といった"社会派"要素をうまく盛り込み、非常に攻めた内容でストーリーにも深みがあった。展開が複雑すぎる一面もあるが、卓越した沢村一樹の演技を核に、横山裕との関係性の描き方も魅力で、全編にわたる緊張感ある演出も高く評価された。

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シーズン3から4に至る"沢村版"「絶対零度」は、刑事ドラマの枠を超え、「罪を犯す前に人を裁いてもいいか」という重厚なテーマをテレビドラマに持ち込んだ意欲的な作品といえるだろう。それを支えた沢村一樹が、優しさと狂気、さらに不安定さを同時に内包する「危険な主人公」を成立させた功績は大きい。彼のファンの間でも「絶対零度」を出演作のベストワンに挙げる人が少なくないのもうなずける。

文/渡辺敏樹

放送日時:2026年6月12日 13:00~

チャンネル:フジテレビTWO

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