平野紫耀の役者としての高いポテンシャルを見届けよ

平野紫耀の役者としての高いポテンシャルを見届けよ

ドラマ「クロサギ(新シリーズ2022)」(TBS系)がJ:COM STREAMにて見放題配信中だ。

同ドラマの原作は、黒丸・夏原武による漫画「クロサギ」シリーズで、2006年に山下智久主演で連続ドラマ化、2008年には映画化もされた。2013年に完結した漫画シリーズを原作に「クロサギ」完全版として新たに平野紫耀主演でドラマ化したのが本作だ。放送当時の現代の日本で起こっている詐欺を題材に、詐欺師を騙す詐欺師「クロサギ」の活躍を描く。

15歳の時、詐欺被害に遭った父が起こした事件をきっかけに家族を失った黒崎高志郎(平野)は、詐欺師への復讐を決意し、詐欺師のみを騙す詐欺師「クロサギ」となる。表向きはアパートの大家をしており、父を騙した詐欺師・御木本(板東彌十郎)にたどり着くべく、この世の詐欺師を一人残らず喰い尽くすことだけを生きる目的としていた――。

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2つのハラハラドキドキや黒崎を中心とした人間ドラマなど魅力が満載

"詐欺師を騙す詐欺師"というダークヒーローの活躍を描いた作品であるため、どうしても全体的に"闇落ち"していきそうな雰囲気があるのだが、黒島結菜演じる氷柱という正義感にあふれたキャラクターによって、しっかりと善悪の判断基準を設けているところが秀逸。つい主人公である黒崎びいきの見方になってしまう中、氷柱が「毒を以て毒を制すことは、結局は犯罪である」と主張し続けることで、"黒崎のやっていることは決して正しいことではないこと"と"黒崎自身の闇深さ"を常にリロードして、視聴者へのメッセージを明確に表している。

そして、"詐欺師をどのように粛清していくか"というサスペンスとしての面白さもさることながら、黒崎と周りの人間が織り成す人間ドラマとしての"縦軸"も十分に楽しめるものになっているところが魅力で、単話で描かれる対詐欺師の展開と、黒崎が復讐相手に近づいていくという2つのハラハラドキドキで視聴者の心をつかんで離さない。

また、黒崎自身の苦悩と葛藤も描かれており、復讐に全振りした生き方を続ける中、氷柱との邂逅によって無意識にも内面に変化の光が差すところや、詐欺の師匠である桂木(三浦友和)の秘密を知った時のメンタルの崩壊など、黒崎の人間らしい部分が作品に厚みをもたらしている。

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 "役者・平野紫耀"の高いポテンシャル

そんな魅力満載の"作品の骨組み"に、リアリティーを"肉づけ"しているのが役者陣の抜群な芝居だ。三浦の重厚な芝居、中村ゆりの繊細な芝居、佐々木蔵之介の精妙な芝居、黒島の実直な芝居、山本耕史の練熟した芝居など、演技力は折り紙付きの役者陣による芝居のハーモニーが自ずと作品のクオリティーを上げている。中でも、主演の平野が"役者"としての高いポテンシャルを存分に披露している。

黒崎は"詐欺師を騙す詐欺師"であるため、人となりなどは周囲の人間には明かさないキャラクターかと思いきや、平野は年齢そのままの等身大の青年として演じ、対面した相手がつい気を許してしまうようなほんわかした雰囲気をまとった人物として表現。これによって、詐欺師を騙す時の変装時もほんのりと"黒崎感"があって、全くの別人を演じているという違和感のない"説得力のある変装"を実現しつつ、視聴者に見やすさも提供。さらに、心象表現においてもナチュラルさを担保しつつ、氷柱らに見せる顔と一人の時の顔とのギャップも色濃く表すことに成功している。この高度な演技の構築は、緻密な計算によるものなのか感覚的なものなのか判別できないが、どちらにせよ役者としてかなりの高い能力を有していることが分かる。

アーティストとしても活躍する平野の、役者としての魅力を十分に堪能できる秀作をぜひ見届けてほしい。

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文/原田健

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