「最高の景色」目指す日本代表。森保一「サッカーは究極、ボールの奪い合い」【二宮清純】

「最高の景色」目指す日本代表。森保一「サッカーは究極、ボールの奪い合い」【二宮清純】

6月に開幕するサッカーW杯北中米大会に向け、日本代表がギアを上げています。さる3月31日(現地時間)には、国際親善試合として聖地ウェンブリー(ロンドン)で、FIFAランキング4位のイングランド代表と対戦し、1対0で勝利しました。サッカーの母国イングランド撃破は、アジア勢初の快挙でした。

■「1対1で勝てるか」

「いい守備からいい攻撃で点を取れたことは自信になる」

森保一監督が振り返ったのは、前半23分のMF三笘薫選手の得点シーンです。自陣センターサークル付近で相手からボールを奪った三笘選手は、MF鎌田大地選手、FW上田綺世選手とのパス交換から再びボールを受けると、ドリブルで抜け出し、一度、ボールを左サイドのMF中村敬斗選手に預けます。折り返しの横パスを、右足で冷静にゴール右隅に決めました。

この試合、三笘選手は本来の左ウイングバックではなく、左シャドーに入りました。もうひとりのシャドーである伊東純也選手との連係もよく、森保監督は手応えを得た様子でした。

「(伊東)純也はウイングバックであったりシャドーであったり、その時々に経験もあると思いますけど、(三笘)薫に関してはあまり経験のない中、スコットランド戦とイングランド戦で薫が入った時の連係を、本人の良さを出すというところと、連係をどうやって作っていくかっていうところもテーマとしているポイントだったので、今日は非常にいいイメージを持てる戦いができたかなと思っています。

かつ、サイドからの起点、崩しというところ、薫の良さとゴール、中央の部分での起点とゴールを決めるという部分も、彼は持っている才能を今日見せてもらえたかなと思います」

代表監督として2期目を迎えるにあたり、森保監督が最も重視しているのは「1対1で勝てる力があるか」です。

「攻撃であればドリブルで抜ける力、守備であれば相手からボールを奪いきる力。サッカーは究極、ボールの奪い合いから始まるスポーツだと思っています。だから、体格に関係なく、"球際の強さ"や"局面での強さ"は、選手選考のうえで最重要視しています」

■"日本らしさ"の限界

かつて日本サッカーは「個」よりも「組織」を重視してきました。しかし、「それだけでは勝てない」と森保監督は言うのです

「まずは、世界との競争の中で、日本がどれだけ力を高めていけるか。それが何より大切だと考えています。日本人の良さや"日本流"にこだわりすぎるのではなく、まずは世界のスタンダードを理解したうえで、自分たちの実力をしっかりと身につけていく必要がある。その"世界と戦える力"を備えたうえで、日本人の持つ美徳や、日本ならではのスタイルを最後に上乗せする。それが本来あるべき順序なのではないかと、最近は強く感じています。これまで日本では、"日本らしさ"や"日本の良さ"という言葉が先行し、それを前面に出せば世界とも戦える、という風潮があったように思います。でも実際に代表監督として現場での経験を重ねるなかで、私は『それだけでは違う』と感じるようになりました」

森保監督は、2018年ロシア大会はコーチ、2022年カタール大会は監督としてW杯を経験しました。

実際に指揮を執ったり、采配を手助けする過程で、日本人はこうだ、とか、こうすべきだといった固定観念や先入観が、いかに有害なものかに気付いたというのです。

「もちろん、日本人の持つ美徳やスタイルを出していくという根幹は忘れてはいけません。ただ、たとえば一般的には"日本は技術で勝負""世界はフィジカルで押す"といった、わかりやすい対比が語られがちですが、実際の現場ではその前提が崩れることも多々あります。技術で勝負できると思っていたのに、世界のほうが上回っていた。そんな現実もあるんです」

イングランド戦勝利後、欧州のいくつかのメディアは、日本をそれまでの「アウトサイダー」から「ダークホース」に"格上げ"しました。だが森保監督も選手たちも、その評価に満足する素振りは見られません。あくまでも目指すのは「最高の景色」です。

二宮清純

二宮清純 (ライター)

フリーのスポーツジャーナリストとして五輪・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグ、ボクシングなど国内外で幅広い取材活動を展開。スポーツ選手や指導者への取材の第一人者・二宮清純が、彼らの「あの日、あの時」の言葉の意味を探ります。

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