下川甲嗣|W杯経験が導く成長と覚悟。東京サントリーサンゴリアスで挑む今季
スポーツ インタビュー
2026.03.20
ラグビーが教えてくれたこと~楕円球に魅せられた人々の熱い思い~
トップリーグ時代5度の優勝を誇る東京サントリーサンゴリアス。リーグワン初優勝を目指す今季、日本代表にもすっかり定着したFL下川甲嗣に、チームの進化と個人の成長について聞いた。

――今季取り組んで「うまくいっている」と感じる点は?
「相手陣22m内に入った時のスコア率は、昨年の反省を踏まえて改善に取り組んでいます。今季はそのゾーンでのシステムや役割をより明確にしており、まだ数値は追い求める必要がありますが、手応えは感じています。例えば第5節の三重ホンダヒート戦で、終盤にトライを取り切って勝ちにつなげられた場面は、取り組みが形になり始めた試合だと思います」
――ディフェンス面の現状と、今季ポイントとしているところは?
「ディフェンスはシステム面がかなり明確になってきました。あとは恐れずに前に上がってタックルできるかどうかです。1人目、2人目のタックルのクオリティは最終的に個人の責任が大きいので、そこはさらに高めていきたいと思っています。同時に、個の力を生かすためにも、チームとして横につながりながらプレッシャーをかけることも重要になります。良い試合では、ボールを取り返して自分たちのアタックにつなげる"循環"ができているので、そうした守備を80分間、継続したいと考えています」
――あらためてご自身の強みと、今季さらに伸ばしたいと意識した部分は?
「自分の強みは、泥臭いことをやり続けるところだと思っています。ワークレートやブレイクダウンでの激しさ、回数、質は、これまで積み上げてきた部分です。今季はそこに加えて、ボールを持った時のアグレッシブさも高めたいと取り組んでいます。アタックでも自分が前に出ることで、チームのサイクルをより良くできると感じています」
――「アタックでの貢献」を意識するようになった背景は?
「昨シーズンを通して試合で感じたことが大きかったです。チームとして良いサイクルを持つためには、バックロー(FL/NO.8の総称)がアタックで前に出ること、ディフェンスで止めてボールを取り返すこと、得意な選手であればジャッカルで奪い切って攻撃につなげることが重要になります。バックローの働きが良くなると、チーム全体の流れも良くなるという実感がありました」
――元ニュージーランド代表FLサム・ケイン主将の存在から受ける影響は?
「発言でもプレーでもチームを引っ張ってくれる存在です。球際や密集での強さは本当に圧倒的で、テクニック以上に、根底にある『絶対に負けない』という泥臭さを局所で見せてくれます。だからこそ、今シーズン、チームのキャプテンを任されているのだと思いますし、チームのために体を張る姿勢は、加入当初から感じています」

――今季で27歳となり、若手選手も増えてきました。意識の変化はありますか?
「もう若手ではなく、中堅の立場だと思っています。チームから特別に『これをやれ』といわれているわけではありませんが、自分のプレーや振る舞いに自然と責任が伴う年齢になりました。サンゴリアスが目指すラグビーに対して、自分のプレーでしっかり力になること。それが一番大事だと考えています」
――東京SGの元日本代表SH流大選手とCTB中村亮土選手が今季で引退を表明されました、優勝して送り出したいという思いは?
「もちろんあります! このクラブのカルチャーを築いてきた中心のメンバーですし、勝って、優勝して送り出したいという気持ちは強いです。自分自身も、サンゴリアスに入団してから優勝を経験していないので、今季こそタイトルを取りたいと思っています」
――今シーズンは地元・九州でも試合がありますが、モチベーションや思いは?
「地元の九州で試合があるのは素直にうれしいです。親戚や知り合いも来やすいですし、見に来てほしいと思っています。特に4月に行われる第15節のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦は、3節の大敗を踏まえるとリベンジしたい気持ちがあります。その先でタイトルを取るためにも、倒さなければいけない相手ですし、順位も一つでも上に行きたい」
――リーグワン全体としてチーム力が拮抗し、接戦が増えてきました。戦い方として重視していることは?
「結局は、目の前の一戦一戦にフォーカスすることが大事になってくると思います。どこが相手でも勝たなければいけないのは変わりません。実力差が大きくないリーグだからこそ、ペナルティ一つで流れが変わる試合が増えています。だからこそ、目の前のプレーの精度がより重要になります」
――サンゴリアスで注目してほしい若手選手はいますか?
「若手は全体的に良い選手が多いですが、熱心でハードワークを惜しまない、ハングリーな選手は試合でもアグレッシブなプレーができると思います。競争があるからこそ強いチームが生まれる。サンゴリアスは「誰が出ても強い」チームを理想としていて、その競争を歓迎しています」

――2023年、日本代表としてワールドカップに出場されました。大舞台で戦った経験から得たものは?
「自信がついたというより、足りない部分が明確になったという意味でプラスでした。世界のレベルで通用するには何が必要かわかりました。基礎的なところで言えばフィジカリティです。あとはどんな試合でもいつも通りのプレーを心がけるようになりました。練習でやってきたことしか試合に出せないので、試合だからといって変に力むことなく、いつも通り集中してやることが大事だと思っています」
――日本代表のジョーンズHC体制は今季で3年目を迎えます。昨季、変化を感じた部分はありますか?
「やるべきことや自分たちのジャパンラグビーがより明確になっていると感じます。1年目の成果と課題が、2年目でより良い形にフィックスされてきた部分があると思います」
――現在、下川選手が日本代表で求められていることは?
「ディテールへのこだわりだと思います。試合の中で『ここができていれば』という場面は必ずあります。ミーティングを重ねる中でも、細かい部分を突き詰めることの重要性を改めて感じています。日本代表で求められているレベルは高いですが、そこを徹底することが最終的な強さにつながると思います」
――もちろん、2027年ワールドカップに出場することは目標の一つだと思いますが、どうお考えですか?
「もちろん日本代表として出場することは目標ではありますが、まずはリーグワンでチームから認められるパフォーマンスを出さないといけない。先を見据えるというよりも、目の前の一戦一戦に集中していきたいと思います」
――最後に、ファンに見てほしいところ、そして改めて、今季の目標をお願いします。
「リーグワン初優勝は絶対に揺るがない目標です。サンゴリアスのラグビーは、アグレッシブなアタッキングラグビーという軸として変わりません。その中で自分は、ワークレートやブレイクダウンでチームに貢献し、勝ちにつなげたい。見てくださるファンの方がワクワクするラグビーを届けて、シーズン最後にファンもチームもみんなで最高の景色を見られるよう、積み上げていきたいと思います」
Personal Words
「正しい判断より、強い決断」
恩師から教わったこの言葉を
信条に日々、プレーしています
ラグビーを始めたのは4歳の頃。近所の人に誘われて入ったスクールが原点です。高校時代の恩師に教わった「正しい判断より、強い決断」という言葉は今も心に残っており、ラグビーをする上でも日々、大切にしています。最近は子どもが生まれ、家族が原動力になっています。オフは家族と過ごし、子どもの成長を感じながら写真を撮ることが趣味の一つになっています。

プロフィール
'99年1月17日生まれ。福岡県出身。188cm /106kg。ポジションFL/NO.8。修猷館高校→早稲田大学→東京サントリーサンゴリアス。'23年W杯出場。日本代表23キャップ('26年3月6日現在)。
撮影/長尾亜紀 取材・文/斉藤健仁




