田口壮、檜舞台で天敵打倒。ワグナー「タグチがベーブ・ルースに見える」【二宮清純】

田口壮、檜舞台で天敵打倒。ワグナー「タグチがベーブ・ルースに見える」【二宮清純】

ワールドシリーズ制覇の記念としてメジャーリーガーの誰もが憧れるチャンピオンリング。セントルイス・カージナルス、フィラデルフィア・フィリーズ、シカゴ・ホワイトソックスでプレーした田口壮さんは、カージナルスとフィリーズの2球団で、記念のリングを手にしています。ちなみにワールドシリーズのチャンピオンリングを2つ保持している日本人メジャーリーガーは、田口さんを含めて伊良部秀輝さん、井口資仁さん、大谷翔平選手、山本由伸投手の5人だけです。

■地味な男の大仕事

田口さんがひとつ目のチャンピオンリングを手にしたのは、オリックス・ブルーウェーブからカージナルスに移籍して5年目の06年です。

このシーズン、田口さんは05年の143試合に次ぐ134試合に出場し、打率2割6分6厘、31打点と、まずまずの成績を残しました。

シーズン中は、左投手に対する代打や代走、守備固めなど地味な役割に甘んじていた田口さんが大ブレークしたのは、ニューヨーク・メッツとのナ・リーグチャンピオンシップでした。

メッツの本拠地シェイ・スタジアムでの第2戦、6対6の9回表、8回からレフトの守備位置に入っていた田口さんは先頭打者として打席に入りました。

マウンドにはクローザーのビリー・ワグナー投手。この年、フィリーズから4年総額4300万ドル(約51億1700万円=当時)という破格の契約で移籍してきたサウスポーは、40セーブをあげる活躍で、メッツの地区優勝に貢献しました。

サイド気味のスリークォーターから160キロを超えるストレートと、多くの打者をして「消える」と言わしめたスライダーを繰り出すワグナー投手からヒットを奪うのは至難の業でした。

田口さんは過去、ワグナー投手に対し5打数無安打。カージナルスのトニー・ラルーサ監督は「何とかして出塁してくれ」と言って田口さんを送り出しました。

■2度も"ワグナー討ち

フルカウントからの9球目でした。右打者でもスライダーを打つのは容易ではありません。田口さんは、狙い球をストレート1本に絞り、コンパクトに振り抜くことだけを考えていました。

快音を発した打球はレフトスタンドへ。打った本人が一番驚いていたのは、次のコメントからも明らかです。
「ストレートは滅茶苦茶速かった。ドンピシャのタイミングですよ。また、そうじゃないと入らないでしょう」

これで7対6。カージナルスは、さらに2点を追加し、9対6で勝利。戦績を1勝1敗のタイに戻しました。

田口さんの勢いは止まりません。カージナルスの3勝2敗で迎えたシェイ・スタジアムでの第6戦でも"ワグナー討ち"をやってのけたのです。0対4と敗色濃厚の9回表、2死二、三塁の場面で代打に起用された田口さんは、5球目のスライダーを見逃しませんでした。レフト線に2人のランナーを迎え入れるツーベースを放ったのです。

1度ならず2度までもやられたワグナー投手は、こう吐き捨てました。
「タグチがベーブ・ルースに見える」

第7戦は3対1でカージナルス。ナ・リーグ王者となったカージナルスは、ワールドシリーズでデトロイト・タイガースを4勝1敗で撃破し、24年ぶり10度目の世界一を達成したのです。

二宮清純

二宮清純 (ライター)

フリーのスポーツジャーナリストとして五輪・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグ、ボクシングなど国内外で幅広い取材活動を展開。スポーツ選手や指導者への取材の第一人者・二宮清純が、彼らの「あの日、あの時」の言葉の意味を探ります。

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