第五回 プロ野球愛宣言! 〜ファイターズは忙しい日々の"オアシス"です〜 【漫画家・高橋陽一】 北海道日本ハムファイターズ編

第五回 プロ野球愛宣言! 〜ファイターズは忙しい日々の"オアシス"です〜 【漫画家・高橋陽一】 北海道日本ハムファイターズ編

サッカー漫画の金字塔「キャプテン翼」の作者・高橋陽一さんに、プロ野球愛、幼少期から応援しているファイターズ愛を語ってもらった。

――高橋さんと言えば、サッカーのイメージが強いですが、プロ野球を好きになったのはいつ頃でしょうか?

「僕が子供の頃は、サッカーはまだプロがなかったですからね。いわゆる"巨人、大鵬、卵焼き"の世代で、プロ野球全盛の時代。僕も長嶋さん、王さんに憧れる普通の野球少年で、高校時代は軟式野球部でした。昔は巨人の試合は毎日TVでやっていたので、自然にプロ野球を見ていた感じです」

――そんな高橋さんが、ファイターズのファンになったきっかけは?

「小学生の頃は、まだファイターズのファンではなかったです。野球と言えば、やっぱり巨人の時代で、巨人以外は全然TVもやっていなかったし。それで周りも巨人ファンか、アンチ巨人か、みたいな感じの中で、僕はアンチの方で、阪神を応援していました。当時はみんなが憧れていた長嶋さん、王さんに真っ向から立ち向かっていた江夏豊さんが好きでした」

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――ファイターズファンになったのはいつからでしょうか?

「江夏さんがファイターズに移籍してからです。その頃はノンプロとプロの間ぐらいのチームというイメージがあって、後楽園球場でもお客さんが全然入っていなくて球場もガラガラでした。でも、なんかそういうチームを応援したいと思って。漫画的にも、弱いチームが勝っていく、みたいな方が面白いじゃないですか。アンチ巨人で阪神を応援していても、やっぱりタイガースは関西のチームですからね。東京のチームだけどあまり注目されていない、そういうチームを応援するのが楽しい、という感じでしたね」

――当時のパ・リーグだと、情報もほとんどなかったと思いますが、後楽園球場に観戦に行くこともあったのですか?

「いや、そこまで熱狂して見ていたわけではなく、プロ野球ニュースがちょうど始まったぐらいの時期で、それで勝敗を番組でチェックして、あとは翌日に新聞を見る程度でした。CS放送が始まってからは、リアルタイムでパ・リーグの試合が見られるようになったので、TVで中継を見る機会が増えましたね」

――江夏さん以外で好きな選手はいましたか?

「田中幸雄さんとか、あとは白井一幸さんとか。僕も野球をやっていた時は内野手だったので、上手いショートが好きですね。最近でも中島卓也選手とか。あとはピッチャーでは西崎幸広さんなんかも好きでした」

――そのファイターズが東京から北海道に移転した時は、どんな気持ちでしたか?

「ちょっと寂しい部分もありましたけど、チームとしては北海道へ行く方が正解じゃないかなと思いました。東京ドームだと、どうしても巨人と比べられるし。当時、北海道はプロ野球未開の地だったので、チームが北海道に行って、サッカーのように地元密着でやっていけば、北海道の人もみんな愛してくれるのではないかなと思いました」

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――ファイターズは大谷翔平選手やダルビッシュ有選手など、世界に出て行くような選手が多いですが、何か理由はあるのでしょうか?

「チームカラーとして、みんな伸び伸びやっているというか、割と決め事が多い競技の中でも、自分の個性をちゃんと出せるチームなんだと思います。個性を消すのではなく、伸ばす。大谷翔平選手の二刀流もそうですが、選手がやりたいことをやらせてあげるという部分で、変な縛りもなく、みんな生き生きとしていて、個性が出しやすいチームのように感じます」

――大谷選手は、今や世界的なプレーヤーになりました。

「一度、お会いしたことがあります。球団のTシャツで大谷選手のイラストを描かせてもらったのですが、その時はまだ細い感じでしたが、今はだいぶ変わったなと思います。大谷選手のバッティング練習も見させてもらいましたが、打球音がすごかった印象があります。当時はピッチャーに専念した方がいいという意見が多かったですけど、あれを見たらバッターの方がいいとも思いましたし、両方やるのは当然だなという感じでしたね。資料用の写真を見ながらイラストを描いたのですが、ピッチングフォームもバッティングフォームもバランスが取れていて、すごく綺麗だなと感じたのを覚えています」

――ファイターズは、現在の新庄剛志監督や栗山英樹前監督など、個性的な監督も多いですよね。

「ファンになってすぐの頃は、大沢(啓二)親分が監督で、その頃からそんな感じのチームになったのかなと思っています。ヒルマン監督の時は、優勝もしたので特に熱を入れて見た記憶がありますね。栗山さんとは一度、対談をさせてもらったことがあります。大谷翔平選手を育てたのもそうですが、本当に理詰めというか、ちゃんと選手を見ていて、監督としての意思というものをファイターズで作っていった人なのかなと思います。僕なんかの意見もしっかり聞いてくれて、人の話を自分の中に取り入れようとされていることも感じました」

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――現在の新庄監督については、どんな印象をお持ちですか?

「選手時代からエンターテイナーで、今もいろいろ楽しませてもらっています。割と突飛なこともする人なので、話題作りという意味でも、楽しいチームになっていると思います。投手の山﨑福也(さちや)をバッターで使って実際にヒットを打ったりして、そんな面白い起用をしても選手が期待に応えて、ちゃんと結果も出していますからね。すごい監督です」

――現在は漫画家だけでなく、サッカーチームの経営など、毎日ご多忙だと思いますが、日々の試合はどのように見ていますか?

「仕事場ではBGMみたいな感じで、常にCS放送が流れています。仕事が忙しいので、きっちりTVに向かって応援するというわけにはいかないので、なんとなく、ながらで見ることが多いです。でも今はビジターも全試合中継していますし、あとはGAORA SPORTSだと、二軍の試合もやっているので、この選手、今は二軍にいるのかとか、若手でいい選手がいないかな、などと思いながら見ることもあります。出かけている時も、気になる時はスマホで途中経過を見たりしますし、勝った日は、必ずスポーツニュースを見るようにしています」

――球場に観戦に行かれることはありますか?

「エスコンフィールドは去年、初めて行きましたが、素晴らしかったですね。うちのサッカーチーム(南葛SC)も、将来的にはスタジアムを葛飾に作りたいと思っているので、参考にしたいと思って、大きいビジョンがいいなとか、細部までチェックしながら球場内を歩いて回りました」

――今年のファイターズは優勝候補にも挙げられていますが。

「そう簡単ではないと思いますが、チームとしてだいぶ整ってきたので、クライマックスシリーズにはいけそうですね。優勝しなくても、日本一を目指すということであれば、可能性はあるんじゃないかな。リーグ優勝するためには、大事な試合をいかに勝つか、接戦をものしていかなければいけないと思います」

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――高橋さんが注目している選手は?

「注目しているのは今年から四番を任されている野村佑希選手です。彼が今年化ければ、チームは強くなると思います。開幕カードではホームランも打ちましたしね。でも、最後はやっぱりピッチャーかな。先発もリリーフも、かなり揃ってきたので期待しています。抑えの田中正義選手、齋藤友貴哉投手もいますし、宮西尚生選手も、まだ頑張ってもらいたいです」

――新庄監督も今年で4年目になります。

「1、2年目は最下位だったけど、信念を持って起用してきた若い選手たちが成長して、昨年3年目に成績を残して、今年は勝負の年になると思います。新庄監督はああ見えて結構シビアというか、守り中心のきっちり勝つ野球を目指していて、接戦をものにできるチームに作り上げてきましたから、期待していますよ」

――メジャーリーグを代表する選手にまでなった大谷選手ですが、将来的にもう一度、ファイターズでプレーしてもらいたいという気持ちは?

「そうですね。大谷選手もそうですが、まずはダルビッシュ選手に戻ってきてもらって、最後はファイターズでやって欲しいですね。2人とも、自分の中では"元ファイターズの選手"という気持ちがあるので、メジャーで活躍している姿を見るのはうれしいですね。他にも、近藤健介選手や有原航平選手、上沢直之選手とか、他球団へ移籍した選手たちが、もしみんなファイターズに残っていたら今、もの凄く強いだろうなとか、ダントツで優勝するんじゃないかとか、妄想して楽しむこともあります」

――高橋さんにとってファイターズとはどんな存在ですか?

「僕の場合は職業柄、部屋にずっとこもって作業をすることが多いので、その時のちょっとしたオアシスというか、息抜きの時間をくれるもの、という感じですかね。勝つと気分が良くなるし、負けたら悔しいとも思うし。休憩中にチェックしてリードしていると、うれしくなってまた仕事を頑張ろうと思えるし、勝った日の夜はスッキリしてよく眠れます。生活の良いリズムを作ってくれる、とても大事な存在ですね」

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ファイターズが勝った日はスッキリ眠れる。
生活の良いリズムを作ってくれる大事な存在です

Profile 高橋陽一
'60年7月28日生まれ。東京都葛飾区出身。'81年「キャプテン翼」(集英社)で漫画家デビュー。日本サッカーはもとより、世界のサッカーの普及・発展に大きく貢献し、'23年に日本サッカー殿堂入り。'19年から「南葛SC」(関東サッカーリーグ1部)のオーナーを務め、生まれ育った葛飾からJリーグ昇格を目指す。

取材・文/大久保泰伸 撮影/佐野美樹

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