中野友加里が語るフィギュアスケートの魅力と見どころ「四大陸選手権は世界選手権につながる大会」

中野友加里が語るフィギュアスケートの魅力と見どころ「四大陸選手権は世界選手権につながる大会」

四大陸フィギュアスケート選手権(以下、四大陸選手権)、世界フィギュアスケート選手権(以下、世界選手権)と、ビッグタイトルの大会が続くフィギュアスケート。四大陸、世界選手権、いずれにも出場経験のある元フィギュアスケーターの中野友加里さんは、スケート競技から引退した後入社したテレビ局時代にはフィギュアスケート競技の番組制作やレポート・解説をしていたこともある。現在はジャッジ(審判員)の資格を取得し、スポーツコメンテーターとして活動される中野さんに、四大陸選手権、そして世界選手権の見どころなどを聞いた。

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「ISU四大陸フィギュアスケート選手権2025」
写真:森田直樹/アフロスポーツ

――プレイヤーとして解説者として、ジャッジとして。長年フィギュアスケートに関わっていらしている中野さんからみたフィギュアスケートの魅力とは?

「風を切っていく感覚は選手にしかわからないかもしれませんが、『スピード』がスケートの魅力だと思っています。リアルで見ると想像よりもスピードがあることに驚かれる方もいると思います。師事していた佐藤信夫先生も『スケートの一番の魅力はスピード。スピードに勝る魅力はない』と口癖のように言われていて、指導される時も常に『とにかくスピードを出せ、スピードを出せ』と言われていました。スケートの魅力は、もちろんジャンプであり、スピンでもありますが、基礎がしっかりしていないと、うまくジャンプやスピンにつながりません。基礎を磨いていくためにも最終的に行きつくところはスピードなので、やはり一番の魅力はスピードだと思います」

――テレビで見ていても、全体を映すフルフレームの映像だとスピード感が伝わってきますね。

「速く滑るために、スピードを出すための動作、蹴り方、足さばきを学ぶ必要があり、基礎がしっかりしていないとスピードが出せません。テレビで見る際には、スピードにも注目していただけると面白みが増すと思います。一方、上半身アップのシーンではスピード感は分かりませんが、美しい。カメラマンさんの腕のおかげもあり被写体が美しく映ります。カメラマンさんと目線が合うことはありませんが、違う方向を向いていても、一つの絵のように作品になっています。それは選手たちが360度どこから見られてもいいように、日々鍛錬を積んでおり、それをうまくカメラで押さえてくださっているからです」

――撮影する側からすると上手な選手というのは、いろんな角度から絵になるなというのがありますね。

「信夫先生、奥様の久美子先生もおっしゃられていたのが『どこにでも目があると思いなさい。360度だけではなくて3階席の人まで届くぐらい訴えかける、話しかける。ただ単に点数を付ける審判の方にアピールするのではなく、全ての人と会話をしなければいけない』と言われていました」

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「ISU四大陸フィギュアスケート選手権2025」
写真:西村尚己、森田直樹/アフロスポーツ

――最近のフィギュアスケートの競技の傾向や、求められていることはあるのでしょうか?

「プログラムは一つの作品、よりパッケージ感が求められます。今の採点方法から見てもそう思います。一つひとつのつなぎに流れがあり、その流れを途切れさせることのない連続性が求められている。なおかつ、その中で自分を表現しなければいけない。さらに構成においては、いかに振り付けが凝っているか、いかに全体的にバランスよく滑っているかなどをジャッジは見ています。最近の選手たちには、よりレベルの高いプログラムの作品作りが求められていると感じますし、私たちの頃に比べて、一人ひとり選手たちの表現力が素晴らしいと感じます。小さい子どもでも上を向いて楽しそうに滑っていて、意識の高さにびっくりします」

――子どもたちのレベルが年々上がっていますね。

「すごいです。スピンも上手ですけど、表現力がすごいです。幼い選手でも小さい体を使って、プログラムの世界観や、自分が思う作品を作り上げている。ボーカル入り曲の使用が私の頃はダメだったんですけど、2014/15シーズンから解禁され、よく使われる『オペラ座の怪人』『レ・ミゼラブル』『ラ・ラ・ランド』などはボーカル入りにすることで、自分も入り込みやすくなって、より表現がしやすくなったと思います。選手たちがどういうプログラムを選ぶかというのも、スケートの魅力の一つです。それに合わせてまとう衣装も作品の一部です。スケートには、たくさんの魅力があると話しながら思いました。冒頭でスケートの魅力はスピードと言いましたが、やはりプログラムあってのスケートなので、全てが魅力だと思います。音楽も衣装も靴も。以前、クラシックバレエの方とお話しした時に、クラシックバレエは芸術であるという話になりました。では、スケートはどうかと言うとスポーツです。美しさも問われるので、芸術を兼ね備えたスポーツ。そして、技術的な部分でもジャンプや回転など、いろんなことを求められるスポーツだと思います」

――ジャッジする側も評価が大変なのでは?

「私がよく審判として言われているのは『良いところをたくさん見つけてあげてください。どちらかというと欠点ばかり見えてしまうかもしれないですが、まずはたくさん良いところを見つけてあげて、もし減点することがあれば、そこから減点してください』と言われています。なるべく選手たちの個性を見つけ、そこを評価した上で点数を付けるように心がけています」

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「ISU四大陸フィギュアスケート選手権2025」
写真:森田直樹、西村尚己/アフロスポーツ

――四大陸選手権、世界選手権のみどころは?

「四大陸選手権は、4回転半アクセルを跳ぶイリア・マリニン選手や、トリプルアクセルを武器とするアンバー・グレン選手がいるアメリカ勢が強いです。実はマリニン選手を去年、埼玉で見ました。目の前で見た4回転半アクセルはコマが回っているみたいで、回転が速すぎて圧巻でした。一方の日本勢も強いです。日本のすごいところは途切れずに絶対表彰台にいること。どちらかというと日本で1位を取って、表彰台に上がる方が大変なぐらいレベルが高い時代なので、表彰台をぜひ狙ってほしいなと思います。四大陸選手権は世界選手権につながる大会として、より洗練された自分を見せて、世界選手権につなげてほしいです」

――四大陸世界選手権、どのような思い出がありますか?

「私が四大陸に初めて出場したのが、高校2年生でした。シニアに上がった年で、選手権と名の付くものに出られるだけでうれしかったです。荒川静香さん、村主章枝さんと一緒に出て、楽しかった記憶しかないです。そういう楽しかった記憶が大事だと思います。私は何度も出場するうちに、だんだん守りに入ってきてしまいましたが、今の選手には楽しかった気持ちを大事にしてほしいと思います」

――世界選手権にも何度も出場されていますが、どのような舞台でしょうか?

「夢の舞台です。世界選手権はシーズン最後を締めくくる一番大きな大会で、そこを目指してシーズンオフから練習を積んでいくので、一番の目標です。初めての世界選手権は、そのシーズンにまさか出られると思っていなかったのでとてもうれしかったです。いつもテレビで見ている選手たちと一緒に滑れるというのが新鮮で、気後れせずに勢いだけで突き進むという感じでした。2回目の世界選手権は忘れもしない、東京での世界選手権でした。その舞台に立つために1年間頑張っていたので、東京の世界選手権が出場して一番うれしかった大会です。日本で行われる世界選手権に、スケート人生において出られる機会はそうそうないので。出場が決まった時は、『東京の世界選手権で滑れるんだったら、衣装を作ろうかしら』と母が言っていたほど、家族も喜んでくれました」

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「ISU世界ジュニアフィギュアスケート選手権2025」
写真:西村尚己、森田直樹/アフロスポーツ

――今後の活動についてお聞かせください。

「スケートを辞めた直後は、もうスケートに関わるもんかと思うぐらい、お腹いっぱいだったのですが、何年かたっていろんな選手たちを見ていると、『ちょっとこうしたら』みたいに思えてきて、だんだん何かしらお仕事をしたくなってきました。実は、姉が先にジャッジをしていたので教えてもらいつつ、年々複雑に変わるルールをテレビ中継のためにと勉強を始めました。2013年から審判の活動と細々とやっていたんですが、ある時すごく楽しそうに滑っている子供の選手たちを見て、それをこちらがしっかりと評価をしてあげたいという気持ちが芽生えて、本格的に審判をやってみようと思ったのがここ4、5年です。ちょっとずつ昇格試験を受けて、ようやくN級(ナショナル級)の審判資格まで取れました。N級が取れたからには全日本の審判をやりたいですし、講演などを通じてスケートの魅力をたくさん伝えていけたらと考えています」

――最後に、ファンの方たちにメッセージをお願いします。

「スケートにはたくさんの魅力が詰まっていて、選手たちにもそれぞれの個性があるので、そういった部分をたくさん見つけてもらって、たくさん応援してほしいです。そして、私もフィギュアスケートを愛する一人なので、私もファンの一人として一緒に選手たちを応援して、そして支えていきたいと思います」

放送日時:2025年3月18日 13:30~

チャンネル:J SPORTS 4 HD

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