バレーボール・SVリーグ終盤戦、大林素子が語る今後の展望と期待のホープ「秋本美空はメグカナに次ぐ逸材」
スポーツ 生中継インタビュー
2025.03.01
昨季までのVリーグを再編し、日本バレーボールの頂点として2024年10月に誕生した「SVリーグ」。男子10チーム、女子14チームによる熱い戦いが行われている。世界最高峰のリーグを目指してスタートした同リーグで、PRアンバサダーを務めるのが大林素子さん。リーグの広報・プロモーション活動に尽力する彼女に、SVリーグへの思いや後半戦の展望、注目の若手選手などをたっぷり語ってもらった。
――昨年10月に開幕したSVリーグですが、開幕からの印象は?
「開幕前は期待でいっぱいでしたが、不安もありました。それが一掃されるようないい滑り出しでしたね。特に男子は、日本代表の勢いそのままにいいスタートが切れたと思います。ファンの盛り上がりも感じますし、チケットが取れないという声を聞くのも久々のことなので...。私も現役時代に経験しているのですが、石川祐希選手(シル・サフェーティ・ペルージャ)たちの"NEXT4"世代から人気上昇の流れがきて、今の人気につながっているので本当に嬉しく思っています。
かつての日本リーグ時代から、Vリーグを経てSVリーグへと至りましたが、私はVリーグ発足の頃にプロを目指してかなわずに解雇となり、イタリアに渡ってプロになったという経験があります。バレーボール界で誰よりも強くプロ化を望んだ人間だと思っているので、今回のSVリーグを本当に待ち望んでいました。ようやく実現したことは大きな喜びです。新体制にしなければ世界では勝てないと、日本バレー界も本腰を入れました。私自身も、バレー界に恩返しをするという意味で普及活動に尽力してきたので、SVリーグは悲願でした。日本が再び金メダルを取るために、これが本当に必要な改革だった。SVリーグによって、ようやく金メダルへの道筋ができたのだなという思いです」
――女子の前半戦は大阪マーヴェラスが首位、デンソーエアリービーズとヴィクトリーナ姫路が上位につけています。後半戦の展望を教えてください。
「SVリーグは長いシーズンなので、チームによって戦い方が多少異なります。勝ち星を重ねてファイナルへの道を早く決めたいのは、各チーム共通でしょう。でも代表選手を多く抱えるチームもあれば、主力の故障でスタートダッシュできなかったチームもある。前半戦あまり勝てなくても、後半での巻き返しは可能です。選手をずっと固定して長いシーズンを戦うのは難しく、主力を休ませたり、若い選手を起用することも必要でしょう。今季は全チームが手探りで戦っていると言ってもいい。折り返しを過ぎてから差が出てきて、強いチームが抜けだしていく感じですね。後半戦になると、下位チームに対しての取りこぼしをしないように意識し始めます。また、急上昇してきた勢いのあるチームも意識する時期です。この時期は、対戦相手を常に意識しながら選手起用をする必要もあるでしょう。何勝何敗という成績も意識するようになるので、よりシビアで、しびれる戦いに入っていきますね」
――男子、女子でそれぞれ注目したい若手選手、今後のホープは誰でしょうか。
「女子の場合、次世代のスター選手の争いが本当にし烈で、まだ抜け出した人がいないという印象です。古賀紗理那さんが引退し、和田由紀子選手(NECレッドロケッツ川崎)や林琴奈選手(大阪マーヴェラス)などが頑張っていますが、その次だと誰になるのか......。佐藤淑乃選手(NEC川崎)あたりはその一番手でしょう。現状で大きく抜け出している選手がいないとも、その可能性を秘めた選手が多いとも言えます。後半戦は期待を込めて、誰が台頭するのかを楽しみにしたいですね。
また、今年の春高バレーで活躍した秋本美空選手(共栄学園)が姫路と契約したので、注目したいです。いつ合流するのかわかりませんが、おそらくすぐに起用されるのではないでしょうか。彼女がSVリーグに出場すれば、一気に話題を持っていきそうな期待があります。春高バレーの解説を30年近くやっていますが、歴代でも秋本選手はメグカナ(栗原恵さん・大山加奈さん)に次ぐ逸材だと思います。彼女は全てのプレーができる万能タイプで、守れる・打てる・上げられるという、過去にいなかったタイプの選手になれると感じますね。木村沙織さんに似ているけど、彼女はもっとパワフル。元韓国代表のキム・ヨンギョン選手のような、日本人では見当たらないタイプです。キム・ヨンギョン選手は韓国で100年に1人と言われた名選手ですが、秋本選手は日本のキム・ヨンギョン選手になれる可能性を秘めているので、非常に楽しみです。
男子の注目株は、駿台学園から東京グレートベアーズに加入した川野琢磨選手ですね。起用法が注目されますが、即戦力として使うならオポジットで、石川祐希選手や高橋藍選手(サントリーサンバーズ大阪)のラインのように育ってくれたら、もう最強ですね。197cmと身長も高く、アウトサイドヒッターもできるので、西田有志選手(大阪ブルテオン)と石川選手をミックスしたような選手になれそう。チームがどう育てるか大いに期待したいです」
――SVリーグと日本バレーの今後の展望についての期待をお聞かせください。
「SVリーグ元年で、試行錯誤しながらやっていることも多いです。3年ほどかけてリーグの土台をしっかり作るというイメージなので、これから変わる部分もあると思います。ガバナンスを含めて、SVリーグはもっと進化していくはず。今シーズンを終えてから、新たな課題点に取り組んでいくことになるでしょう。これまでのバレー界は、試合そのものを楽しんでもらうことを最優先してきましたが、イベントなど周辺のことに目を向けることも必要ですね。各チームもさまざまな企画に取り組んでいるので、スタッフさんは本当に大変だと思いますが、来季以降も楽しみです。1月には、男子のウルフドッグス名古屋と、女子のクインシーズ刈谷がホームゲームを共催しました。私も行きましたが、意義深い試みだと思います。これからもバレーを見たことがない人でも、気軽に会場に足を運べるようなきっかけ作りをしていければいいなと思いますね」
――最後にSVリーグを視聴する方に、一言お願いします。
「今はSVリーグの全試合をJ SPORTSオンデマンドで見られるので、ファンには非常にうれしいことだと思います。現状では、解説者不在で実況のみの中継もありますが、今後は視聴者の皆様がしっかり楽しめるような中継をして欲しいと思いますね。初年度なので今季は体制を組むのも大変だったはずですが、初心者の方にも分かりやすい中継にするには解説者は重要ですから。でも、全試合を見られるなんて本当に素晴らしいことだし、会場で見た試合を映像でもう一度振り返るという楽しみもあるので、生観戦と並行して楽しんで欲しいです」
※高橋藍の「高」は正しくは「はしご高」
取材/J SPORTS 文/渡辺敏樹 撮影/Keita Yamamoto