ぺえが生で見て感じた「春高バレー2025」を総括!【ぺえ連載第5回】

ぺえ

ぺえ (タレント)

タレント。小学生からバレーボールを始め、中学時代に山形県選抜になった経験を持つ。バレーボールを愛してやまないぺえが、独自の視点でバレーボールの魅力を熱く深く伝える。

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ぺえが生で見て感じた「春高バレー2025」を総括!【ぺえ連載第5回】

バレーボールをこよなく愛するタレント・ぺえによるバレーボール連載企画。今回は、2025年1月12日に閉幕した第77回全日本バレーボール高等学校選手権大会、通称「春高バレー」について、ぺえが総括。今年は会場にも足を運び、現地の熱気なども踏まえて感想を語ってくれた。

「春高」は毎年欠かさず観戦しているのですが、今年は13年ぶりに会場に足を運びました。何度見ても、あの(コートの)オレンジ色は、普段目の当たりにしている色の中で一番鮮やかに感じますね。あのオレンジへの憧れが強いので。

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■女子

東京・共栄学園が「あっぱれ!」という大会でした。1回戦から決勝まで、あそこまでの完成度の高さと集中力を切らさずに戦い抜けるとは正直思っておらず、本当に驚きました。秋本美空選手の"大爆発"がキーポイントでしたが、プレーだけでなくチームをまとめるリーダーシップという点においても"大爆発"していました。

また、観戦していて宇津木乃愛選手にも心を奪われました。すごく視野が広く、勝負強さもあって、本当に魅力的な選手ですね。秋本選手の"大爆発"が優勝のキーポイントではありますが、宇津木選手や1年生の山下裕子選手、中山楓選手たちの"覚醒"ともいえる大会中の成長など、周りの選手の活躍があったからこその優勝だと思います。

中でも、セッターの岩川友渚選手は、東京予選の段階では「丁寧なトスを上げる選手だな」という印象しかなかったのですが、春高では普段の丁寧さに加えて、トス回しが完璧でした!打ちやすさはもちろん、試合の流れを読んでアタッカーが気持ちよく打てるタイミングまでも計って上げていましたね。

宇津木選手、岩川選手らのたくましさがあったからこそ、秋本選手の"大爆発"につながったと思うので、いい影響を与え合う理想の相互関係が構築されていて、すごくいいチームでした。

男子の東京・駿台学園もそうなのですが、エースという存在はいるけれど、"全員バレー"で勝ち上がっていて、誰が欠けても駄目。余談ですが、今SNSでは「(全員バレーで勝っているのに)『大エース』という表現は正しいのか?」という、「大エース」というワードを疑問視する声が多く上がっていて、"全員バレー"で勝ち上がった両チームの戦いぶりを観ながら、「確かに『大エース』と表現してしまうと、その選手だけが活躍しているように受け取られかねないな」と改めて感じたりしていました。

先日、秋本選手のSVリーグ・ヴィクトリーナ姫路への入団が発表されましたが、元日本代表で同チームのエグゼクティブアドバイザーの竹下佳江さんと(秋本選手の母の)大友愛さんの「竹下-大友のホットライン」がつながったと、往年のバレーファンとして興奮しました(笑)。ヴィクトリーナ姫路はすごく伸び伸びプレーできるチームだと思うので、秋本選手にはこれからもバレーボールを楽しみながら成長を止めずにプレーしていってほしいなと思います。

あと、共栄学園のバレーで感動したのがブロックの寄り!寄せるスピードもそうなのですが、全員が常に動いていて、諦めない"執念"がありましたし、ブロックの寄りがいいことで後ろのレシーブも取りやすくなって、ディフェンスの連携も良かった。個人的に、今の全日本女子バレーに必要な要素が詰まっていたんじゃないかな、と。男子の駿台学園や福岡・東福岡、鹿児島・川内商工もそうなのですが、ポジションに縛られていないんですよね。ある程度のポジションの役割はあるのですが「この選手もクイックを打つ時があるんだ」とか「ブロードに走るんだ」とか、縛られていない。これは、世界と比べると高さの欠ける日本バレーにおいて、一人一人がステレオタイプなプレーから脱して戦うことの重要性が上がってきている中、これから鍵になってくるバレーボールスタイルなんじゃないかなと感じました。

一方、決勝で敗れた東京・下北沢成徳は、イェーモンミャ選手の"自分たちの代になってから、なかなか勝てなかったもどかしさ"みたいなものをすべてぶつけて、「絶対に負けないんだ!」という気迫がスパイクの重さに出ていましたし、その彼女の気迫に他の選手たちも引っ張られて、それぞれの役割を全うしていました。全員で戦っている中でも、とりわけ彼女のガッツに心を打たれました。

また、私が注目していた大阪・金蘭会と岡山・就実は残念ながら準決勝で姿を消したのですが、金蘭会は「最後まで何かつかみ切れなかったな」という印象でした。大会前に実力が抜けていた就実と金蘭会の2校に対して、他校の「この2校に食らい付く」という気持ちが強かったんですよね。その気合に押される場面が多かった......。良くも悪くもみんな真面目過ぎてしまって、空気を一掃するムードメーカーがいなかったのかな。見ていて、「もう少し伸び伸びとバレーボールを楽しんでほしかったな」と少し悔しさが残る大会でした。就実は、高橋凪選手が相手ブロックのマークに苦しみ、福村心優美選手一本勝負になってしまったことが残念でした。こちらも"伸び伸びさ"がなかったですよね。福村選手を見ていても、心から楽しんでいるようには見えず、終始苦しそうでした。

少し前の時代とは変わって、"自分たちで考えて、行動に起こす"という自主性が大事にされ始めている中で、「いかにムードよく楽しみながら試合をするか」という点において、就実や金蘭会に比べて、共栄学園や下北沢成徳の方に分があったのかなと。総じて、真面目で足並みがそろったチームよりも、個性豊かでバラエティに富んで伸び伸びと楽しそうにプレーしていたチームの方が勝ち上がっていて、そういう面からバレーボールの時代の変化を強く感じましたし、「これからもっと自主性が重要になってくるんじゃないかな」と考えさせられました。ミスをしてベンチにいる監督の顔色をうかがっているようなチームは、勝ち進めなくなっていくのかもしれません。

その点、共栄学園の中村文哉監督は、前向きな言葉だけをかけていて「今やってることは間違っていない」という前提のもとで話を進めていく感じが、「選手にとって、すごく心強いだろうな」って思いましたし、チームの前向きな空気を醸成するのが本当に上手だな、と。個人的監督賞です!(笑)さらに言うと、中村監督が選手たちを明るく送り出した後に、岩本夏子コーチが包み込むように選手たちの背中をさするのですが、このバランスが最高!共栄学園のベンチを見て、"新時代"を見ている感覚に陥りました。

そういった面に着目すると、2回戦で金蘭会に惜敗した愛知・人間環境大学附属岡崎に、個人的に特別賞を贈りたいです。フルセットまでもつれた第3セットでは、金蘭会の地力の強さが出て、流れが金蘭会優勢に傾きそうな場面が何度もあったのですが、人間環境大学附属岡崎の選手たちは一人も諦めなかったんです。全員で顔を見合わせながら「絶対にボールを落とさない」という気持ちの強さが出ていて、金蘭会を圧倒していました。最後まで気持ちを切らさず、全員で同じ方向を向いて戦い抜いた彼女たちは、負けはしましたけど悔いはないんじゃないかな。今大会で一番すがすがしいチームでした。

女子の展望として、戦術においてバックアタックを攻撃に絡めてくる学校が多く見られました。今後は、バックアタックとノークイックのバレーからの脱却が課題となってくるんじゃないかと思います。ただ速いだけの並行トスやセミクイックを武器に戦うという攻撃システムは、それだけだと厳しくなってきていて、共栄学園が見せてくれたダブルクイックやブロードのような機動力を駆使した戦い方が、来年以降は主流になってくるんじゃないかという予感がしています。

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■男子

東京・駿台学園が全試合1セットも落とさず完全優勝を果たし、史上2校目の三連覇&高校三冠を成し遂げました。全試合ストレート勝ちという圧巻の展開だったのですが、ぜいたくを言わせてもらうなら川野琢磨選手の人間性が見たかったかな。技術もずば抜けていてポテンシャルが高い選手であるが故に、常にクールにプレーしていた印象でした。しかしそれは、他校が川野選手の"勝負に対する執着心"が出るまで追い詰められなかったということなのかもしれません。次のステージでは、炎のように熱くなった川野選手のプレーを見てみたいです。

川野選手に注目が集まっていましたが、櫻井信人選手もすばらしかったです。ミスのない堅実なプレーでチームを支えて雰囲気を明るくしていましたし、サーブを打つ時の集中力の高さには「どのくらい練習してきたのだろう?」と思うほど。彼が支えていたからこそ、他の選手が楽しく伸び伸びと最後まで戦い切れたんだと思います。

対して、セッターの三宅綜大選手は、「バラエティに富んだスパイカー陣を、生かすも殺すも自分だ」という責任感に加えてキャプテンという立場でもあったので、相当苦しんだんじゃないかと思います。彼が苦しんで、苦しんで、苦しんだからこその駿台学園の優勝だったんじゃないでしょうか。優勝インタビューでも、とにかく周りに感謝する気持ちがあふれていましたし、「来年からも駿台学園の応援よろしくお願いします」というコメントから「この選手は本当に自分よりも周りのことを考え続けた最高のキャプテンだったんだろうな」と思いました。こういう真面目でひたむきな選手がセッターとして、キャプテンとして、このチームにいたからこそ、駿台学園の盤石なバレーが成立していたんじゃないでしょうか。

また、敷浪孝一選手もすごく良かったですね。かなり高さもあって、もっと上のレベルで見たいと思った選手の一人です。クイックの速さと高さは本当に魅力的で、コースの幅も広くて、今後も注目していきたいですね。

その駿台学園と決勝を戦った東福岡に関しては、ひと言「このバレーが好きでした」です。本当にワクワクさせてもらいましたし、やっぱり私はツーセッターが好きなんだなと(笑)。すごく面白いバレーを展開してくれて、漫画に出てくるチームのようで「こんなチームの監督やっていたら楽しいだろうな」と思いながら見ていました。

松下晃大選手というエースがいながらも、勝負どころでは恐れずにいろんな攻撃を仕掛けていて、それがあるからこそ松下選手が生きてくるというスタイルで、本当にいいバレーを見せてもらいました。

そんな中で、松下選手にはスター性のようなキラリと光るものを感じていて、「これからすごく楽しみだな」と思わせてくれる"華"があるんですよね。気付いたら松下選手を目で追っていて、プレーだけでなく彼の人間性も好きになりました。苦しい場面でも、本気になってチームのみんなに声をかけていて、真っ赤な顔をして、今にも泣きだしそうな表情で他の選手を鼓舞する姿が忘れられないです。今後はどのステージでバレーをするか分からないんですけど、もっとプレーを見たいなと思う選手です。

また、リベロの金城哉汰選手が「どんな練習をしてきたんだろう?」と思うほど本当に上手かった!足を止めず、身体のすべてを使ったようなレシーブで、最後まで東福岡のコートを守り切っていました。

決勝もすばらしい試合だったのですが、個人的なベストマッチは準々決勝の「東福岡×川内商工」戦です。コンビバレー対コンビバレーという似たスタイル同士の戦いだったのですが、どちらのチームも集中力を切らさず、ボールが目で追えないくらいのスピードにもかかわらず全然落ちないという......(うっとり)。個人的な特別賞は川内商工に贈ります。

あと、来年に期待したいのは熊本・鎮西ですね。今回は準々決勝で東京・東亜学園に負けてしまったのですが、一ノ瀬漣選手と岩下将大選手という二人のエースがまだ1年生と2年生ということで、今後の成長が楽しみです。加えて、ハントラクル星夏選手と吉田将大選手擁する兵庫・市立尼崎も要注目。ハントラクル選手は世代別の代表に選ばれた実績がありますし、今回準決勝で敗れた駿台学園戦では、吉田選手が奮闘。駿台学園でも最後まで御し切れない実力の持ち主ですし、とても熱く爽やかな選手です。ぜひ応援してほしい逸材です。

また、勝敗は関係なく、今大会で記憶に残った選手がいます。鳥取中央育英の星原優来選手です。身長は169センチと小柄ですが、最高到達点が325センチというずば抜けた跳躍力があり、星原選手の活躍に会場がざわめく場面が数多くありました。小柄なバレーボーラーに勇気を与えてくれるような活躍に感謝をしたいです。

※高橋凪の「高」は正しくは「はしご高」

取材・文/原田健 撮影/皆藤健治

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