ラグビーが教えてくれたこと~楕円球に魅せられた人々の熱い思い~「何かを"本気で頑張ること"の大切さ」【ブラックマヨネーズ・小杉竜一】
スポーツ インタビュー
2024.12.25
お笑いコンビ「ブラックマヨネーズ」のツッコミ担当・小杉竜一さん。ラグビー強豪校が集まる京都の高校で、ラグビーを始めた経緯や思い出について聞いた。
――ラグビーを始めたきっかけは?
「小学生から空手を習っていて、中学の時に京都府大会で決勝までいったんです。その時の対戦相手がものすごくイカついけど半年くらいしか空手をやってない工務店の息子で、負けて2位になっちゃったんです。その時に『来年絶対倒したるねん』とはならず『これは無理やなぁ』ってなったんですよね。体は強くなったけど心は弱いままで...。それからしばらく自堕落な生活を送っていて、そんな自分が嫌で高校入学のタイミングで何か部活に入って"一軍"目指して、3年間やり切ろうと思って入ったのがラグビー部でした」
――入部していかがでしたか?
「まず、謎の縦社会を体験しました。でもそんな所にも憧れてたから『これが一軍か』と。練習はとにかくキツくて、菅平で合宿をしたりバスを借りて地方まで練習試合に行くこともありました。僕のポジションはスクラムの最前線のプロップで、とにかく相手に押されないように身体を鍛えて頑張ってましたね」
――ラグビー部での思い出は?
「高校ラグビーの京都府予選で、相手チームに『スター・ウォーズ』のジャバ・ザ・ハットみたいなデカいやつがいて、ボールを持って僕の方に走ってきたんです。その時、怯まずタックルに行ったら見事に決まって。僕のフォースが全開になった瞬間でした(笑)。中学の時から京都で有名だったスタンドオフのチームメートが『あのタックルが流れを変えたぞ』と褒めてくれたんです。その言葉を聞いた時、3年間頑張ってよかったと、とてもうれしかったことを覚えています」
――ラグビー部での経験は今も生きていますか?
「何かに本気で頑張ることの大切さを学べましたし、努力したことが結果につながる成功体験を味わえたのは大きかったです。ラグビーはチームメートとの団結力が強く、仲間がいたから最後まで頑張れたと思います。個人競技の空手は挫折しましたけど、今考えると、俺はピン芸人タイプじゃなかったことも学べたかもしれませんね(笑)」
【ラグビーと私の情熱的な出会い】 筋力キープのために真夏でも冷房にあたらなかった3年間
高校時代は身体づくりのため仲間たちと筋トレに励み、入学当初60㎏台だった体重が、90㎏まで増えました。当時は冷房にあたると筋力が落ちると聞いて真夏でも冷房をつけずに堪えていました。今では冷房は20℃設定で扇風機も独り占めですけど(笑)。あの頃は今では考えられないくらいストイックな生活を送ってましたね
――高校ラグビーの面白さは?
「京都府大会で、このまま勝ち進めば強豪校の伏見工業高校(現・京都工学院高校)に当たるという時に『伏工倒すぞ!』って燃えるやつ、『勝とうや!』ってやつもいましたけど、僕は『大量失点して負けたら恥ずかしくない?』って (笑)。現実的になって冷めた感じもあった反面、厳しい練習に耐えて自信がついてくると、対外試合で惨敗してめっちゃ悔しくて、もっと頑張ろうと思ったり...。そういう青春が高校ラグビーには詰まっていましたね」
――好きなラグビー選手を教えてください。
「現役ではないですが『灰になっても、まだ燃える』の名言で知られる大野均さんです。彼はラグビーを大学から始めたのに、最終的には日本代表歴代最多98キャップ(代表戦出場試合数)までになるってすごいし、夢がありますよね」
――近年のラグビー熱の高まりについてどう思われますか?
「やはり代表が強くなることでラグビー全体が盛り上がるということを実感しますね。'15年のラグビーW杯・日本対南アフリカ戦の勝利は、僕ら世代としては信じられなかったです。泣きました。あの最後のトライが決まった瞬間、スリムクラブの真栄田賢から電話がきたんですけど、ただでさえ普段から何言ってるかわからないのに、興奮してるからさらに一言も何を言ってるのか分からなかった(笑)」
――テレビで試合を見る時、どんなところを見ますか?
「今だとフェーズ(攻撃した回数)が重なっている場面に注目して見ています。両チームの選手が入り乱れて、一見もみくちゃになっているようだけど、実はみんなちゃんとしたシステムで動いているんです。選手たちはしんどくて酸欠になってるはずなのに、頭を働かせて反則しないように動く。ラグビーって独特なスポーツですよね。前に進んで陣地をとるスポーツなのに、前に投げたら反則って厳しすぎます(笑)。だから体力だけじゃなく、頭脳も必要なんです」
【高校ラグビーで誇りに思うこと】 強豪校が集う京都エリアで勝ち取ったシード権
ドラマ「スクール☆ウォーズ」のモデルになった伏見工業高校など、当時から京都府はラグビーが盛んなエリアでした。そんな強豪校がそろう中、僕らの高校は先輩たちがベスト8に進出してシード権を獲得したんです。「お前らの年はあかんやろうな」といわれてたものの、その言葉をバネに頑張って、卒業するまでに僕の世代で2回シード権を獲得できたことは、今でも誇りに思っています。
(PROFILE) 小杉竜一 '73年、7月5日生まれ。京都府立桂高校ラグビー部出身。身長170㎝体重100kg。'97年吉田敬とブラックマヨネーズを結成し、'05年第5回M-1グランプリで優勝。
取材・文/水本晶子 撮影/菊竹規