ラグビーが教えてくれたこと~楕円球に魅せられた人々の熱い思い~「信は力なり」【俳優・山下真司】

ラグビーが教えてくれたこと~楕円球に魅せられた人々の熱い思い~「信は力なり」【俳優・山下真司】

1984年に放映された「スクール☆ウォーズ」。'80年代のラグビーブームをけん引した、今でも語り継がれる名作ドラマだ。主役を演じた山下真司さんに、ラグビーとの出会いや撮影時の思い出について聞いた。

――ラグビーとの出会いは?

「20歳の時に先輩に誘われて日本対イングランドの試合('71年9月28日)を見ようと秩父宮ラグビー場に行ったのが最初ですね。チケットは完売で見ることは叶いませんでしたが、翌日、日本が屈強な相手に怯まず、ノートライに抑えたと知った時は感動しました。後で知りましたが、その試合に私が『スクール☆ウォーズ』で演じた滝沢賢治のモデル、山口良治さんが出場していて、日本の得点は彼が決めた3点だったんです。ドラマのオープニング映像はその場面を再現しています。僕は、ラグビーボールを蹴るのも初めてだったので、ヘトヘトになったのを覚えています(笑)。
山口さんにお会いした時に伺ったんですが、当時の監督・大西鐵之祐さんと選手との絆は相当強かったそうで、いつも監督が選手たちを100%信頼してくれたから仲間も自分も信じることができたとおっしゃっていました。まさに滝沢がドラマで何度も言う『信は力なり』の言葉の通りだなと思いましたね」

――「スクール☆ウォーズ」の思い出を教えてください。

「演技未経験の若手俳優も多く、演者同士で昼飯の時や撮影の待ち時間に、ドラマで伝えたいことを熱く語っていました。スタッフ含め現場に一体感があってまさに『ワン フォー オール オール フォー ワン』の精神が宿っていましたね。僕の場合、泣く演技が多いドラマでしたが、ラグビーを見ると今でも条件反射ですぐ泣いちゃいますね(笑)。選手が出てきて涙、トライして涙と、命がけで戦う彼らの姿にぐっときちゃうんです」

――実在の人物を演じる上で心がけたことは?

 「『スクール☆ウォーズ』はフィクションの部分もあるけど、根幹は実話なんですよね。実際にモデルになった方々に『なんじゃこりゃ』って思われないようにとにかく真剣に演じました。彼らに認めてもらって、誇りに思ってもらえるドラマにしたいと思っていました。ヒットしたことで、山口さんには恩返しができたかなと思っています」

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――好きなラグビー選手は?

「今一番応援しているのは、リーチ マイケル選手ですね。5月に行われた東芝ブレイブルーパス東京と埼玉パナソニックワイルドナイツのリーグワン決勝を見ましたが、リーチ選手がゴールラインギリギリで相手のトライを阻止した場面が2回ほどあったんです。とても激しく、35歳の身体じゃないと思いましたね。僕が『スクール☆ウォーズ』に出演していたのは32歳の頃。若い俳優たちと一緒に走っていましたが、20代の彼らとは体力が全く違うのを感じたので、リーチ マイケル選手のプレーはすごいと思いました」

――ほかにも応援している選手はいますか?

「田中史朗選手ですね。以前イベントでお会いした時に、本当にラガーマンなの?っていうくらい小柄で驚きました。彼は南半球の強豪国が参加する『スーパーラグビー』に日本人で初めて参戦しましたが、あの体で大男たちに立ち向かっていく姿に感動しました。
あとは、松田力也選手ともTV番組でご一緒したことがあって、動いているトラックの荷台にボールを蹴り入れるチャレンジをして、95%の精度でキックを成功させたんです。世界に通用する選手はここまですごいのかと驚きました。お二人とも偶然にも『スクール☆ウォーズ』のモデルになった伏見工業高校出身なんです」

――ラグビーの試合は現地で見ることが多いですか?

「最近はTV観戦が多いですね。TVだと入場するところから選手たちの顔の表情が見られていいんですよ。斜めからのペナルティゴールを決める場面をしっかり見られるのもTVならではですよね。それに家なら周囲を気にせず、思う存分に泣けますから(笑)」

――ラグビーを通じて知った心に残る言葉を教えてください。

「元フランス代表キャプテンのジャン・ピエール・リーブの『ラグビーは、少年をいち早く大人にし、大人にいつまでも少年の心を抱かせる』という言葉が好きです。ラグビーは人を倒すものではなく、共に生きていくものだという、ラグビーの精神性を表していて、とても素晴らしい言葉だと思います」

(PROFILE)
山下真司
'51年、山口県生まれ。'79年「太陽にほえろ!」の刑事役でデビュー。'84年「スクール☆ウォーズ」で初主演を務めた。


取材・文/水本晶子 撮影/菊竹規