なにわ男子・西畑大吾が映画『忌怪島/きかいじま』で魅せる危険な色香

なにわ男子・西畑大吾が映画『忌怪島/きかいじま』で魅せる危険な色香

なにわ男子で見せる太陽のような笑顔を封印し、冷徹なまでの知性と、これまで見たことのない「大人の色香」をまとった俳優・西畑大吾の真骨頂に迫る映画『忌怪島/きかいじま』(2023)。数あるホラー映画の中でも、本作ほど主演俳優の「静」の演技が作品の完成度を底上げしている例は珍しいだろう。ホラー映画と聞くと、どうしても叫び声や恐怖に震える表情を連想しがちだが、彼が演じる天才脳科学者・片岡友彦は、それとは対極に位置する、徹底して理性的でクールなキャラクターだ。

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■アイドルとしての「愛嬌」を封印。「虚無」と「知性」で構築した天才脳科学者・片岡友彦

本作でまず驚かされるのは、西畑が普段放っているキラキラとしたアイドルとしての残り香を、完全にシャットアウトしている点だ。彼が演じる友彦は、非科学的な事象を一切信じず、あらゆる現象を数式や論理で解明しようとする最強のリアリストである。

その役作りは、瞬きの一つ、視線の配り方一つに至るまで徹底して練り上げられており、感情を極限まで削ぎ落としたフラットな話し方、そして何よりも「意思の強さを感じさせる冷ややかな瞳」が印象的だ。これまでの彼の最大の武器が、周囲を照らす「愛嬌(あいきょう)」だったとするならば、今作の武器は「虚無」と「知性」。ふとした瞬間に見せる冷徹な横顔や、モニターを見つめる鋭いまなざしには、観る者の目をそらさせないすごみがある。

■「静」の芝居からあふれ出す大人の色気。ホラーを忘れさせる耽美な佇まい

本作で最も特筆すべきは、感情を抑え込んだ「静」の芝居からあふれ出す、西畑の新たな魅力「大人の男としての色気」だろう。声を荒らげることも、過剰な身振り手振りもない。だからこそ、モニターを凝視する際の長いまつげの影、思考にふける時のわずかな指先の動き、そして追い詰められた時に微かに漏れるため息といった、一つ一つの所作が驚くほど艶っぽく映るのだ。

これまでの彼が「守りたくなるかわいさ」の象徴だったなら、今作の彼は「目が離せない危うさ」をはらんでいる。論理というよろいで武装しながらも、不可解な事象に翻弄(ほんろう)され、その内面がむき出しになっていく過程で見せる彼の表情は、どこか耽美ですらある。静寂の中でこそ際立つ、彼自身のみずみずしい肌感や、知性的なたたずまいに宿る色香は、ホラーというジャンルを忘れさせるほどの吸引力を放っている。

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■恐怖を好奇心に変える「知的ミステリー」。仮想空間と現実が交錯するSFサスペンスの面白さ

「怖いのは苦手だけど、西畑さんの演技は見たい」という層にとって、今作を「謎解きミステリー」として捉えることは、鑑賞のハードルを下げる大きなポイントになるだろう。

物語の舞台は、現実の「島」と、仮想空間「VR」が交錯する世界だ。友彦が論理的なアプローチで怪異の正体を突き止めていくプロセスは、まるで上質なSFサスペンスや、難解なパズルを解き明かすミステリーを観ているかのような知的興奮を与えてくれる。友彦が「なぜ、この現象が起きるのか?」という問いに対し、恐怖におびえるのではなく知性で立ち向かっていく姿は、観客の視点を「逃げ出したい恐怖」から「真相を知りたい好奇心」へと鮮やかにスライドさせてくれるのだ。

アイドルの匂いを一切断ち切り、いち役者としてその実力を存分に発揮した西畑大吾。彼が演じる片岡友彦というフィルターを通すことで、私たちは恐怖の先にある「真実」を目撃することになる。ホラーというジャンルに食わず嫌いをしている人にこそ、この俳優・西畑大吾が見せる知的な色香と、彼が導く興奮をぜひ目撃してほしい。

文/永田正雄

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