石川祐希ら参戦!バレーボール セリエAの楽しみ方を加藤陽一が伝授「推しを見つけて会場の雰囲気も含めて楽しんでほしい」
スポーツ CS初生中継インタビュー
2024.10.31
メダルこそ逃したものの、パリ五輪で健闘したバレーボール男子日本代表。キャプテンとして中心となって活躍した石川祐希選手は、10年前からイタリアのセリエAでプレーしている。世界最高峰のリーグとも称されるセリエAの魅力について、日本人として初めて同リーグでプレーし、海外移籍のパイオニアであるバレーボール指導者・加藤陽一さんに語ってもらった。
日本人として初めてセリエAでプレーした加藤陽一さん
■石川所属のペルージャが優勝候補筆頭か
――石川祐希選手がペルージャに移籍し、垂水優芽選手がチステルナ、大塚達宣選手もミラノでプレーしています。3人の日本人選手の所属チームについて、それぞれの特徴を教えてください。
「石川選手が所属するペルージャはイタリアのトップというより、世界でも屈指の強豪チームです。彼がそんなチームに加入しただけでも素晴らしいこと。昨季までの絶対的エースだったレオン選手が移籍したことで攻撃力の低下が心配されていますが、その穴を埋める活躍が石川選手に期待されている形ですね。垂水選手のチステルナは攻守に課題があり、昨季はリーグ9位(12チーム中)に終わりました。ただ垂水選手にとっては出場機会が多くなりそうなので、レギュラーを勝ち取る可能性も十分あります。大塚選手が加入したミラノはやはり石川選手が抜けた穴が大きいですね。ただ、昨季はリーグ戦6位、プレーオフ3位と力をつけているチーム。大塚選手は守備力でかなりアピールできると思うので、チャンスは十分あるでしょう。ピアッツア監督は、私の現役時代に同じチームでコーチだったこともありますが、日本人の扱いにも慣れています。大塚選手はいいチームに入ったと言えるでしょう。今季のセリエAは、日本人対決が見られる機会が多くなるかもしれません」
――我々としても日本人対決を見られるのは、盛り上がりますね。さて、今季の優勝争いの中心となるのはどのチームになりそうですか?
「今季のセリエAは、有力選手の移籍によって戦力分布が変わったので、かなり荒れそうだと見ています。その中でも優勝を争う4強を予想すると、ペルージャ、トレンティーノ、モンツァ、ピアチェンツァではないでしょうか。まずペルージャは石川をはじめ、セッターのジャネッリ選手、ミドルブロッカーのルッソ選手らのイタリア代表を擁するスター軍団。当然優勝争いの中心になるでしょう。パリ五輪で活躍したイタリア代表のミキエレット選手がいるトレンティーノも有力です。昨季のリーグ戦も1位でしたからね。モンツァには中心選手のユアントレーナに加えて、ベテランのザイツェフ選手が新加入しました。彼ら新旧のイタリア代表が両輪となり、面白い存在だと思います。ピアチェンツァは、フランス代表のセッター・ブリザール選手が中心。彼のトスワークはセリエAでも屈指ですね。加えてミドルブロッカー・シモン選手の破壊力も大きな武器となるでしょう。以上の4チームの実力が一歩抜きん出てはいますが、ミラノなどの中堅チームがどこまで絡んでいけるか、非常に楽しみですね」
アントワーヌ・ブリザール(ピアチェンツァ)
写真:Newspix.pl/アフロ
――何人か名前を挙げていただきましたが、セリエAには世界のスーパースターが集結しています。特にどんな選手に注目すればいいのか、教えてください。
「まずは先ほど名前を挙げた、ピアチェンツァのセッター・ブリザールを挙げたい。従来のセッターは、日本代表の関田選手のように身長は低くてもテクニカルなトスワークでアタッカーを生かすタイプが多かった。対してブリザールは、高さとスピードを生かしたトスをあげる。ジャネッリも同様ですが、現代のバレーではブリザールのような新しいタイプのセッターが主流になりつつあるので、彼のプレーを通じて世界のバレー界の趨勢(すうせい)が見えると言えるかもしれません。そういう意味で注目してほしいですね。アタッカーでは、やはりトレンティーノのミキエレット。左利きのレフトは世界でも珍しいので、貴重な人材です。あとはペルージャで石川の対角を担う、ポーランド代表のセメニュク選手。攻撃力が抜群なので、石川と共にチームの柱になるでしょう。パリ五輪でも彼が攻守の軸となり、銀メダルの原動力になっていました」
アレッサンドロ・ミキエレット(トレンティーノ)
写真:Newspix.pl/アフロ
■自分好みの"推し"を見つけて楽しもう!イタリアらしいファンの熱狂も見どころ
――どの選手も必見ですね。世界最高峰のリーグといわれるセリエAですが、ビギナー向けに改めて何が魅力なのか、どう楽しんだらいいのか、アドバイスをいただけますか?
「セリエAの面白さは、世界のスター選手が一堂に会することだけではありません。プレーの質の高さに加えて、会場の雰囲気が独特なのです。エンターテインメントを追求した演出と観衆の熱狂ぶりもすさまじい。ホームチームの応援団が鳴り物を使ったド派手な応援で選手を鼓舞する様子は、まるでサッカースタジアムのような雰囲気です。私も現役時代には、ファンが発煙筒をたいて煙まみれになったこともあります(笑)。同じヨーロッパでも、フランスなど他国のリーグとは雰囲気がまったく違う。バスケットの試合などでは音楽や電子音を使って盛り上げたりたりしますが、セリエAはあくまでプレーを見ながら選手名をコールしたりというリズミカルな応援スタイル。ラテン系らしい熱い盛り上げ方で、イタリアの国民性を感じます。中継の画面を通じても、あの独特な雰囲気を十分楽しめると思いますよ。
パオロ・ポッロ(ミラノ)
写真:PA Images/アフロ
セリエAをより楽しむには、自分の"推し"の選手を見つけることが一番。3人の日本人選手に注目しつつ、イタリア代表や各国のトップ選手の質の高いプレーに魅了されるのもよし。サイトを見れば各チームの選手も詳しく紹介されているので、自分好みのイケメンの選手を見つけて応援するのも楽しいはず。例えば大塚選手所属のミラノに、イタリア人セッターのポッロという選手がいますが、彼はまるで王子様のような可愛い顔をしているので日本の女性ファンにも人気が出そうな気がします(笑)。とにかく、アタック、ブロック、サーブ。セリエAではどのプレーを見ても迫力は満点です。国内リーグのようなラリーが続いてハラハラすることは少ないかもしれませんが、高さ、テクニック、スピードと全てに驚かされると思います。世界トップのパワーバレーの醍醐味をぜひ感じてほしいですね」
取材・文/渡辺敏樹