バレーボールを愛してやまない、ぺえが新生SVリーグに込める思い「パリ五輪の経験を生かした成長に期待したい」【ぺえ連載第1回】

バレーボールを愛してやまない、ぺえが新生SVリーグに込める思い「パリ五輪の経験を生かした成長に期待したい」【ぺえ連載第1回】

バレーボールをこよなく愛するぺえによるバレーボール連載企画がスタート!バレーボールの国内リーグ「大同生命SV.LEAGUE」の開幕から来年5月の閉幕まで、毎月ぺえならではの視点でバレーボールの魅力を熱く深くお伝えしていく。

■バレーボールを好きになったきっかけは"メグカナ"

栗原恵さんと大山加奈さんが活躍したメグカナ世代のワールドカップを初めて見たときに「私はこれがしたい」って思うようになって、バレーを頑張るきっかけになったのを覚えています。それに当時は、山形県天童市が本拠地だったパイオニアレッドウィングスと、山形出身の高橋みゆきさんが活躍していたことも大きくて、おかげで私自身バレーを楽しくやれていました。だからバレーボールを嫌いになったことは一度もないです。練習に行きたくないと思ったことはあっても、全日本の試合を録画テープがすり切れるまで見ていたので、「やっぱりバレーが好きなんだな」と思って続けられましたね。

バレーボールほど、一人が欠けたら勝てないスポーツはないと思っています。ボールを繋がないといけない競技だから"究極のチームプレー"が必要だと思っていて、一人一人の気持ちやコンディションがすごく影響するので、絆が深くなるんですよね。でも、仲が良いチームが強くなれるわけではなくて、強いチームは大概セッターとエースの仲が良くないと思います(笑)。コートの中で一番関わらなきゃいけないから、他では話したくなくなるんですよね。メリハリが欲しくなるというか......だからこそ、コートの中で一致団結した瞬間がものすごく気持ちいいし、自分が上げたボールを決めてくれる姿を見ると、「本当にありがとう」っていう気持ちになります。きっとチームワークって、どのぐらい本音で話し合えてぶつかり合えるかが大事なんだと思います。

■パリ五輪は、心の底から悔しいと感じる大会だった

パリ五輪を見ていて、「これまでこんなに悔しいオリンピックってあったかな」と思うぐらい、心の底から悔しかったです。特に男子は本当に言うことがなくて、たまたま勝利の女神が微笑まなかっただけ。セッターが小さくてもあそこまでのバレーができているのは、漫画を見てるような気持ちになりましたし、今の男子バレーを見ると人間が体現できる次元を超えてるというか、レシーブもスパイクも見ていてわくわくしました。だからこそ、負けたことが悔しい。逆に女子は実力を発揮するためのメンタルをコントロールする力に世界のトップチームとの差があったなと。やっぱりこの1点を取らなきゃいけない、このセットは絶対ものにしなきゃいけない瞬間ってあるんですけど、そのポイントを取り切れなかったのは見ていて残念でした。

241010_sv02.jpg

■10月に開幕するSVリーグの注目ポイント

まもなく日本ではSVリーグが始まるので、男子はあの感動したプレーが見られると思うとすごくわくわくしています。もちろん女子もオリンピックの経験を生かしてどれだけ成長したプレーを見せてくれるかが楽しみです。男子で注目している選手は、ウルフドッグス名古屋で今季からキャプテンになった高梨健太選手。同じ山形出身でもあり、パリ五輪では代表に選ばれず悔しい思いをしていると思うので、どんなプレーを見せてくれるのか楽しみにしています。チームでいうと、高橋藍選手が新加入したサントリーサンバーズ大阪は安定感がありますよね。西田有志選手や山本智大選手が所属する大阪ブルテオンも堅実ですが、セッターの永露元稀選手の活躍次第で状況が変わると思います。そんな中、私が優勝候補として期待しているのは、ジェイテクトSTINGS愛知。セッターの関田誠大選手をはじめ、宮浦健人選手や小川智大選手、高橋健太郎選手などいい選手がそろっています。なかでも、村山豪選手に注目しています。機動力もあるし跳ねるように打つ感じが新しいミドルブロッカーの形を見せてもらえるんじゃないかなって期待しています。

女子は、私がパイオニアレッドウィングスの大ファンなので、パイオニアのレジェンドだった吉原知子監督が退任した大阪マーヴェラスと、多治見麻子監督が退任したAstemoリヴァーレ茨城が今季どんなバレーを見せてくれるのか楽しみにしています。特にAstemoは、次の世代に活躍してほしいアウトサイドヒッターの選手が多くいるので、セッターの活躍次第で上にいけると思います。NECレッドロケッツ川崎は、島村春世選手がすごく好調で、同じミドルブロッカーの山田二千華選手と一緒にどこまで頑張れるのか目が離せないですね。埼玉上尾メディックスは、監督が変わってからすごく雰囲気が良くなって、選手がバレーを楽しんでいるのが目に見えてわかります。しかも、オリンピックを経験したセッターの岩崎こよみ選手もいるので、優勝候補ですね。あと、個人的にSAGA久光スプリングスが強いときはバレーが盛り上がると思っています。だから若手の北窓絢音選手には、石井優希さん(女子バレーボール元日本代表)のようにサイドの中心選手として活躍して、全チームの中で一番成長してほしいなと思っています。

ルーキーとして期待しているのは、女子では日本代表でも活躍している佐藤淑乃選手(NEC川崎)、男子では鎮西高等学校のエースとして春高優勝に貢献した水町泰杜選手(WD名古屋)、東山高校時代に高橋藍選手のチームメイトで、春高優勝を経験している楠本岳選手(東レアローズ静岡)。3選手には新人ならではの爆発力を発揮して、リーグを盛り上げてほしいです。

■パリ五輪の経験を生かした成長に期待

もっと奮い立ってほしいと思っているのは、就実高校時代に活躍してバレーボールファンを興奮させた深澤ツインズ(深澤つぐみ=東レアローズ滋賀、深澤めぐみ=SAGA久光スプリングス)。あの時の興奮をもう一度呼び覚ましてほしいと思います。それから、ヴィクトリーナ姫路にも頑張ってほしい。個人の能力は高く、すごくきれいな攻撃をするんですけど、意外性が足りないんですよね。井上愛里沙選手や宮部藍梨選手には、全日本で見せたハングリー精神を姫路でもっと見せてほしいです。

ただ姫路に限らず、どのチームも行き詰まってることを意識して、SVリーグには臨んでほしいですね。新しく始まるSVリーグでは、ただ名前だけが変わったって言われないように、今後に繋がる変化を見たいです。そういう意味では、パリ五輪を正セッターとして戦った岩崎選手がいる埼玉上尾は、優勝しないといけないかもしれない。パリ五輪で勝てるバレーとはどういうことなのかを一番感じてないといけないのはセッターだと思うし、何が足りなくて負けたのか、それを実際に感じて考えて、実践に生かせるのは岩崎選手しかいない。だからこそ、岩崎選手のいる埼玉上尾に勝ってもらわないと、パリオリンピックの経験が生きてこないですよね。「これが足りなくて日本は勝てなかった」っていうのを埼玉上尾で証明してくれることを願っています。

バレーでは、それだけセッターって重要なポジションなんです。だから、私はトスを上げる前に相手のコートのどこの部分を見てボールを上げたのかすごく気にしています。もちろんセッターにもよるんですけど、相手のコートを1回見てからトスを挙げる選手が多いから、しっかり見ていると「ここが空いてると思ったからツーアタックをしたんだろうな」とか「ここのブロックが1歩右に動いたから左に上げたんだろうな」とか、目の動きで分かるようになってくるんですよ。セッターは一番目を動かしているので、それが分かってきたらバレーはどんどん面白くなると思います。ぜひ、注目してみてください。

※高橋藍及び高橋健太郎の「高」は正しくは「はしご高」

取材・文/永田正雄 撮影/皆藤健治