見逃せないCS争いのパ・リーグと混迷を極めるセ・リーグの優勝争いのコアな楽しみ方を伝授【鳥谷敬】

鳥谷敬

鳥谷敬 (元プロ野球選手、野球解説者・評論家)

野球解説者・元プロ野球選手 各月で一番印象に残ったプレーを、準備段階や選手のメンタル面、その時のシチュエーションなども含め、鳥谷敬が解説。

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鳥谷敬 (元プロ野球選手、野球解説者・評論家)

野球解説者・元プロ野球選手 各月で一番印象に残ったプレーを、準備段階や選手のメンタル面、その時のシチュエーションなども含め、鳥谷敬が解説。

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見逃せないCS争いのパ・リーグと混迷を極めるセ・リーグの優勝争いのコアな楽しみ方を伝授【鳥谷敬】

野球解説者・鳥谷敬がプロ野球を独自の目線で斬る連載企画の第2回。セ・パ両リーグのペナントレースについて徹底解説してもらった。(※取材日は9月10日)


【パ・リーグ】


ソフトバンクがマジック点灯後、チームの流れがうまく回らずちょっと足踏みしていますけど、やはり総合的に見て順当に優勝すると思います。また、3位と4位のクライマックスシリーズ争いももちろんなのですが、クライマックスシリーズでは"上位の方がホームグラウンドで戦える"ということでホームとビジターでは全然状況が変わってくるので、2位争いも熾烈(しれつ)なものになりますね。

そんな中で、日本ハムが非常に頑張っているので、そのまま2位でいくんじゃないでしょうか。現在、ロッテと4.5ゲーム開いていますが、残り20試合だと考えた場合、日本ハムが10勝10敗だとすると、ロッテは15勝5敗くらいの戦績が必要になってくるんです。だから、残り試合を考えた場合、直接対決がどのくらい残っているかも関係してきますが、2ゲーム差以内くらいでないと追いつくのはなかなか厳しいんですよね。

3位争いは、メンバーがある程度そろっているロッテが優勢ですね。ただ、楽天も浅村栄斗選手や則本昂大投手といった経験値の高い選手がきっちり引っ張っていけば、可能性はあると思うので要注目です。

【セ・リーグ】


今一番チームのバランスがいいのは阪神なのですが、巨人と2.5ゲーム差なので、残り20試合だった場合、巨人が10勝10敗でいったら、13勝7敗が必要です。ただ、これから13勝7敗の戦いをしていくというのは、なかなかハードルが高い...。残りが30試合くらいあれば、多分阪神が優勝すると思うんですけどね。

一方、広島はピッチャーが安定していたため、"1点勝っている状態で終盤に持っていって勝つ"という試合をしていたのですが、最近、先発が早めに点を取られてしまっているので、なかなか乗り切れていない。中日やヤクルトの個人成績が中心となってきているチームに思い切って来られてやられるケースが多いですよね。首位の巨人もギリギリの状態でやってきているのですが、岡本和真選手など中軸がいるので、今の状態でいうと巨人が有利かなという感じですね。

つまり、このまま普通にできれば巨人が有利、チームの状態を考えると阪神が上がってくる可能性はあるが残り試合が微妙、広島は残り試合数が多いので残っていた試合を取ってしまえば分からない、という三者三様に勝てる要素と不安な要素があるので、本当に面白いです。広島‐巨人、横浜DeNA‐阪神と上位同士の対戦(9月10日から12日の三連戦)が、今後を占うターニングポイントになるでしょう。

各チームのファンの皆さんも、ビジターなのかホームなのか、残り試合はいくつなのか、チームの勢いはどうなのか、対戦相手との相性はどうか、こちらだけでなく相手のピッチャーのローテーションはどうかなど、最後の最後までいろんな見方で応援できると思います。

【月間鳥谷賞】

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8月の好プレーの中から鳥谷が特に印象に残ったプレーを選抜。

「カープ・矢野雅哉選手の利き手で打球をワンハンドキャッチして2塁走者を刺したプレー」

8月20日に東京ドームで行われた巨人‐広島戦。7回裏2アウト、ランナー2塁の場面で、門脇誠選手が打ったハーフライナーがワンバウンドした打球を、素手で取ってサードに投げて2塁ランナーをアウトにしたプレーです。

ポイントは、普通は"素手でキャッチする"という選択肢がないというのと、打球的にファーストが間に合わないからサードに投げるという状況判断を迷いなく実行したところですね。利き手で取るというのはけがのリスクはもちろん、グラブだと弾いても近くに落ちますけど、手だと後ろに飛んで行ったらそのまま1点入ってしまうというリスクがありますし、サードはタッチプレーの状況だったので、万が一セーフの可能性もある。つまり、リスキーな状況の中で、あえてリスクを取りながら選択したプレーをしっかりと完成させたというのがすごいです。

「タイガース・佐藤輝明選手の逆転3ランホームラン」

8月31日に甲子園球場で行われた阪神‐巨人戦。6回裏2アウト、2点ビハインドのランナー1、2塁という場面で、佐藤輝明選手が戸郷翔征投手から放った逆転の3ランホームランです。このホームランはチームにとって本当に大きかったと思います。10勝目が懸かっていた戸郷投手から打ったことで巨人に向かうかもしれないいい流れを止められたこと、佐藤選手がホームランを打って勝ったという事実がチームにもたらす意味、2点ビハインドの状況を同点じゃなく逆転できたこと、前日の試合が台風の影響で中止となった次の日にチームに勢いをつけられたことなど、たくさんの意味を持つ"大きな"ホームランだったと思います。同じホームランでも、どんな状況で打つかでチームへの貢献度は大きく変わってきますから。

文/原田健