SVリーグ開幕記念!清水邦広×狩野舞子特別対談「世界のスター選手が集まり、ハイレベルで魅力的なリーグ」

SVリーグ開幕記念!清水邦広×狩野舞子特別対談「世界のスター選手が集まり、ハイレベルで魅力的なリーグ」

バレーボールの国内リーグが今季から「大同生命SVリーグ」として生まれ変わり10月11日(金)に開幕。その魅力と見どころを元日本代表の清水邦広と狩野舞子が語ってくれた。

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パリ五輪男子バレー、準々決勝は悔しすぎる敗戦

狩野「パリ五輪では、開幕前からバレーボールがメディアに取り上げられる機会がすごく多く、周囲の期待をものすごく感じていました。特に男子は、エースの石川祐希選手(ペルージャ)や西田有志選手(大阪ブルテオン)、髙橋藍選手(サントリーサンバーズ大阪)だけでなく、セッターの関田誠大選手(STINGS愛知)やリベロの2人、山本智大選手(大阪ブルテオン)、小川智大選手(STINGS愛知)など様々な視点から取り上げられていましたね」

清水「全員が主人公になれるチームだったんですよね。選手一人一人にエピソードや五輪に懸ける想いがあって、メンバー入りした12人だけでなく、選考に漏れた選手も含めて、ドラマがありました」

狩野「五輪開幕後の盛り上がりもすごかったですね。ただ、予選ラウンドから簡単な戦いはなくて、五輪の怖さを改めて感じました。最後は本当に惜しくて......(準々決勝イタリア戦は第3セット24-21のマッチポイントから逆転され敗戦)。思い出すと、落ち込みます。悔しくて。清水さんは現地で見ていたんですよね?」

清水「行っていました。イタリア戦の日本は完璧なバレーをしていた。まずディフェンス。特にイタリアの真ん中の攻撃に対して、ブロックでタッチを取ったり、ディグ(スパイクレシーブ)で拾って切り返したり。攻撃では石川選手を中心にしながら、真ん中の攻撃も決まり、日本のやりたいバレーができていました。最後の1点をどう取るかというのは、次のロサンゼルス五輪に向けて課題になってくるところなんじゃないかなと思います」

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狩野「本当に難しいですよね。そこは女子も一緒なんですけど、そればっかりはわからない。見ていた人も、『あと1点、なんで取れなかったんだろう?』と思っているでしょうけど、きっと選手たちも考え続けていると思います。オリンピックで1勝すること、1点を取ることの難しさは、女子の試合を見ていてもすごく感じました」

清水「大阪ブルテオンの(ロラン・)ティリ監督がよく言うんです。試合に勝つために必要なものが100としたら、サーブ、サーブレシーブ、トス、スパイク、ブロック、ブロックカバー、ディグの7項目がそれぞれ14%ずつを占めて、それを合計すると98%になる。じゃあ残りの2%は何かと言えば、「運」だと。例えばチャレンジ(ビデオ判定)や相手のミスなどいろいろありますが、その2%を引き寄せるために日頃から行動しなきゃいけない。日本で言えば『徳を積む』ですかね」

狩野「清水さんは、普段から何かしていますか?」

清水「してますよ。まずは祈り。神様に感謝して、そこからです」

狩野「なるほど(笑)」

清水「でもあのイタリア戦に関しては、相手が点差を離された中でも諦めず、最後にベストプレーを仕掛けてきたというのが大きかったと思います」

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10月開幕の新生・SVリーグ、何が変わる?

狩野「日本代表チームが強くなるためにもやはり国内リーグのレベルを上げることは大事ですよね。今シーズン生まれ変わったSVリーグは楽しみです」

清水「僕たちのチームは今季『パナソニックパンサーズ』という名前から『大阪ブルテオン』に変わりました。他のチームも名称に地域名を入れるなど、変化があります」

狩野「これまでは企業のイメージが強かったですけど、変わり始めていますよね」

清水「外国籍選手枠が1名から2名(アジア選手枠1名の計3名)になって、パリ五輪で活躍したスター選手も大勢日本に集まるので、すごくレベルが上がると思う。日本人選手の移籍も活発になりメンバー構成が大きく変わるので、ふたを開けてみないとわからないという楽しみもあります。例えば、STINGS愛知は外国籍選手だけでなく、日本代表の宮浦健人選手や髙橋健太郎選手、小川選手など大型補強をしていますし、サントリーも絶対的エースのドミトリー・ムセルスキー選手(ウクライナ出身)がいる上に、髙橋藍選手たちが加わるのでさらに手強くなる。すごく魅力的なリーグになると思います」

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狩野「男子の注目選手は?」

清水「うちで言えば西田有志選手ですね。プレーはもちろん、得点を決めた後のパフォーマンスにも注目です。彼は頭で考える前に体が動くので(笑)。熱く感情をむき出しにしたプレーやガッツポーズを見てもらえたら、スカッとするし、引き込まれると思います。女子では誰ですか? いるよね、あの、代表のオポジットの......。」

狩野「和田由紀子選手!(NECレッドロケッツ川崎)」

清水「そうそう! 彼女すごくジャンプするよね」

狩野「それに細身なのにすごく球が強い。『どこからそのパワーが出てくるの?』って不思議なんですけど、『地肩が強いんです』と本人は言っていました」

清水「僕は和田ちゃん推し。パリで初めて見て、『すごいやん! こんな選手いたの?』と驚いた。これから化けそう。ジャンプ力があるからバックアタックも打てるし」

狩野「ライトのバックアタックを打てるのは日本代表にとってもすごく大きかったと思います。五輪ではいいところで出て活躍していました。度胸もありますよね」

清水「ジャンプサーブもいいしね」

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狩野「そうですね。あのジャンプサーブは、会場が『おおー!』となる。そういう一つのプレーで観客を引き付けられる選手は魅力的だし、リーグを盛り上げるためにも大事ですね。きっかけは何でもいいので、皆さんにも推しの選手やチームを見つけてほしいです」

清水「バレーボールは単純に、ボールを落とさなければ勝てるスポーツ。その分、1つのボールにいろんな選手の思いが詰まっているので、選手のひたむきなプレーを見てもらいたい。例えば、日本代表リベロの山本選手は相手にどれだけ強いスパイクを打たれても、逃げず、諦めず、ボールに食らいつく。そのボールをつないで、最後にスパイカーが決める。そうやって思いがつながれるプレーを一つでも多く見て欲しいなと思います」

取材・文/米虫紀子 撮影/浅羽将司