『テルマエ・ロマエ』『翔んで埼玉』の武内英樹監督が浜辺美波出演映画『もしも徳川家康が総理大臣になったら』に施した仕掛け

映画『テルマエ・ロマエ』シリーズ(2012、2014年)や、映画『翔んで埼玉』シリーズ(2019、2023年)、映画『はたらく細胞』(2024年)など、数々の話題作を世に送り出してきた武内英樹監督。シリアスドラマでもコミカルなシーンを絶妙に配して、作品に深みを与える鬼才だ。そんな彼の特長が堪能できる作品が、映画『もしも徳川家康が総理大臣になったら』(2024年)だろう。

同作品は、眞邊明人によるビジネス小説を武内監督が映画化したもの。時は2020年、コロナウィルスが猛威を振るい世界中が大混乱に陥る中、首相官邸でクラスターが発生、あろうことか総理大臣が急死してしまう。そこで政府がAIとホログラムを使って歴史上の偉人たちを復活させ、徳川家康を内閣総理大臣とした最強内閣を組閣するという、奇想天外な物語を描いたもの。

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■現実世界にファンタジーを盛り込んだ新感覚エンターテインメント

現実に起こったパンデミックを舞台背景に、歴史上の偉人たちが閣僚となって、未曾有(みぞう)の危機に陥った日本の舵取りをするというファンタジー要素が加わった内容はもちろん魅力的。加えて、徳川家康役の野村萬斎をはじめ、織田信長役のGACKT、豊臣秀吉役の竹中直人、坂本龍馬役の赤楚衛二といった偉人を演じる面々から、マスコミの人間として偉人たちと関わる西村理沙役の浜辺美波まで、癖の強いキャラクターに息を吹き込む役者陣の名演技も相まって、2時間弱があっという間に過ぎてしまうほど見どころが満載となっている。

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■絶妙に配されたコミカルな演出がエンターテインメント性を担保

そんな中でも、作品に明るい雰囲気を与える武内監督のコミカルな演出がキラリと光っている。例えば、日本党幹事長の御子柴(酒向芳)が徳川綱吉(池田鉄洋)と徳川吉宗(高嶋政宏 ※「高」は正しくは「はしご高」)に、坂本龍馬を「徳川幕府を終わらせた坂本龍馬さんです」と紹介した際の、綱吉と吉宗の「ん...?」という反応だったり、理沙の「『(語尾の)ぜよ』ってなんでしょう?」との質問に対する龍馬の「『ぜよ』は『ぜよ』ぜよ!」という返答がSNSの世界トレンドに入ってしまったり、お昼の大人気トーク番組を思わせる『政子の部屋』なる番組を始めた北条政子(江口のりこ)が饒舌に話していたりと、絶妙に配されたコミカルな演出が、未曾有の危機のさなかという暗くなりがちな世界観を軽妙なものに変えて、エンターテインメント性を担保している。

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■積み上げたエンタメ要素がメッセージ性を際立たせる

危機的状況の中で推し進められる偉人たちの改革、はじめは懐疑的だったものの次第に"偉人内閣"に傾倒していく民衆の心理、さらに"偉人たちの中に反乱分子が混じっている"というミステリー要素も加わり、怒涛の展開で視聴者を引き込んでいく一方、エンタメ性だけではなく作品を通して視聴者に伝えたいメッセージがはっきりと描かれているのも心地よい。そのメッセージの内容はクライマックスに関係するため明言は避けるが、クライマックスまでに紡いできたエンタメ要素がすべて"ネタ振り"となって、メッセージ性を強く際立たせる働きを担っている。

わくわくとドキドキ、時にクスリとさせられながら、見終わった後には強いメッセージが心に残る良作。この仕掛けを施した武内監督の演出にぜひ注目してもらいたい。

文/原田健