ソン・ガンホ×イ・ビョンホンら奇跡の共演!韓国映画『非常宣言』が描く極限のパニックと人間ドラマ【古家正亨】

ソン・ガンホ×イ・ビョンホンら奇跡の共演!韓国映画『非常宣言』が描く極限のパニックと人間ドラマ【古家正亨】

ソン・ガンホ、イ・ビョンホン、チョン・ドヨン、キム・ナムギル、イム・シワン、キム・ソジン、パク・ヘジュン......決して自分の好きな韓国の俳優を並べたわけでも、韓国を代表するトップ俳優の名前を羅列したわけでもありません。誰もが知るような、ここに並べた韓国の名優たち全員が、ある1本の映画で、奇跡の共演を実現しているんです。その作品が今回紹介する映画『非常宣言』です。

■「非常宣言」とは?上空と地上で交錯する極限のサバイバル

タイトルになっている「非常宣言」とは、航空用語で飛行機が危機に直面し、通常の飛行が困難になったときに、他のどの航空機より先に着陸でき、いかなる命令も排除できるため、航空運行における戒厳令の布告に値するものです。この宣言を行うことで、機体は最優先での着陸許可やルートの確保、各国からの救助や医療サポートなどの特別な対応を受けることが可能になります。

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映画の内容は、まさにその宣言の内容そのものです。韓国の仁川国際空港からハワイへ向けて出発した飛行機で、ある男が、一度吸い込むと死に至るウイルスを撒くバイオテロを実行。汚染された空気が機内を循環する仕様の飛行機だったため、乗客が次々と倒れていく中、機長にまでその恐怖が迫ります。

地上では、その男の正体を知った刑事が政府と連携し、各国に緊急着陸ができるよう要請しますが、未知のウイルスを抱えた機体の上陸を、どの国も認めようとしません。飛行機から発せられる「非常宣言」。果たして飛行機は無事に着陸できるのか。そして、ウイルスに感染した乗客の命は......。

■圧倒的な熱量!名優たちが魅せる上空と地上の人間ドラマ

飛行機という限られた空間の中で、ウイルスという見えない恐怖と戦うスタッフと乗客。そして、地上でなんとか飛行機を着陸させるために奔走する人々を同時に描いたこの人間ドラマは、『パッセンジャー57』(1992年)と『ダイハード』(1988年)と『アウトブレイク』(1995年)を足して、3で割ったような作品です。しかも、登場人物それぞれを演じているのが、いずれも単独で主役を張れる俳優ばかり。

航空機パートでは、キム・ナムギルさんが極限状態の中で飛行機をコントロールし続けるヒョンス副操縦士を演じ、娘とハワイへ向かう途中この事件に巻き込まれ、ヒョンスと共に乗客を救おうと奮闘するジェヒョクをイ・ビョンホンさん、そしてバイオテロを企てたリュ・ジンソクをイム・シワンさん、さらにパニックになる機内で乗客の命を守ろうと奮闘するチーフパーサーのヒジンをキム・ソジンさんが、それぞれ演じています。

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地上パートを担うのが、国民的俳優のソン・ガンホさんとチョン・ドヨンさん。ソン・ガンホさんは、家族のために自らの命をかけてウイルスと戦うク・イノ刑事、そんなク・イノ刑事と共に、国土交通省大臣として航空機の着陸のために全力を尽くすキム・スッキをチョン・ドヨンさん、スッキと共に、政府の要人として危機管理のコントロールタワーとして機能するパク・テスをパク・ヘジュンさんという、韓国を代表するトップ俳優たちの火花を散らす共演が実現したのです。

■コロナ禍での過酷な撮影と、映画が内包する社会問題のリアル

それもそのはず、監督・脚本を手掛けたのは長編初監督作品の『恋愛の目的』(2005年)が大絶賛され、続く『優雅な世界』(2007年)で第28回青龍映画賞の最優秀作品賞を受賞するなど、発表する作品すべてが高い評価を得てきた、人物描写に定評のあるハン・ジェリムさんが手掛ける新作であったこと。さらに、日本円で30億円という巨額の製作費をかけたブロックバスター作品であったということ。くわえて、映画の設定がコロナ禍の当時の状況とリンクしていたこともあり、制作陣を含め、使命感をもって撮影にあたった......といった背景が、この奇跡の共演を実現させたわけです。

実際、この映画の撮影はコロナ禍真っただ中の2020年5月末にクランクインし、新型コロナ陽性者の発生やスタッフ間の濃厚接触などのため、撮影を中断しながら10月末頃にクランクアップという、まさにパンデミック下での撮影となりました。

この映画の興味深い点は、航空機内という限られた空間の中で起こるパニックものという表層の中に、パンデミック、差別、国家間問題など、あらゆる要素を盛り込んだ多層ドラマになっている点です。バイオテロを起こすリュ・ジンソク(イム・シワンさんの狂気に満ちた演技は特筆もの)はエリートでありながら、性格に歪みが生じるような家庭環境に関する問題提起がなされています。また、「非常宣言」が出されているにも関わらず、同盟国であるアメリカや日本が、未知のウイルスの侵入を防ぐために航空機の上陸を是が非でも阻止する姿は、コロナ禍の世界情勢を思い起こさせます(とはいえ、日本に関する描写はやりすぎ感は否めませんが......)。

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ファーストクラスとエコノミークラスの乗客間で起こるいざこざも格差社会の縮図のようなものを提起しているように感じますし、表面的には「国家の危機を克服しよう」と謳っても、自分にその危機が訪れる可能性を知った瞬間にその受け入れを拒否する韓国国民を皮肉たっぷりに描いているところは、さすが韓国映画といった感じです。

俳優たちが与えられた役を、十分に咀嚼して演じているのも素晴らしい。まるで、名優たちによる名演のデパートのような作品で、それぞれが自分の表現できる最大限の演技でこの作品を盛り上げているのですが、あまりに凄すぎて、1つの作品としてハーモニーをうまく奏でているかというと、そこは惜しい部分かもしれません。

でも、これだけの俳優を揃え、多額の製作費を投入して作られた映像のスケールは、一見の価値ありです。時代を反映させた描写も含め、この作品がコロナ禍で公開された意義は大きかったのではないでしょうか。

古家正亨

古家正亨 (ラジオDJ/イベントMC)

ラジオDJ、イベントMC。 K-POPなどの「韓流」カルチャーを20年以上にわたり日本に紹介してきた古家正亨が、毎月オススメの韓流コンテンツを紹介。

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