ジェイテクトSTINGS愛知・高橋健太郎が2025-26大同生命SVリーグにかける思い「ミドルブロッカーの中で、ナンバーワンであり続けたい」

ジェイテクトSTINGS愛知・高橋健太郎が2025-26大同生命SVリーグにかける思い「ミドルブロッカーの中で、ナンバーワンであり続けたい」

日本代表のミドルブロッカーとして活躍し、昨シーズンは長年所属した東レアローズ静岡からジェイテクトSTINGS愛知に移籍して新天地でSVリーグ初年度を戦った髙橋健太郎選手。初めて挑んだファイナルで感じたことや、昨シーズンとガラリと変わったメンバーで挑む今シーズンへの思いを聞いた。

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――SVリーグ発足1年目だった昨シーズンは高橋選手にとってどんなシーズンでしたか。

「僕自身、初めて移籍をして、東レアローズ(現・東レアローズ静岡)という慣れ親しんだチームを退団し、新たな環境に移るということでいろいろ大変な面もありました。やっぱりクラブによって風習だったり姿勢だったり、違う部分はあるので慣れることに少し時間がかかった印象はあります。シーズン中は怪我人が多く出て、僕自身も怪我で離れている時期が長く、チームとしてフルメンバーでなかなか練習できなかったので、苦労もしました。でも最後の方はしっかりとプロとして期待に見合ったプレーができていたから、ファイナル進出という形になったと思います。ただ、最後、望んでいる形にならなかったので残念には思います」

――リーグのファイナルに出場するのは高橋選手自身初めてでしたよね。

「そうです。すごく高揚しました。SVリーグ初代王者になるという目標を実行したいとみんな思って、1年間頑張ってきたし、やっぱり特別な場所だと思っていたので。そこで優勝できればよかったんですけど。僕が唯一持っていないものがチームでの優勝、チームでのタイトルなので、そこのラインに乗ったことは嬉しかったですけど、結果的に優勝できなかったので、また新たな課題が生まれた場面でした」

――見えた課題とは。

「僕も(第1戦第5セットの)マッチポイントでタッチネットをしてしまい、取り逃がしたところがあったんですけど、やっぱり普段の練習からもう少し気を引き締めてやらなければいけなかったなという反省点がありました。東レ時代は、スター選手が多いというより、チームで勝っていくスタイルだったので、僕としても自分の役割をしっかり全うしようという意識がありました。でもいい選手がたくさんいたので、なんと言うか、他に決める選手はいるし、それで勝てれば自分が目立たなくても、とどこかで思ってしまっていた。自分にしっかりフォーカスするというのが僕には合っているんですが、それが足りなかったなという反省があります」

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――最後の試合となったファイナル第2戦のあと、関田誠大選手(サントリーサンバーズ大阪)と2人でしばらくコートに座って会話されていましたね。

「『頑張ったね』とか『楽しかったなー』とか『もう少しここで見ていようよ、ゆっくりしようよ』みたいな感じでしたね。関田が(サントリーサンバーズ大阪に)移籍することはもう聞いていたので、1シーズンで同じチームではなくなってしまう寂しさがありました。よく自分のことを理解してくれていたので、昨季は日々の練習が楽しかったし、コート外でもいろんな話ができて、いろんなことを共有できた。藤井(直伸)さんがいた時は、藤井さんがそうやってしゃべってくれていましたけど、楽しいクラブシーズンの日々だったので、その日々を振り返って、『あっという間の1年だったな』というふうに思っていました」

――1シーズンで、またガラリとメンバーが変わりますね。

「そうですね。1年でチームができるとはまったく思っていなくて、少なくとも3年は必要だろうなと思っていたので。組織の土台を作っていくのもそうですし、考え方というか『このチームはこういうバレーボールをするんだ』というレガシーを作っていく上でも2、3年はかかるだろうなと。でもSVリーグになってまだ歴史が浅いですし、移籍が活発に動いているのは、プロリーグを目指す上では仕方のないことですよね。僕としては、まだみんなと一緒にやりたかったという思いはありますけどね。

今季も一緒にできたら、どれだけいいチームになれるかなという期待感があったので。サントリーがずっと1強のような形ですから。大阪ブルテオンも強いですけど、サントリーに(ドミトリー・)ムセルスキー選手が移籍して来てから1強のような形が継続しているので、対抗馬になるようなチームが現れることが重要だと僕は思っていて。そのほうがファンも面白いでしょうし。そういうチームになれればと思って、僕はSTINGS愛知に入団したんですが、1年目でそれが叶わなくて、みんなが散らばってしまったのは悲しいです。でもこれがプロの宿命だと思って、今季は今のメンバーで、どれだけ結果を残していけるかですね」

――今季のSTIGNS愛知はどんなイメージですか。

「若手選手が結構多いので、未知な部分があって、いろんな化け方をすると思っています。その分、僕らリーグを長く経験している選手がどれだけチームをいい方向に引っ張っていけるかが大事。TJ(トリー・デファルコ)もルカ(リカルド・ルカレッリ)も残ってくれているし、新加入のステフ(ステファン・ボワイエ)も場数を踏んでいる選手なので、そういった選手がいい化学変化をもたらしてくれて、そこに若手のエネルギーや体力をプラスできれば、長丁場の44試合を戦い抜いて、最終的にはいい結果を出せるんじゃないかと。若手選手もパッションを持っているとは思うんですけど、まだそれを表現できる選手が少ないので、それがシーズンを戦っていく中でどう変化していくかが鍵かなと思っています」

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――高橋選手は今年代表活動には参加せず、所属チームで過ごしましたが、その判断の理由を聞かせていただけますか。

「僕はプロ選手で、自分の体や将来は、誰も担保してくれませんから、やっぱり自分自身で、リスクを取れる時と取れない時というのは判断しなければいけない。昨季までずっと駆け抜けてきていた分、目立った怪我が多くなっていたので、体のトリートメントと、もう少しフィジカル面でパワーアップしなければいけないと感じて、今年は代表に行かないという選択をしました。その結果、来年代表に呼ばれなくても、自分の決断したことで、自分の人生なので、それはそれでいいなと。でも僕は負けず嫌いだし、どこに行ってもミドルブロッカーというポジションでナンバーワンであり続けたいと思っているので、今季のSVリーグの結果ですべてを見せたいなと思っています」

――チームで過ごした夏場、体のケアやフィジカル強化の面でどんなことをされてきたんですか。

「膝やアキレス腱など、今まで痛めていた部分をしっかりケアしました。トレーニングは、単純に重量を上げられるような強い下半身を作っていくことと、上半身はあまりやらないという選手も多いんですが、僕は上半身も大事だと思っているので、上半身もしっかり重量を上げてボリュームを作り、そこから落としていくということをやっていきます。それにプラス、アジリティのトレーニングも少し取り入れられたので、今季の自分のパフォーマンスには期待しています」

――最後に今季の目標を聞かせてください。

「今季は本当にミドルでナンバーワンになるという思いです。特にブロックの部分で。やっぱり僕の武器というか、アイデンティティーというか、今後もブロックが僕の生きる道なので。『さすが高橋健太郎だな』と示すことができる、わかりやすいところはブロック賞を獲ることなので、そこは目指していこうかなと。でも目指しすぎると僕の場合はフォア・ザ・チームじゃなくなってしまう悪い癖があるので(苦笑)、そこに行きすぎないぐらいのところでやっていこうと思っています。

チームとしては、メンバーの入れ替えもあるので、すぐに形になるとは思っていません。総力戦で頑張っていこうと思っているし、チームの仲の良さ、絆の深まりをしっかり作っていきたい。単年では考えていなくて、それこそ2、3年かけてSTINGS愛知のあり方やストロングポイント、『僕たちはこういうバレーボールで勝っていくんだ』というアイデンティティーを作って、後世につなげられるような、その土台を作る年にしたいなと思っています」

※高橋健太郎の「高」は正しくは「はしご高」

取材・文/米虫紀子

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