田中美央「ゴジラは自分の人生を変えてくれた」山崎貴監督映画『ゴジラ-0.0』でキングギドラに挑む堀田艦長の覚悟
映画 見放題インタビュー
2026.10.28
山崎貴が監督、脚本、VFXを務める映画『ゴジラ-0.0』が、いよいよ11月3日(火・祝)に公開される。2023年にVFXを駆使した圧倒的な映像で、第96回アカデミー賞🄬視覚効果賞を受賞し、世界中を震撼させた前作『ゴジラ-1.0』。その2年後が舞台となる本作は、神木隆之介、浜辺美波ら前作を彩った豪華俳優陣の続投に加えて、新たな絶望に立ち向かう新キャストとして田中泯、長澤まさみらも共演する。9月にニューヨーク映画祭で実施されたワールドプレミアには、世界各国から多くのファンが詰めかけ、上映終了後にはスタンディングオベーションが巻き起こった。前作に引き続き、本作に堀田艦長役で出演する田中美央にインタビューを実施し、熱烈なゴジラファンとしても知られる彼が、本作に懸けた思いとゴジラ愛をたっぷり伺った。

■「絶対に出ます!」 驚きの続編オファーと、悩み抜いた堀田艦長の2年後
――まずは、本作に出演が決まった時の思いをお聞かせください。
「前作の撮影が終わった直後、山崎監督にごあいさつした時に『ぜひ、続編もお願いします!』と勢い込んで言ったのですが、『あ、次はないです』と、あっさり返されたんですよね(笑)。まあ、余韻を残して完結させるという形も、この作品らしいのかなと納得はしていたんですけど......。数カ月たって本作のオファーをいただいたので、まったく理解が追いつかないまま、『絶対に出ます!』と、お返事しました。これは何が何でも受けなければ、という思いでしたね」
――「誰よりも早く快諾してくれた」と、監督が喜ばれたそうですね。それほど思いが強かった本作に、どんな意気込みを持って撮影に臨まれたのでしょうか。
「前作では、最後にゴジラを倒した。その続きなんだろうなと考えた時に、よみがえったゴジラと戦うことになった堀田が、いったいどんな心境なんだろうと、まずはそれを考えました。おそらく、ゴジラを倒したという誇らしい気持ちではなく、本当にこれで終わったのか......という迷いを抱えて生きてきたような気がします。
堀田は海の男だし、大自然の怖さを知っている。一時的に脅威は去ったものの、決して安心はできないということをずっと考えていたように思うんですよ。そんな堀田を演じるなら、どんな表情でファーストカットに臨むべきなのか......。オファーをいただいてから、ずっとそれだけを考えていた気がします。撮影の前日まで悩み抜いて、自分なりに考えた(前作から)2年後の堀田像を監督にぶつけてみようと、初日を迎えましたね」
■共に一緒に戦おう。最前線に立つ市井のリーダーとしての責任

(C) 2026 TOHO
――そこまで懸命に考え抜いて、本当に強い思いを持って撮影に臨まれたのですね。監督も期待を込めてオファーをされたと思いますし、それに応えたいというお気持ちもあったのでしょうね。
「初日の撮影では、何度も何度も撮り直したカットもあって、監督が今まで以上に気合が入っていることが強く伝わってきました。そんな監督の熱意を感じられたので、こちらも責任を果たしたいという思いで演じましたね。最初こそ海のシーンなんですけど、ずっと陸で戦うんですよ。しかも相手がゴジラに加えて、あのキングギドラでしょう。もう、なりふり構ってはいられないわけですよ。
前作では艦長服に身を包み、さっそうと指示を出していた堀田も、今回は最前線に立ち、部下と共に命懸けで強敵に立ち向かう......。前作での演説のシーン同様に、本作でも部下を鼓舞する場面があります。そこで意識したのは、堀田がカリスマ的なリーダーではいけないだろうと。部下に『この人のために死んでもいい』と思わせるのではなく、あくまで市井の人として『皆で一致団結して戦うぞ。俺もお前たちと同じ人間だ。だから力を合わせて共に一緒に戦おう』と。きっと、堀田はそんなタイプのリーダーだと思うんですよ。だから、そう見せるにはどうすればいいのか......。それを意識して演じました」

(C) 2026 TOHO
――人物の掘り下げ方がすごいですね。本作は怪獣映画ながら、人間ドラマを重視した作品だと思いますが、その点も意識されたのでしょうか。
「ゴジラシリーズに限らず、従来の怪獣映画は娯楽作品として楽しませることが求められたと思います。でも前作もそうでしたが、これは本当に娯楽の要素は少ないだろうなと、本作を演じながら感じていました。しかし、そもそも1954年作の『ゴジラ』を思えば、原点であるあの傑作こそ、エンターテインメントとは呼べない重みがありました。俳優さんのお芝居も素晴らしく、ヒロインを演じた河内桃子さんなど、本当に重厚な演技でドラマを支えていました。当時20代であんな芝居ができるなんて、同じ俳優として絶望感すら覚えましたね。当時のキャストの皆さんは、怪獣映画のひな型が何もない時代に、ゼロから人間ドラマをつくり上げていたのです。本当に素晴らしいお手本だと思うので、あの映画はもう数え切れないくらい見ていますよ」

(C) 2026 TOHO
■劇場鑑賞は50回超え! 筋金入りの「ゴジラ愛」の原点
――熱烈なゴジラファンとして名高い田中さんですが、最初に見た作品は......。
「1964年公開の『モスラ対ゴジラ』です。私が見たのは、1980年のリバイバル公開の時ですね。『ドラえもん のび太の恐竜』を見に行って、同時上映されていたのです。もう、鼻血が出そうなほどに興奮して、それ以来ゴジラ映画が大好きになりました。あえて特に好きな一本を選ぶとすれば、『ゴジラ対へドラ』(1971年)でしょうか。公害問題を描いた社会派のストーリーもさることながら、サイケデリックな色彩とか美術がすごいんです。岡本太郎さんの作品を思わせるような特異な造形といい、アート色が強いところが特徴ですね。しかし、まさか怪獣映画にアートの要素を感じるとは......。あのグネ~っとしたオープニング映像が衝撃的で、まさに頭を揺さぶられるようでしたよ。本当にすごかった!」
――田中さんのゴジラ愛の深さはファンの間でも有名です。前回の『ゴジラ-1.0』を劇場で50回見たといううわさがありますが、本当の話ですか?
「いや、50回を超えていますね(笑)。『あの作品のすべてをこの目に焼き付けたい』と思っていたら、おのずとそんな回数になってしまいました。20回を超えたあたりでアカデミー賞を受賞したので、その後はオープニングに受賞のメッセージが入るようになり、それが見たくてさらに拍車がかかったのです。
僕は幼い頃から、アカデミー賞の授賞式の中継を見るのが大好きでした。あんな華やかな舞台があるのかと思って......。自分がこの世界に入って、オスカーを取るような作品に出られたらなという夢を描いてはいましたが、本当に実現したわけですから。しかも視覚効果賞でしょう。私のベストムービーの一つ『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』と同じ賞ということも、個人的に誇らしいポイントでした」

■「人生を変えてくれた」 ゴジラを背負って歩む俳優としてのこれから
――さぞやうれしかったでしょうね。では最後に、大好きなゴジラ2作への出演を通して、今後の田中さんの俳優活動の糧になったものを改めてお聞かせください。
「日本映画を象徴する、ゴジラというキャラクターに俳優として関わることができたことが誇りですし、子どもの頃から大好きだったゴジラ映画に出演できるだけでも光栄なのに、しかもアカデミー賞まで受賞した......。大きな夢がいくつも同時にかなったような映画でもあるし、ゴジラに出たことで、田中美央という名前を覚えてもらえた面もあると思うんです。まさに自分の人生を変えてくれた。それほど大きな映画です。
この『ゴジラ-0.0』が、皆様にどんな評価を受けるのか。今は期待と不安の両方を感じていますが、この2本の大作をこれからも背負って、歩いていこうと思います。ありがたいことに、イベントにもお声がけをいただけるので、『僕でいいのかな』と思いつつも、楽しんで参加させてもらっています。ゴジラ愛に関しては、間違いなく皆さんと共有できるので、堀田艦長同様のスタンスで、同じファンとして、皆様と力を合わせて作品を一緒に盛り上げていこうと思っています(笑)」

PROFILE
1974年7月4日生まれ、兵庫県出身。大阪芸術大学舞台芸術学部卒業後、劇団俳優座研究所を経て劇団俳優座に在籍。2022年2月に退団。舞台のほか映画、ドラマ、声優やナレーターとしてマルチに活動中。出演作に映画「キングダム」シリーズ、映画「ゴジラ-1.0」、ゲーム「Pragmata」など。
取材・文/渡辺敏樹 撮影/番正しおり



