舘ひろしの進化が止まらない!新作映画『免許返納!?』でも見せる愛嬌と『ゴールデンカムイ』土方歳三の存在感
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2026.06.05
スタイリッシュなスーツにサングラス、そして大型バイク――。舘ひろしといえば、誰もが憧れる"カッコいい大人"の代名詞であり、日本芸能界における「ダンディズム」を長年体現してきた存在だ。1950年、愛知県生まれの舘は、1975年にロックバンド「クールス」のボーカルとして「紫のハイウェイ」でレコードデビュー。翌年には映画『暴力教室』で俳優デビューを果たした。その後、「西部警察」での共演をきっかけに深く慕うようになる渡哲也の誘いを受け、石原プロ入りを果たす。
若き日から不良性と色気をまとい、スター俳優として唯一無二の存在感を放ってきた舘。しかし、その魅力は年齢を重ねるごとにさらに深みを増している。新作映画『免許返納!?』では、自らのダンディなイメージを逆手に取った役柄にも挑戦。長年築き上げてきたスター像だけにとどまらず、情けなさや愛嬌(あいきょう)さえも武器に変えながら、今なお進化を続けている。

「まだまだあぶない刑事」
(C)2005「まだまだあぶない刑事」製作委員会
"ダンディでカッコいい男"をイメージづけた『あぶない刑事』
そんな舘の代表作といえば、やはり1986年に放送がスタートした『あぶない刑事』シリーズだろう。舘演じる"タカ"こと鷹山敏樹は、柴田恭兵演じる"ユージ"こと大下勇次とバディを組み、横浜の街を舞台に数々の事件を解決していく刑事。軽妙な掛け合いとスタイリッシュなアクションは社会現象を巻き起こし、シリーズは劇場版も重ねながら国民的人気作品となった。
とりわけ印象的なのは、スーツ姿でバイクを乗りこなし、クールに銃を構えるその姿だろう。舘ひろし="ダンディでカッコいい男"というイメージは、この『あぶない刑事』によって決定づけられたと言っても過言ではない。
一方で『あぶない刑事』での舘は、柴田恭兵をはじめとする芸達者な共演者のアドリブを柔軟に受け止める芝居も光っていた。クールなだけではない、どこかユーモラスな空気感もまた、タカというキャラクターの魅力につながっていたのである。

「免許がない!」
(C)光和インターナショナル/日本テレビ
"愛嬌"と"人間臭さ"を感じられる『免許がない!』『終わった人』
そんな舘にとって、大きな転機となった作品の一つが1994年公開の映画『免許がない!』だ。舘が演じたのは新作映画『免許返納!?』と同じ主人公・南条弘。日本映画界を代表するアクションスターでありながら、"運転免許を持っていない"という秘密を抱える男だ。世間に隠れて自動車学校の免許合宿に参加するものの、くせ者ぞろいの教官たちに振り回され、スターのイメージとはかけ離れた情けない姿を見せていく。
脚本を手掛けた森田芳光は、「いかにもスターだという雰囲気を持っている役者は彼しかいない」と語り、舘に熱烈オファー。舘自身も「俺の芸風が変わっちゃうよ」と苦笑しながら、それまで築き上げてきたパブリックイメージを逆手に取り、全力でコメディに挑んだ。スターのイメージを崩すことを恐れず演じることで、むしろ俳優としての奥行きを広げてみせたのである。

「終わった人」
(C)2018「終わった人」製作委員会
そんな俳優としての奥行きがさらに増した作品が、2018年公開の映画『終わった人』だった。内館牧子のベストセラー小説を原作に、中田秀夫監督が映画化した本作は、定年退職後の人生と向き合う男の悲哀と再生を描いた人間ドラマ。舘が演じた田代壮介は、高度成長期を仕事一筋で駆け抜けてきた元エリートだ。
しかし、同期との競争に敗れ、子会社へ出向。そのまま定年退職を迎えてしまった、どこか情けない男でもある。第二の人生を模索しながら、戸惑い、あがき、それでも前へ進もうとする壮介の姿を、舘はユーモラスかつ繊細に体現。中田監督も「あの舘さんをいかにダサくできるか」と語るほど、不器用さや人間臭さを真正面から演じ切った。その芝居は高く評価され、舘はモントリオール世界映画祭で最優秀男優賞を受賞している。

「連続ドラマW ゴールデンカムイ ―北海道刺青囚人争奪編―」
(C)野田サトル/集英社 (C)2024 WOWOW
"円熟したカリスマ"の存在感を漂わせる『ゴールデンカムイ』
近年の舘ひろしを語る上で欠かせないのが、『ゴールデンカムイ』シリーズで演じた土方歳三だ。かねてより「常々、土方歳三を演じてみたいと思っていた」と語っていた舘にとって、本役はまさに悲願ともいえるキャラクターだった。
劇中では、長く伸びた白髪に鋭い眼光、そして年齢を感じさせない激しい殺陣を披露。若い頃のような派手なスター性とはまた異なる、"円熟したカリスマ"を全身から漂わせている。長年培ってきたダンディズムに、年齢を重ねたからこその渋みとすごみが加わった"今"の舘ひろしだからこそ、土方歳三という人物にも圧倒的な説得力が宿っていた。
舘が師と仰ぐ渡哲也からは、「おまえは笑った方がいい。笑顔がいいから笑え」と言われていたという。完璧なダンディズムだけではない。愛嬌や情けなささえも自らの魅力へと変えながら、舘ひろしは今なお進化を続けている。
文/壬生智裕




