原作とは違う視点。メインは池田エライザと野田洋次郎。静かな涙が込み上げる良作中の良作ドラマ 「プレミアムドラマ 舟を編む ~私、辞書つくります~」【フルーツポンチ・村上健志】
国内ドラマ 連載コラム
2026.04.11
辞書作りに情熱を注ぐ人々を描いた大人気ベストセラー「舟を編む」を、新入り社員・岸辺みどり(池田エライザ)視点でドラマ化。
女性ファッション誌の編集部員・岸辺みどり。雑誌の廃刊が決まり、異動先は辞書編集部。そこにいる人たちは変わり者ばかり。野田洋次郎演じる上司の馬締光也(まじめみつや)は、超がつくほどの真面目で、辞書を作るために生まれてきたかのような人物。最後に辞書を引いたのがいつかも思い出せないみどりは、彼らの辞書への情熱に翻弄されてばかり。しかも、その辞書は既に13年もの時間を費やして未だ完成していない。そんな彼女が、言葉の魅力に気づき辞書作りにのめり込んでいく。辞書「大渡海」を完成させるための辞書編集部員たちの物語。
■唯一無二の「辞書を作る」という物語
ドラマ化、映画化、アニメ化もされている「舟を編む」。辞書作りに情熱を注ぐ人たちの物語。辞書があるのだから、当然辞書を作る人がいるはずなのに、「舟を編む」に出会うまで一度も思いを巡らせることはありませんでした。そして、この作品以外に、辞書を作る人たちの物語を僕は知りません。野球、刑事、銀行員、宇宙戦争の話ですら多く存在するこの世の中で、辞書を作る物語は唯一無二ではないでしょうか。けれど、物語は他にはない設定の物珍しさに終始する訳ではなく、言葉の大切さや言葉を大切にする人たちの情熱、辞書を作る人たちの葛藤や苦悩が瑞々しく描かれています。
際限なく大きくできる訳ではない辞書にどんな言葉を載せるべきなのか。意味はこれで十分なのだろうか。紙の薄さや質感へのこだわり。図解(イラスト)の大きさなどなど。
なんとなく当たり障りない意味を、短くまとめただけと思っていた辞書の世界は、全くの別物でした。日々、変わりゆく言葉の使われ方を採取し、吟味する。恋愛という言葉を調べたみどりが、そこにあった「男女が」という言葉に違和感を覚え、異義を唱える。辞書を手に取った人たちが、言葉の海を渡るための舟としての辞書を、完成させるために静かな情熱を注ぐ面白すぎる物語。

(C)NHK/AX-ON
■偉大すぎる原作のドラマ化
「舟を編む」(2011年出版)。大ベストセラー作品で映画化(2013年)もされ、その映画も賞を取っている作品。そんな偉大な作品がドラマ化されたのは2024年。もう既に完璧なのに、ドラマ化なんてして汚さないでという声もあったかもしれません。有名な作品のバリューを借りるなんて、ドラマ界にアイデアは枯れているのでは、といった厳しい声もあったかもしれません。違いました。
このドラマ化の大きな意義は、主人公の視点が違うことです。小説の主人公は馬締光也(まじめみつや)。営業にいたコミュニケーション能力の低い彼が辞書編集部に入り、その言葉に対する鋭敏さを活かし十数年をかけて辞書を作ります。ドラマでは辞書作りが始まって13年が経った時に、ファッション誌の編集部からやってきた岸辺みどり(原作にも登場)が主人公。彼女の視点で描かれる物語が実に良いのです。そもそも辞書に興味がない彼女の視点で見る辞書作りの発見がとても分かりやすく、物語に軽やかさと成長のはつらつさを与えてくれているのです。
■素晴らしい毎話
毎話、素晴らしい。辞書作りという知らなかった世界にある物語が丁寧に描かれ、毎話ドラマがあるんです。涙します。ただ泣けた、ではなく体の中で感情がせりあがっていく感じ。ホームランや世界を守るような大きなことではないかもしれませんが、辞書を作る人たちの誇り高き情熱が、静かで地味で、その地味さがまたグッとくるのです。大きな滝の落下もまた素晴らしいですが、降り終わりの雨粒が少し震わせる水たまりの波紋のような美しさが、そこにはありました。

(C)NHK/AX-ON
■メインの二人が最高
池田エライザさんと野田洋次郎さんが最高なんです。ユーモアがあって可愛い二人。辞書作りという一見固そうな物語に、ポップさと大きな優しさを与えてくれていました。
ドラマ「舟を編む ~私、辞書つくります~」、ぜひ!!!
【プロフィール】
村上健志(フルーツポンチ)
1980年12月8日生まれ、茨城県牛久市出身。
2004年にNSC東京校10期として入学。在学中に、同期の亘健太郎とともにフルーツポンチを結成。特技の俳句で、MBS「プレバト!!」にて日常の風景を切り取る独自の才能を発揮し、永世名人の称号を獲得。2021年には「フルーツポンチ村上健志の俳句修行」と題し、句会での様子を書籍にして出版している。よしもとドラマ部に所属。ドラマ好きが高じて、多数ドラマ出演経験あり。
よしもと
ドラマ部
(吉本興業所属のお笑い芸人)
吉本興業所属のテレビドラマ好きを公言しているお笑い芸人からなる。 現在は福田恵悟(LLR)・村上健志(フルーツポンチ)・大貫さん(夫婦のじかん)・りょう(小虎)らが所属。
よしもと
ドラマ部
(吉本興業所属のお笑い芸人)
吉本興業所属のテレビドラマ好きを公言しているお笑い芸人からなる。 現在は福田恵悟(LLR)・村上健志(フルーツポンチ)・大貫さん(夫婦のじかん)・りょう(小虎)らが所属。




