時代劇「三屋清左衛門残日録」最新作出演の山谷花純が時代劇の魅力を語る

世の理不尽に泣く人々を見守り、そっと手を差しのべる。思慮深く心優しき主人公・三屋清左衛門(北大路欣也)が、身の回りに起こるさまざまな出来事に向き合う姿を描く、藤沢周平原作の大人気シリーズ「三屋清左衛門残日録」。その最新第9作「永遠(とわ)の絆」では、上川隆也、藤岡弘、、佐野史郎ら豪華俳優陣をゲストに迎え、若い夫婦に起こる悲劇と、町奉行を務める親友(伊東四朗)の旧友の突然の死の真相に迫っていく。

山谷花純は、辛い経験をしながら夫・結城友助(佐藤流司)の支えで懸命に生きる妻・はなえを演じた。大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、「水戸黄門」などに出演した山谷が見つけたシリーズの魅力とは。

――はなえは、幼い息子を亡くし、悲しみに沈んでいたところ、友助から着物を贈られ、それを仕立てながら少しずつ明るさを取り戻していきます。着物はひとつのキーワードですが、今日の衣裳もとてもお似合いですね。

「ありがとうございます。東映京都撮影所の時代劇衣裳のレジェンドと呼ばれる、古賀博隆さんに選んでいただいたんですが、衣裳も役へと導いてくれる、お芝居にいい影響を与えてくれるものだと改めて思います」

――古賀さんは「三屋清左衛門残日録」シリーズをはじめ、「SHOGUN 将軍」「侍タイムスリッパ―」などを手がけたベテランです。京都の時代劇の伝統を守るスタッフが作り上げていく現場でしたね。

「皆さん、本当にお芝居が好きで作品を愛していることがわかります。クランクインしたときは、まだ暑かったですが、皆さんきびきびと動きまわって、私たちにも気を配っていただいて。人に何かを届ける情熱がすごいと思いました。古賀さんも何十年も前にお仕事された俳優さんと今も交流があるとお聞きして、現場が終わったら途切れるわけじゃない絆の強さを感じました」

　　
――墓所で清左衛門は亡き妻に、友助とはなえは息子の小さな墓に手を合わせる。ふとした心の交流が、大きな事件に繋がっていきます。北大路欣也さんとのご共演はいかがでしたか。

「お仕事を始めて70年というお話には驚きました。お茶をお出しするときも、自然に清左衛門としてそこにいらっしゃるので、私もはなえとして自然に演じることができたので、もっとたくさんご一緒したかったです」

――はなえを演じるにあたり、山下智彦監督からのアドバイスなどあれば、教えてください。

「監督はひとつひとつの役に対してものすごく愛を持って、シーンごとに役の心情と、監督が撮りたい画を実際に動きながら説明してくださいました。東京だとそこまで説明していただくことは少ないので、とても贅沢な時間をいただいたと思っています」

――難しかったことはありますか。

「着物を縫うシーンがあるのですが、慣れているように針を動かさなければならないのに、私は手先が不器用で大変でした(笑)。布と道具をお借りして、ホテルに帰ってから何回も針で指刺したりしながら練習しました」

――友助を演じた佐藤流司さんの印象は。

「友助さんは『この人のために笑顔でいたい』と思うようなとてもやさしい人です。佐藤さんは素敵な旦那様でした。佐藤さんと二人のシーンは静かですが、大切に演じました。はなえは友助の殺陣が見られないので残念ですが、私は完成した映像で佐藤さんの殺陣を見るのが楽しみです」

――山谷さんが感じるこのシリーズの魅力、時代劇の面白さはどこにあると思いますか。

「シリーズの前の作品を見たとき、『めっちゃ、おもしろい!!』と思いました。清左衛門さんは、古畑任三郎のように黒幕を探る力もありますよね。愛の形も友情もストレートに届ける。人を思う心は現代と変わりません。若い方にも身近なものと思っていただきたいです。私もまだまだ未熟なところも多いですが、できないことと向き合う時間はこんなに楽しいものなんだと思いました。はなえは切ない役ですけど、みなさんに支えていただいて一生懸命演じましたので、ぜひ、見ていただきたいです」

文／ペリー荻野　撮影／菊竹規