「鬼平犯科帳」シリーズに初出演の早乙女太一へインタビュー「これまでの経験や自分の感情、生き方を込めて集大成になるように演じた」
国内ドラマ TV初インタビュー
2025.06.20
松本幸四郎主演、池波正太郎原作の「鬼平犯科帳」シリーズ最新第6弾「暗剣白梅香」が時代劇専門チャンネルで独占初放送される。本作で"鬼平"シリーズ初出演となる早乙女太一が演じるのは、幸四郎演じる長谷川平蔵を狙う、妖しげな香りをまとった、すご腕の暗殺者・金子半四郎。
今回は松本幸四郎との初共演への思いや本作の役どころ、殺陣の魅せ方について聞いた。
――主演の松本幸四郎さんとは今回初共演とのことですが、いかがでしたか?
「僕が幸四郎さんの殺陣(たて)を見て憧れたのは約20年前のことです。とうとう本作で幸四郎さんとの共演がかない、今まで自分がやってきたことが報われたような気持ちになりました。そのきっかけをくれた幸四郎さんに僕が今まで学んできたことをすべてぶつけました」
――作中でお二人が対峙(たいじ)する場面がありますが、どんなお気持ちでしたか?
「とにかく幸四郎さんに『楽しい』と思ってほしかったです。実際には一瞬でしたが、時代劇の魅力である、少しずつ間合いを詰めていく緊張感と平蔵と半四郎の思考の流れを大事にしながら、『当時あんなに憧れていた人に少しずつ近づいている』という個人的な感情が湧いてきました。正面から見た幸四郎さんの迫力は、カメラには映らない僕だけの特別なアングルでした。幸四郎さんにとってはこちらの思いが重たかったかもしれないですね(笑)。」
――早乙女さんが思う松本幸四郎さんの殺陣の魅力を教えてください。
「かっこよさとかっこ悪さが共存しているところですね。立ち回りの中に芝居として危ない部分も入れていて、それがあるからこそ敵を斬った時の見栄えが引き立って見えるんです。華やかさとのコントラストの出し方が幸四郎さんならではの殺陣だと思います。」
――早乙女さんご自身もさまざまな作品で殺陣をされていますが、映像と舞台で見せ方は違いますか?
「大きく違う点は軌道です。舞台では軌道が見えるようにしています。映像の場合、軌道が見えるとスピードが遅くなって見えるので、そこを意識しています。対峙する人数によっても違っていて、本作のような1対1の殺陣では、役と役との会話が見えるような立ち回りを大事にしています」
――本作で演じた金子半四郎は、早乙女さんから見てどのような人物でしょうか。
「まるで亡霊のようなイメージ。仕掛人として人を殺(あや)めながら、自分の心も殺しているかのような...。人から見ると、何を考えているのかわからないタイプなので、僕としては限られたセリフの中でどこに半四郎の感情があるのかを探りながら演じました」
――役作りは大変でしたか?
「これまでそういった孤独で影のある役を演じることが多かったので、その感覚を思い出しつつ、本作ではこれまでの経験や自分の感情、生き方をすべて込めて、こうした役の集大成になるように意識しました」
――本作では「香り」が物語のカギとなっていますが、早乙女さんご自身の忘れられない香りはありますか?
「楽屋の匂いですね。おしろいと香水、食べ物、タバコなど、いろんな匂いが混ざった大衆演劇の楽屋特有のそれなんですが、嗅いだ瞬間に過去にタイムスリップしますね。香りは、一瞬で自分をどこかに連れていってくれるものだと思います」
――改めて、本作への思いをお聞かせください。
「本作は自分の目標や夢がかなった作品。僕が若い頃に憧れた幸四郎さんの殺陣のように、これから若い世代の俳優の方たちにもかっこいいと思ってもらえる作品になってほしいですし、今まで時代劇にあまり触れてこなかった方たちにも、時代劇の魅力やかっこよさが伝わる作品だと思います。これからの時代劇につながる作品になればいいな、と思います」
――最後に、鬼平ファンへメッセージをお願いします。
「これまでに制作された『暗剣白梅香』とはストーリーが変わっている部分があるので、その部分を含めて楽しんでいただけるとうれしいです。すごく細かいところにちょっとしたこだわりを入れているので、何回でも見てほしいですね」
取材・文/水本晶子 写真/中川容邦 ヘアメイク/奥山信次 スタイリスト/八尾崇文
PROFILE
1991年生まれ、福岡県出身。大衆演劇「劇団朱雀」の二代目として、4歳で初舞台を踏み、全国で公演を行う。2003年に北野武監督の映画『座頭市』に出演したことで、"100年に1人の天才女形"としてその名を広く知られることとなる。2015年の劇団解散以後は、舞台やドラマ、映画出演など活躍の幅を広げている。