北大路欣也が役への思いを語る「この清左衛門をやらせてもらうことで北大路欣也は成長した」

北大路欣也が役への思いを語る「この清左衛門をやらせてもらうことで北大路欣也は成長した」

藤沢周平原作のオリジナル時代劇シリーズ最新第8作「三屋清左衛門残日録 春を待つこころ」の時代劇専門チャンネルでの放送(3月8日)に先駆けて、2月25日、舞台挨拶付き特別上映イベント及び、J:COM加入者限定ファンミーティングが都内劇場で開催された。

同ドラマは、前藩主用人の職を退き、隠居した清左衛門(北大路欣也)の第二の人生を、身の回りに起こるさまざまな出来事と共に描いた時代劇シリーズの第8作で、清左衛門と若者との新たな交流を描く。

ある秋の日、清左衛門(北大路)が訪れた中根道場では、御前試合の前稽古に励む青年剣士・窪井信次郎(藤岡真威人)の剣技に、みな目を奪われていた。しかし御前試合当日、信次郎はライバル・岩上勝之進(大貫勇輔)との決勝戦に臨むも惨敗してしまう。信次郎は遠藤派重鎮の息子、勝之進は朝田派重鎮の息子で、試合の結果は派閥争いにも影を落とす。自暴自棄となり道場に通わなくなった信次郎を、清左衛門は野歩きに誘う。清左衛門と山道を歩く途中で信次郎は、小さな社で祈りを捧げる巫女・照日(大友花恋)に心を奪われる、というストーリー。

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北大路欣也が清左衛門役を一度断っていたことを告白

舞台挨拶付き特別上映イベントでは、北大路、優香、藤岡、大友、伊東四朗、山下智彦監督が登壇。北大路は「最初にお話をいただいたのは60代の後半だったと思うのですが、その時に原作を読ませていただいて、なにかまだ自分が追いつかないような、清左衛門を演じるのに自信がなくて、『ちょっと待ってください。もう少し私に時間を与えてください』ってお答えしたんです。それから数年後、もう一度お話をいただいて。その時に70歳を超えていまして、ある程度の人生経験をしてきたので、『これなら清左衛門に少し追いつけるかな』って気がしてお引き受けして、あっという間に8年間が経ってしまいました」と述懐。

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また、第1作から出演している伊東は「私はこの作品で北大路さん(演じる清左衛門)の家族に憧れているという役なのです。交じりたくて、交じりたくてしょうがない。ですから、私(が演じている佐伯熊太)に女房がいるかどうかは描かれていないんですけれど、私としては女房がいると思って演じているんです」と明かした。

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同じくレギュラー出演している優香は「第1作目の時に、山下監督から『年齢よりも若い感じで』という演出があって、年齢よりも大分キャピキャピした感じで演じていたんです。それが、(シリーズが進むにつれ)里江も私自身も母親になり、ちょっとずつ大人の階段を上るように意識して、『落ち着いていく里江も出せたらいいな』と思いながらやっていました」と裏話を披露。

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一方、今作が初参加となる藤岡は「僕はここまでの諸先輩方とご一緒する本格的な時代劇は初めてだったので、時代劇ならではの所作であったり、着物の扱い方、刀周りの所作、言い回しなど、そういった部分をせりふや芝居に落とし込んでいくのは、すごく苦労しました」と振り返りつつ、「京都で皆さんとご一緒する日々が本当に楽しくて、現場に行くこと自体が楽しみで、わくわくしながら現場に向かっていました」とコメント。

同じく初参加の大友は「一番自分の中で難しかったことが、今の時代と常識のラインが違うことです。男女の力の差とか身分の差とか、そういうものが根底にある時代に彼女(照日)たちは生きていて、それがベースにある中で物語が進んでいくので、そこを勉強して今の時代とすり合わせて、『今の時代だったらどういう感覚なのか』というのを合わせていくのが難しかったですね。でも、そういうのが分かると『だから照日はこうしているのかな』っていうのが分かってきて、それが楽しさに変わっていってすごく勉強になりました」と打ち明けた。

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藤岡真威人&大友花恋が北大路欣也との思い出を明かす

同日に行われたファンミーティングでは、北大路、藤岡、大友が登場。北大路は2人との共演について「この作品では、本当に清々しい、いろんな意味で初心な輝きを持った(信次郎と照日の)2人に清左衛門が出会うわけです。そして、その2人は清左衛門も抱えたことのない、人としての何かを抱えていて、それを受け止めて真っ直ぐに進んでいく。これはドラマの上でもそうなのですが、実際に撮影現場でお会いする(藤岡と大友の)お2人の波動からも、そういうものを実感致しました。だから、毎日がとても新鮮で楽しい、そんな現場を過ごすことができました」と明かした。

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対して、藤岡は北大路について「いち視聴者として、北大路さんの『すごいな!』って思うところが、バシッと決めるところの眼力や存在感のすごさと、お茶とかお菓子とかを食べてみんなと団らんしている時の朗らかな柔らかい空気の、そのメリハリなんです。それが今回、信次郎という役をやったおかげで、直接、生で間近で見られたのがすごい財産でした。『どうしたらこんなにカッコよくエネルギーを出せるんだろう。僕も出せるかな』と思って、鏡の前で頑張ってみたのですが、ただしかめっ面してる顔にしかならなくて...(笑)。撮影が終わって気付いたのですが、それって出そうと思って出しているものではなくて、今まで積み重ねてきた経験と先輩方から教えてもらっていろいろ感じ取ってきたものが、自然と体に染みついて、にじみ出ているものなのだなって」と語った。

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また、大友は「撮影が始まる前の"段取り"の後に『今ので、やりにくくなかった?』って私たちにも聞いてくださって、スタッフさんにも『これで大丈夫かな?』って確認してらっしゃって。そのお言葉から『作品は自分一人では作れなくて、みんなで高めてより良い物にしていくんだな』というのを改めて感じられて、大切にしていきたい学びだなと思いました」と北大路から得た学びを打ち明けた。

そんな中、シリーズ恒例となっている清左衛門と熊太による小料理屋「涌井」でのほのぼのとした食事シーンにまつわる話題も。シリーズの大ファンだという大友が「今回もハタハタとか、クチボソガレイとか、うらやましかったです...」と漏らすと、藤岡も「分かる!僕もあの(シーンの)中に入りたかった」と顔をほころばせた。

すると、北大路は「毎回そのシーンがあるわけですけれども、スタッフの方が料理を作るためにいろんなことを考えてくださって、味付けも大変おいしいです。(清左衛門は)あまり食べるシーンは少ないのだけれど、カットがかかると料理の先生のところに行って、ちょっといただいています」と裏話を披露し、より2人をうらやましがらせた。

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大友花恋の告白に北大路欣也が恐縮

さらに、視聴者から寄せられた質問に3人が答えるコーナーも。「この役を演じることで、一番大事にしていることは何ですか?」との質問では、北大路が「藤沢周平先生の物語の中に『生かされている』という精神があるんですね。原作を読ませてもらうと、見事な老後に向かっている一人の男が描かれている。ちょうど私もそういう年齢に達しましたので、お手本にするというか、清左衛門から学ぶことが多いです。いろんなことがあって受け止めるけど、自分では裁かない。ちゃんと受け止めた思いを相手に伝える、というね。そういうところが見習うべきだなと思って、この清左衛門をやらせてもらうことで、北大路欣也は成長したなと、本当にそう思うんです」と語り、役の持つ精神を大事にしていることを明かした。

北大路の発言に、大友が「でも、清左衛門と北大路さんは、私の中では本当に同じ印象です。撮影でも、撮影以外の場所でも私たちを見守ってくださっているので。清左衛門と北大路さんを比べたら、北大路さんの方がちょっとの差でより好きです」と告白すると、北大路は「どう言ったらいいのか...。うれしい限りですね」と照れながら「それは清左衛門が私を引き上げてくれているからだと思います」と恐縮しきりだった。

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文/原田健 撮影/菊竹規

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