斬新な仕掛けが散りばめられた渡辺謙主演の時代劇に刮目せよ! 「御家人斬九郎」【宮地ケンスケ】

よしもとドラマ部

よしもとドラマ部 (吉本興業所属のお笑い芸人)

吉本興業所属のテレビドラマ好きを公言しているお笑い芸人からなる。 現在は宮地ケンスケ・福田恵悟(LLR)・村上健志(フルーツポンチ)・大貫さん(夫婦のじかん)・りょう(小虎)らが所属。

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斬新な仕掛けが散りばめられた渡辺謙主演の時代劇に刮目せよ! 「御家人斬九郎」【宮地ケンスケ】

<プロフィール>
宮地ケンスケ
1976年5月13日生まれ、高知県高知市出身。1997年オーディションを経て、吉本興業に入社し、お笑いトリオ「ニブンノゴ!」として活動。2024年2月に解散した。現在は放送作家・脚本家・コント作家・ライブ制作・講師など幅広く活動している。

どうも、よしもとドラマ部に在籍している元芸人で今は放送作家をしている宮地ケンスケです。芸人はやめたのですが、吉本興業はやめていないので今回のよしもとドラマ部のリレー連載に参加させていただくことになりました。

今回、私が紹介したいドラマは1995年から2002年までフジテレビで放送されていた「御家人斬九郎」です。主演は世界でも活躍する渡辺謙さん。岸田今日子さん、若村麻由美さん、益岡徹さんなどが脇を固める時代劇です。

私が何故、この令和に時代劇を見ているのか?それには理由があります。私が好きな漫画家さんとお話しする機会がありました。その漫画家さんは大のドラマ好きで、色々話していく中で時代劇について熱く語り出したのです。時代劇は短い尺の中に起承転結をしっかり入れていて、セリフも洒落っ気のあるワードを排除し、端的かつ心に刺さるメッセージに溢れている。アシスタントにも必ず時代劇を見るように言っていると熱弁してくれました。

ほとんど時代劇を見てこなかった私は、それを機に過去の時代劇を漁るように見るようになったのですが、その漫画家さんが言っていた通りどの作品も起承転結がしっかりしたものばかり。今の時代、ドラマはSNSと相性の良いキャストを集めたり、考察要素を無理やり入れたりとSNSとどれだけリンクできるかを優先する中、時代劇はドラマの本質に気付かせてくれます。その中でもこの「御家人斬九郎」は異彩を放つ傑作時代劇でした。

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名門の家柄だが無役で最下級の御家人で、首斬りから用心棒まで数々の裏稼業を請け負う松平残九郎(通称:斬九郎)が、豪快な太刀さばきで悪を討つというストーリー。

第1シーズンが1995年に始まったのですが、私の記憶が確かならば、この時代あたりから時代劇ドラマの潮目が変わり始めたのです。それまで安定不動の時代劇だったが、この後に「トレンディドラマ」というものが誕生し、2000年代に入ると予算の問題、あとドラマDVDが爆売れする時代で若者をターゲットにしたドラマが制作されるようになり、各局が時代劇を畳んでいくことになるのです。そんな激動の始まりの中で産声を上げた「御家人斬九郎」は最終シリーズまで「時代劇に新たな息吹を」という思いが詰まった傑作になっているのです。

「御家人斬九郎」は第1シリーズから他の時代劇とは一線を画しています。それまでは現実的な運びのものが多かったのですが、このドラマは非常に軽妙なのです。言うならば〝明るい眠狂四郎〟。冒頭の残九郎の母・麻佐女(岸田今日子)との掛け合いがまた面白い!お互いを貶しあうのですが、その言葉のチョイスが今のドラマだと結構アウトなものばかり(笑)。90年代はコンプライアンスなど気にすることもなかったろうし、もっと言えば江戸末期なんて絶対ないし(笑)。

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「不適切にもほどがある!」のヒントがこのドラマには隠されていたようにも感じました。コミカルな場面だけかと思いきや、渡辺謙さんのキレのある殺陣やホロりとさせる場面もあったりと、とてもいいバランスなのです。最終章にあたる第5シリーズでは渡辺謙さんが自ら監督を務めています。時代劇に幾つもの革命を起こした傑作をこの機会にぜひ見ていただきたいです!

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