劇場版『暗殺教室』制作陣インタビュー!10周年に新作アニメ公開の理由――上江洲誠×障子直登

劇場版『暗殺教室』制作陣インタビュー!10周年に新作アニメ公開の理由――上江洲誠×障子直登

2015年に放送がスタートしたアニメ「暗殺教室」。松井優征による大人気漫画を原作に、ユーモアと感動が交錯する物語で多くのファンを魅了してきた。2025年に『アニメ「暗殺教室」10周年の時間』プロジェクト(以下:10周年プロジェクト)の大団円として完全新規制作となる『劇場版「暗殺教室」みんなの時間』の公開が決定。翌年2026年3月20日(金)に全国公開された。今回、脚本家・上江洲誠氏とプロデューサー・障子直登氏にインタビューを実施。今なお色あせることのない本作の魅力や、新作に込めた思いについて語ってもらった。

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――「暗殺教室」との出会い、そして当時の第一印象についてお聞かせください。

上江洲「『暗殺教室』の連載が始まった2012年頃は、『週刊少年ジャンプ』を読んでいなかったんですが、あれは天啓だったんでしょうね。『暗殺教室』第1話が掲載された号の表紙を見て、『今週からまた買おう』と思ったんですよ。実際に読んでみたら、これが本当に面白くて。周りのアニメ関係者やプロデューサーにも『次はこれだよ』『これはすごく面白い漫画だからアニメ化しようよ』って話していました。単行本の第1巻が出た時には、知り合いの監督たちに買って配ったくらいで、かなり惚れ込んでいたんです。それが原作との出会いでした。そんなことをしているうちに、アニメ化に向けて不思議と話がまとまっていって。ラルケさん(スタジオ雲雀内のアニメーション制作ブランド)がプレゼンを頑張ってくださり、最終的に自分たちのチームでのアニメ化を担当することになりました」

障子「僕はアニメ放送が始まった2015年4月にフジテレビへ入社しました。大学生の頃に『本当に面白い漫画が始まったな』と思って読んでいた作品だったので、自分が入社するテレビ局でそのアニメが放送されているのは、とても不思議な感覚でした。 だからこそ、今回の10周年プロジェクトで担当として関わることができるのは、すごく縁を感じています」

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上江洲「今回の10周年プロジェクトは、障子さんの方から働きかけたんですか?」

障子「フジテレビとしても大事にしてきたビッグタイトルなので、10周年という節目に何かできないかという話になったんです。その中で『ぜひ自分が担当したいです』と名乗りを上げました。そして、『どうしても新しい映像を作りたい』という思いがあって、TVシリーズを制作されたスタジオ雲雀さんにご相談に行った、という流れですね」

――10周年プロジェクトは、どんな思いから生まれたのでしょうか?

障子「『暗殺教室』は、学生の頃に夢中になって読んでいた漫画であり、僕が入社した年にアニメ放送が始まった作品でもあるので、個人的にも強い縁を感じていました。原作もアニメも完結してから10年近く経っていますが、今でも変わらず大好きでいてくれるファンがたくさんいる作品はそう多くないんですよね。だからこそ、そういう作品に自分も携わりながら、10周年という節目に何か新しいことに挑戦したい――そんな思いから生まれたプロジェクトです」

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――上江洲さんは、「10周年プロジェクト始動」の一報を聞いた際、率直にどのようなお気持ちでしたか?

上江洲「実は、あまり驚かなかったですね。もともと原作自体がとても優れた作品ですし、10年前のスタッフも本当に頑張って、素晴らしいシリーズを作り上げました。だからこそ、『10周年のタイミングで何かしら動きがあるだろう』という心の準備はしていたんです。実際に障子さんが動いてくださって連絡をいただいた時も、特に驚くことなく、そのまま自然に打ち合わせに入った、という感じでした」

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――10周年プロジェクト第1弾のアニメ再放送では、OP・EDの楽曲と映像を一新するというサプライズがありました。この「今、新しく作る」というアイデアはどのように生まれ、どんな点にこだわったのでしょうか?

障子「今回も10年前と同じく、エイベックスさんとご一緒することが決まっていました。そこで、10周年プロジェクトの第1弾として、1年間かけて再放送をするのであれば、作品の入口を少し広げてもいいんじゃないか、と考えたんです。『暗殺教室』は今見ても間違いなく面白い作品なので、音楽をきっかけに新しく入ってくるファンがいてもいいんじゃないか、と。実際、参加してくださったアーティストの方々の中にも『暗殺教室』のファンが多くて。特に再放送版第1期第1クールのOPを担当していただいた友成空さんは、最初の打ち合わせの時から『暗殺教室』が好きとおっしゃっていました。とはいえ、正直に言うと最初はかなり不安もありましたね」

上江洲「オリジナルは、岸誠二監督のプランがしっかり入ったOPとEDでしたからね」

障子「そうなんです。あれだけ作品の内容にぴったり合った映像と楽曲を新しくするというのは、やはりプレッシャーがありました。でも再放送で新OPを解禁した後、皆さんからの反響がすごくよくて。宣伝チームも含めて、みんなでガッツポーズでしたね。新しくして良かったと心から思いました」

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上江洲「あれは本当にファインプレーでしたよ。ただ再放送するだけだったら、ニュースにはなりませんからね。僕は最初から大賛成でした。もちろん、オリジナルのOPやEDが好きで変えないでほしいというファンの気持ちもよく分かります。でも今はサブスクやパッケージで、オリジナルの映像もいつでも見られる時代ですよね。だったら、新しい要素が加わる方が僕はうれしい。実際、新しいアーティストのファンの方の中には、今回初めて『暗殺教室』を見ましたという人も増えていると聞いているので、いい展開だったと思います」

――新作映像でこだわったポイントはありますか?

障子「実は、TVシリーズを手がけた岸監督が今回も携わってくださっているので、そこは安心してお任せしました。岸監督からは『歌詞を全部入れようと思う』というアイデアがあって、僕もすごくいいと思いました。友成空さんの楽曲もそうですし、須田景凪さんが手がけてくださった第1期第2クールのOP『ラストルック』などもそうですが、最近はショート動画などをきっかけに、作品に興味を持ってくれる若い方も多いんですよね。そういう意味でも、テロップで歌詞を入れることで、より入りやすくなるのではないかと。映像に関しては、本当に岸監督が細部までこだわって作ってくださいました」

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――今回の劇場版最新作では、どのようにして描く物語が決まったのでしょうか?

上江洲「最初の会議では、『10周年記念のアニメを作りたいので、まずはアイデアを出してみましょう』というところから始まりました。そこで僕が『考えられるパターンは3つあります』と提案しました。完全オリジナルの新作、これまでの素材をまとめた総集編、そしてTVシリーズで映像化できなかったエピソードを今から作る案...ただ、僕の中では最初から"プランC"、つまり『TVシリーズでやらなかった回の映像化』一択でした。というのも、当時の4クールの中でどうしても入れきれなかったエピソードがあって、それがこの10年間、ずっと心のどこかに引っかかっていたんです。普通なら、後から追加でエピソードを制作する機会なんてまずありません。でも今回は10周年という絶好のタイミングがあった。だから新作アニメを作るなら、ぜひその未映像化エピソードをやらせてほしい、という思いは最初からありました」

障子「でも結果的に、それが一番良かったですよね」

上江洲「僕自身は、完全オリジナルのエピソードを作りたいとは思っていないんです。『暗殺教室』においては僕がオリジナルの物語を考えて発表したところで、あまりいいことはないと思っていて。この作品は原作者である松井優征先生のものですから」

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障子「とはいえ、未映像化エピソードだけでは物語としてつながらない部分もあるかもしれないので、そこをどう補うかは大きなポイントでした。そのあたりは、本当に上江洲さんに頑張っていただいたところですね」

上江洲「最初のアニメシリーズから関わっている人間がやるべき仕事だろうな、とは思いました。今回は当時の監督陣が参加していないので、最初のメンバーで残っているのは僕だけなんですよ。だから、自分の立ち位置はかなり意識しましたね。岸監督たちと作っていた頃のスタッフに対して失礼がないようにしなければいけないし、今回の北村真咲監督を中心とした新しいチームのモチベーションを下げるような企画にもしたくない。その意味では、板挟みのような立場でした」

障子「でも、僕としては上江洲さんが参加できないなら、この企画はやらないくらいの気持ちだったんですよ。上江洲さんが脚本を担当してくださるという前提があったからこそ進められました。その安心感もあって、僕は上江洲さんが上げてくださる台本に対して、毎回たくさんの意見を提案させていただきました(笑)」

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――長年見続けてきたファンだからこそ気づく"ささやかな変化"は、今回どこかに仕込まれているのでしょうか?

上江洲「今回は"変える"というよりも、もともとの良さを守ることを大事にして作っているので変化という面でいうとあまりないかもしれませんね。言うなれば、"老舗の味を守る"ような感覚です。声優さんたちも本当に素晴らしくて、ほとんどテイク1で問題ないくらいでした。もともと芝居の上手い28人を集めている作品なので、そこはさすがだなと。特に殺せんせーは、もう仕上がっていましたね。福山潤さんはこの10年間、ずっとスイッチが入ったままだったんですよ。『いつでも殺せんせー、本番いけます』という状態で(笑)」

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――今回の劇場版で、"これだけは譲れない"と最後まで守り抜いたものは何でしたか?

上江洲「やはり『暗殺教室』という作品の魂ですね。それを守ることが、今回の劇場版アニメ制作の一番の目的でした。だから僕を含め、前シリーズから関わっているスタッフたちは、作品が以前とは違うものになってしまわないように、ずっと守りながら作っていた感覚があります。ある意味、"守るために戦っていた"ような現場でした」

障子「僕は特に、冒頭とラストシーンのオリジナル部分をどう作るかを一番意識していました。昔からのファンにとっても初めて見るシーンになるので、『暗殺教室』を長く愛してくださっている皆さんが違和感を覚えないようにしながら、今回初めて作品に触れる人にもきちんと響く言葉を選ばなければいけない、と思っていました。単に『10周年の記念映画です』というだけではなく、この作品をきっかけに『暗殺教室』をもう一度見返したくなったり、配信で改めて楽しんでもらえるような作品にしたい、という思いで臨んでいました」

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――最後に、昨年12月にマレーシアで開催された「Comic Fiesta」に登壇された際、現地のファンの熱気や愛情を実感されたと思います。時代や国境を越えて、これほど多くの人に愛される作品となった理由をどのように分析されていますか?

上江洲「やはり、シンプルに作品自体が抜群に面白いからだと思います。いわゆる分かりやすいバトルアクション作品ではないので、放送と同時に世界中で大ヒット、というタイプではないですが、時間差でいろいろな国に広がっていった印象があります。実際、世界各国のイベントに呼んでいただくことも多くて、『暗殺教室』に関わることができて良かったな、と改めて感じました」

障子「僕は、一人ひとりの生徒にきちんとスポットが当たる物語になっているところが大きいと思います。多彩な個性を持つキャラクターがいて、それぞれに共感できるポイントがある。だからこそ国や文化の違いに関係なく、誰もが楽しめて、長く愛される作品になったのではないかと思います」

取材・文/中村実香 撮影/永田正雄

【プロフィール】
上江洲誠(うえず・まこと)
脚本家。数々の人気アニメを手がけ、2015年放送の最初のアニメシリーズから「暗殺教室」の制作に関わる。今回の劇場版においては、初期の立ち上げを知るメンバーとして、引き続き脚本を担当。

障子直登(しょうじ・なおと)
フジテレビプロデューサー。「暗殺教室」のアニメ放送が開始された2015年4月に同局へ入社し、2021年よりアニメ制作部に所属。アニメ「暗殺教室」10周年プロジェクトを担当している。

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