萩原利久×古川琴音が語る『花緑青が明ける日に』ベルリン国際映画祭が認めた映像美と声優への初挑戦
アニメ 見放題インタビュー
2026.03.13
新海誠監督や片渕須直監督作品に参加し、CMやPVなどジャンルを超えた創作活動を行ってきた日本画家・四宮義俊。そんな彼が長編アニメーション監督デビューを果たした映画が『花緑青が明ける日に』だ。フランスの気鋭スタジオMiyu Productionsとの日仏共同製作で、第76回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に正式出品された。長編監督デビュー作が同部門に選出されるのは、日本のアニメーションとしては初の快挙である。老舗花火工場「帯刀煙火店」を舞台に、再開発による立ち退き前夜、幻の花火「シュハリ」の完成を目指す若者たちの物語だ。声の出演は、萩原利久と古川琴音がW主演を務める。アニメ声優を務めるのは本作が初めてだという2人に、インタビューを敢行。制作の裏側や作品に込めた思いなどを聞いた。

左から萩原利久、古川琴音
■萩原利久と古川琴音が語る『花緑青が明ける日に』声優初挑戦の舞台裏
──初めて声優に挑戦するということで、どんな意気込みを持って臨まれたのでしょう?
古川琴音「声優の仕事にはずっと興味があったので、『やっときた!』というのが正直な思いでした。でも、いざやることになったら、何をどこからやればいいのかさっぱり分からず......。普段のお芝居と声優の仕事との違いも頭では分かっているけれど、具体的には感じていなくて、収録では本当にたくさんの苦労がありました(笑)。一番大変だったのは、決められた秒数に合わせてセリフをしゃべること。相手との距離感だとか、絵を見て初めて分かることもあり、その場で声の出し方を変えなければいけないことも多かったです」
萩原利久「僕もいつかは声優の仕事をやりたいとは思っていたので、機会をいただけたことがまずうれしかったです。ただ、普段の現場とは勝手が違うだろうし、『自信を持って臨む』という感覚ではありませんでした。初めて映画に出演したときのような緊張感もあったし、分からないことの怖さは強く感じました。ただ、コンテを見たときに絵の強さにも圧倒されたし、脚本も読んで本能的に感じるものがあったから、『きっとすごい作品になるんじゃないか』と感覚的に思いました。ここで描かれている、10代特有の反骨心みたいなものは、大なり小なりみんなが抱えていたような気もするし、共感できるのかなと感じました」

(C)2025 A NEW DAWN Film Partners
■キャラクターへの深い共感と、声のみの芝居で直面した表現の壁
──今回演じたキャラクターについて、どのように捉えましたか?
古川「カオルは理想と現実の狭間で葛藤のあるキャラクターだと思います。幻の花火『シュハリ』を上げたかったけれど、それがさまざまな事情でかなわない。だから自身のエネルギーを発散させる場所を探しているのかなと。捨てきれない夢を追いながらも、なんとなく焦っている......そんな等身大のキャラクターだなと思いました。演じる上では、4年前と現在の対比を意識しました。無垢(むく)に夢を追っていた過去と、それが破れて斜に構えているような現在。その間の気持ちの流れを大事にしようと思いました」
萩原「社会というものを知らず、小さな世界でもがきながら生きていた敬太郎は、自分の理想に向かって突き進める"青さ"を持っていたと思う。だから大人になればなるほど、その理想が遠くなっていったんだろうなと。そんな不安定な時期をどう演じるか、それを試しながら収録に臨んでいた記憶があります」

萩原利久
──収録で苦労したことはありましたか?
古川「自分の声が独特なので、絵にマッチしているのかがずっと不安で、実は観終わった今でも不安が消えません(笑)」
萩原「今回、声だけで芝居をすることで、普段の自分がいかに体のあらゆる部分を使って演じているかをあらためて認識しましたね。声だけで演じると急に不安になるし、自分のタイミングではなく、リップ(※絵の口の動き)に合わせるのも難しく......。経験のなさから対処ができないことに対する違和感が最後まで拭えませんでした。観たときも、自分ではないところから自分の声が聞こえることに慣れなくて、全然話が入ってきませんでした(笑)」

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■ベルリン国際映画祭選出作が映し出す「終わらせ方」と次代への希望
──特に好きな場面やセリフなどがあれば教えてください。
古川「特に印象に残っているのが、『どんなことにだって終わりは来るよ。問題は終わらせ方だよ』というカオルのセリフです。何事にも終わりは来るのだけれど、終わった後にどう前向きに捉えられるかが大事なんですよね。カオルの冷静さが示された一言で、偉いなぁと感じました」
萩原「序盤のほうで、敬太郎が高所から落ちそうになる場面があるんです。すごくカッチリしたトーンで始まりながら、あそこで急にコミカルになるのですが、動きのある場面ということもあって、あの一連は収録でとても楽しかった記憶があります。リップのこととか、さまざまな要素をあまり考えずに演じられた場面でした」

古川琴音
──最後に、この映画を観る方へのメッセージをお願いします。
古川「この映画は、観終わった後に心に残るものが千差万別な作品だと思うんです。色彩美に圧倒される人もいるだろうし、自分の故郷に思いを馳(は)せる人もいるでしょう。敬太郎やカオルの葛藤や夢を追う姿に共感する人もいると思います。自由に観ていただいて、何かを心に残していただければうれしいです」
萩原「観終わったときに自分の中に芽生えた感情が100パーセントの感想なのだと思っています。その人が10代の時期をどう過ごしてきたかで、共感するポイントも変わるはずなんですよね。自分自身の過去と照らし合わせながら観ていただくのも、この映画の一つの楽しみ方だと思います。絵としてはすごく迫力のある場面がたくさんあるので、劇場で観ていただけたらうれしいです」

萩原利久 PROFILE
1999年2月28日生まれ、埼玉県出身。2008年より活動を始める。近年の主な出演作は、ドラマ「美しい彼」(21~23)、「めぐる未来」(24)、「リラの花咲くけものみち」(25)、「初恋DOGs」(25)、映画『劇場版 美しい彼〜eternal〜』(23)、『ミステリと言う勿れ』(23)、『朽ちないサクラ』(24)、『世界征服やめた』(25)、『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』(25)などがある。
古川琴音 PROFILE
1996年10月25日生まれ、神奈川県出身。第71回ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した 映画『偶然と想像』(21)の第一話に主演。近年の主な出演作に映画『みなに幸あれ』(24)、『言えない秘密』(24)、ドラマ「海のはじまり」(24)、舞台「ピーターとアリス」(26)など。主演を務めるNHK夜ドラ「ミッドナイトタクシー」が待機中。
取材・文/渡辺敏樹 撮影/皆藤健治




