声優・小林千晃インタビュー#2「『誰かを大切に思う気持ち』を大事にするお芝居がしたい」

声優・小林千晃インタビュー#2「『誰かを大切に思う気持ち』を大事にするお芝居がしたい」

「マッシュル-MASHLE-」のマッシュ・バーンデッド役、「葬送のフリーレン」のシュタルク役など、数々の話題作・人気作で重要キャラクターを演じる声優・小林千晃さん。クールで透明感のある声と、その奥にすっと通った芯を感じさせる表現力で多くのファンを魅了しています。このインタビューでは全3回にわたって、小林さんの"いま"を形作るルーツと、役者としての静かなる情熱に、出演作品に対する思いとともに迫ります。

■アルバイトで気づいた「人と話す」ことの楽しさ

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――小林さんは、アルバイトなどされていましたか?

「一番長く働いていたのは、スーパーやドラッグストアでのレジ打ちなどの接客業ですね。実家に住んでいた20歳前後のころはスーパーで、その後、大沢事務所の研究生になってから、プロとしてデビューする前の21歳くらいのころには、ドラッグストアで働いていました」

――接客業だったんですね...!

「どちらもシフトの融通をすごく利かせてもらえたので、すごく助かりました。それ以外にも、スケジュールのすきまを縫って日雇いのバイトを入れたり、アルバイトでもいろいろな経験をしていたと思います」

――当時のアルバイトを通じた経験が「いまのキャリアに生きているな」と感じることはありますか?

「『誰かと話す』ということについては、やっぱりいまに生きていると思います。もともと僕は、すごくおしゃべりが好きというタイプではなくて、アルバイトでは『これも経験のうち』と当時からなるべくポジティブに考えるようにしていたんです。そしたら、だんだんとお客さんと話す時間が楽しいと思えるようになったんですよね」

――心持ちを変えたことで、楽しく思えるようになった?

「そうなんです。それが結果的に自分の生き方......というと大げさですが、ラジオでお話しするのも好きだし、いろいろな方と会話するのも楽しいし、いまの活動に繋がっているのかなとは思います」

――接客業を選んだことが、キーポイントだったのかもしれませんね。ちなみに、スーパーやドラッグストア以外の接客だったら、どんなことをやってみたかったですか?

「......やるなら接客業以外、かなぁ(笑)」 

――(笑)。

「いや、さっきの話もウソじゃないですよ!あくまで、『いま戻ってやってみるなら』というだけであって(笑)。接客業は、向き不向きで言えば、自分の中では向いている方だったとは思うんです。でもその仕事をずっと続けて頑張っていらっしゃる方を見ると、『やっぱり全然違うな、すごいな』と尊敬しますし、自分にはそこまで長く続けることはできないな、と当時から感じていたので」

――そうだったんですか。

「でも、どんな仕事をするにしたって、部分的に自分に合うことがあると思うんですよ。僕はたまたま接客業のなかで、『人と話す』という部分が自分に合うことに気づけた。もしかしたら、ほかの仕事をすればまたどこか自分の強みに気づくかもしれない。それなら、『接客業以外で働いてみたいな』とはやっぱり思いますよね」

■汗水垂らす部活のような熱気|「青のミブロ」斎藤はじめ

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――12月からは「青のミブロ 第2期」も始まりましたね。それまでのファンタジーな世界観から一転、こちらは幕末の新選組を描いた、かなりシリアスで「現実」に近い作品です。

「そうですね。フィクションではありますが、新選組という史実をベースにした物語ですから、空気感はガラッと変わります」

――斎藤はじめを演じるうえで、意識したことやご苦労などはありましたか?

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「じつは僕が演じる『斎藤はじめ』は、史実の"斎藤一"その人ではないんです。本来であれば新選組に入るはずだった本物の斎藤一は死んでしまっていて、僕が演じるキャラクターは、じつは他人の子ども。だから僕の役は斎藤一と名前こそ同じですけど、あくまで『借り物』なんです。志半ばで亡くなってしまった先代の名前を継いで、その正当性を示すために戦う役どころ、だからこそ史実での立ち回りとはまたまったく違う、独特な面白さがあると思ってます」

――キャスト陣もすごく豪華ですし、小林さんとご共演の多い方々も集まっている印象ですが、現場の雰囲気はいかがですか?

「『青のミブロ』は、新選組の前身である『壬生浪士組』が物語の舞台なので、基本的に男性しかいない組織なんです。だからアフレコも30人ちょっとのキャスト全員が男性で、なんなら音響監督や指導するスタッフさんも男性。現場は、さながら"女人禁制"という雰囲気が漂っています(笑)。みんなで汗水垂らして部活をやっているような熱気がすごくあるので、どことなく学生時代に戻ったかのような気持ちがあります」

――うわぁぁ...なんかエモいですね(笑)。

「エモい...ですかね?(笑)。でも、楽しいですよ。隊士全員で素振りをするシーンも結構多かったりするんですが、そういうときは『みんなで息を合わせて素振りを10回する』とか(笑)。その瞬間は仕事でやってるというのも忘れるくらい、アフレコという仕事の枠を超えて、すごく団結力が高まる感じがしてすごくおもしろい。ほかの現場にはない楽しさが味わえる現場だなと思います」

――「葬送のフリーレン」のシュタルクのような柔らかい空気感から、幕末の激動を生きた浪士まで。演技の幅広さがすごいですが、ご自身の中で演じ分けや気持ちの切り替えはどうされているんでしょうか?

「それが、演技の切り替えみたいなことは、まったく意識していないんです。台本をいただくのが大体アフレコの1週間ほど前であることが多いんですが、その中で何度も台本と向き合っていると、演じるときにはその役のモードに入れるというか、自然とそうなっちゃうんですよ」

――意識しなくても自然と、入っていける?

「そういう感覚です。それに、一緒に現場で作り上げている共演者の方々の空気感が、そうさせてくれている部分も大きいんだと思います。『この現場だからこうしなきゃ』と自分でいちいちリセットする必要はなくて、台本と向き合って、現場で周りの空気を感じていれば、自然とその役になれる。だから、周りのキャストの方々の存在は、すごくありがたいことだな、とつねづね思っています」

――ナチュラルに役に入っていけるタイプなんですね。

「ナチュラル、というか作品や役に向き合っていると、わざわざ『切り替える』ということを意識しなくても、自然とそうなっていくんだと思います」

■大先輩のお芝居があったからこそのびのびと演じられる|「ハイスクール!奇面組(2026)」大間仁

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――2026年1月から放送されている「ハイスクール!奇面組(2026)」。往年の名作が満を持して復活しましたが、リブートならではの難しさを感じていらっしゃる部分もあるんじゃないでしょうか?

「なにしろ、1985年に放送されていた約40年前の作品ですからね。当時のファンの方々と、現代の新しいファンの方々、その全員に手放しで『おもしろい!』といっていただくのは、正直、すごく難しいことだと思いました。でもだからこそ、監督をはじめスタッフの皆さんがその両方のファンを諦めない気持ちが本当に強くて。すごく練って作品を作ってくださっている印象がありました」

――その制作陣の熱量を肌で感じていた?

「もちろん、脚本の言葉一つとってもそうですよ。現代的なワードもありつつ、一方で40年前を彷彿とさせる言い回しやフレーズも散りばめられていて。『どちらの世代の方にも、できる限り楽しんでほしい』という思いを強く感じたので、僕らキャストも、それに応えたいし、どうにかして老若男女問わず笑ってもらえる作品にしたいな、とつねづね思いながら、収録に臨ませていただきました」

――実際に現場に入ってからは、どんな意識だったんでしょうか?

「リブート作品で、以前のキャストの印象が強かったりすると『やりづらいだろう』と思われる方もいるかもしれないんですが、僕としてはやりづらさは一切感じませんでした。『40年前に出演されていた方が別の役で出る』というリブート作品ならではの演出もありつつ、基本的には監督、スタッフはじめ、メインキャストも新たに臨みましたから。その意味をしっかり意識しつつ、『新しい奇面組を作ろう』という気持ちのほうが大きかったですね」

――小林さんが演じる大間仁は、85年版では龍田直樹さんが演じてらっしゃいましたね。

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「この現場に入るにあたって、85年版の龍田さんのお芝居を何度も聴かせていただきました。もちろん、龍田さんと僕とでは声質も全然違います。でも、その中で実際に自分が演じてみたものと、龍田さんが演じていた仁くんを照らし合わせてみると、だんだんと『答え合わせ』ができていってるような感じがしてきたんですよ」

――答え合わせ、ですか?

「たとえば、『このシーンは、こういうニュアンスで演じていたんだ』とか、『こういう意図を意識して龍田さんは演じていらっしゃるんだな』という発見がすごくあって。そうやって細かく見ていくと、違いはたくさんあるけど、意外と自分との共通点もたくさん見つかったりするんです。そうやって要素を照らし合わせつつ、自分の中で研究していく作業がすごく楽しかったし、その結果、いまはすごくのびのびと楽しく仁くんを演じられるようになりました」

■ギャグの裏にある仲良し5人の絆|「ハイスクール!奇面組(2026)」大間仁

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――リブート作品ならではの、貴重な体験ですよね。

「ほかの役じゃ、こんなことできないですからね。でも、それは僕だけじゃなくて。ほか4名のメインキャストの方々も、本当に『この作品を面白くしよう』という一心で、ものすごい熱量で臨んでいらっしゃるんです。だから僕も、『その熱量に負けないように』という一心で同じ熱量でぶつかっていきたい。そういう相乗効果は、間違いなくあると思います」

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――いいチームですね...!5人の掛け合いの中で、とくに印象に残っているシーンはありますか?

「とくに印象に残っている回でいうと、5人のキャラクターそれぞれにスポットが当たる回があるんですが、仁くんがピックアップされる回。松岡禎丞さん演じる出瀬潔と、僕の演じる大間仁との掛け合いがとくに多いのがこの回なんです。

――小林さんは、松岡さんと普段から仲が良い印象があります。

「そうですか...そう言っていただけるなんて、僕としてはすごく嬉しいですけど(笑)。仁くんって、本当に自由気ままにどこでも寝るし、食べたいときに爆食いするし......という奔放な子なんですけど、そんな彼の世話を、潔くんが甲斐甲斐しく焼いてくれるんですよ」

――潔の、意外な一面が......!

「潔くんって、普段はちょっとコンプラぎりぎりなことをしたり、スケベな一面があったりもするんですけど(笑)。でも、そんな彼が友達の、仁くんのために一生懸命奔走してくれる姿が描かれていて。それに対して仁くんも、のびのびとしつつも潔くんのことを大切に思っている描写があるんです」

――いい関係性ですね。

「そうなんです。『奇面組』って基本はドタバタギャグなんですけど、その節々に、じつはすごく温かいハートフルなエピソードが織り込まれていたりするんですよ。それに、『なんでこの5人はこんなに仲がいいんだろう』という理由が、セリフで説明されるのではなく、ふとしたシーンや行動で描かれているんですよね。その構造がすごくドラマチックで巧みだなと思いました」

――そんな意識で観たことがなかったです...!

「いつもハイテンションなギャグをやっている裏側に、こういう絆があるから息が合うんだな、と。40年前から多くの人に愛され続けている理由が、演じてみてすごく腑に落ちましたね。笑いだけじゃなく、人の心を動かす力がある作品だなと」

――そうして考えると、大間仁にかぎらず小林さんの演じるキャラクターは「ほかの誰かのために」っていう役が多くないですか?

「自分からはあまりわからないですけど、そうですかね。もしそうお感じになるのだとしたら、もしかしたら僕が『すべての物語は人間関係に帰結する』と思ってるからかもしれません」

――人間関係...ですか?

「どれだけ悪役といわれるキャラクターでも、元をただせば、何か人間関係がこじれている部分があったり、逆に大切にしたい人がいたりするじゃないですか。僕は役を演じるとき、そういう『関係性』の部分にフォーカスを当てて演じることが多いので、結果的にそういうお芝居に見えるんだと思います。『誰かを大切に思う気持ち』というのは、僕自身もお芝居をする上で、つねに大事にしている部分ですから」

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取材/山口真央 文/郡司 しう 撮影/梶 礼哉

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