声優・島﨑信長インタビュー #2「キャラクターを、その世界に生きている一人の人間にしたい」

声優・島﨑信長インタビュー #2「キャラクターを、その世界に生きている一人の人間にしたい」

「Free!」の七瀬遙役をはじめ、「呪術廻戦」の真人役、「ダイヤのA」の降谷暁役、「グラップラー刃牙」の範馬刃牙役、「斉木楠雄のΨ難」の海藤瞬役など、数々の話題作で主要キャラを熱演し、声優として第一線で活躍する島﨑信長さん。小さな頃からアニメやゲームが大好きで、"好き"が生む熱量を何よりも大事にしてきた信長さんは、「夢中になれる力があったから自分は声優になれたのかもしれない」と話します。このインタビューでは全3回にわたって、その人となりをひもときながら、声優・島﨑信長の声の表現への向き合い方に迫ります。

■理屈っぽい気分屋で、ルーティンが苦手

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――お忙しくされていると思いますが、休日はどんな過ごし方をしていますか?

「何か予定を立てて、遊んで、出かけて、というよりは、家でゆっくり過ごしていることのほうが多いですね。気になる声優さんの作品を見たり、ゲームをしたり。何か予定を入れるにしても髪を切る、マッサージに行くとか、仕事のためのメンテナンスが多いかな。食べるのは好きなので、外食にはよく行きます。

『しなきゃ』が入ると腰が重たくなるタイプで、とくにプライベートは予定を立てたり、ルーティンを作ったりというのが苦手なんです。縛りに感じてしまうというか。だから、休日も極力ガチガチにスケジュールを決めたくなくて、言ってしまえばダラダラと過ごすほうが好き。多分、自分が『理屈っぽい気分屋』だからなんだと思うんですが」

――「理屈っぽい気分屋」、詳しくお聞きしていいですか?

「いろいろと自分の中では理屈っぽいことを考えてはいるんですが、最終的には直感とか気分で動く気質というか、ロジカルとパッションの両方が強めなんですよね。前回からのインタビューでも自分としては結構理屈っぽいことを言ってる気がするんですが、一方で、小さいときから熱が向いた瞬間には、それにのめり込みやすい。

そういう性格だから、昔からルーティンをつくるのが苦手だったんですよね。だって、例えば徹夜で好きなゲームをやってたら、生活リズムなんて一定じゃないし、習慣化なんてしないじゃないですか(笑)」

――確かに、私も徹夜でゲームしていたのですごくわかります(笑)。例えば、仕事でうまく行かなかったりしたときには、どうやって気持ちの切り替えをしているんですか?

「そもそも、そんなに落ち込んでしまう、ということはないんですが、仕事がうまく行かないと思うときって、大体自分の中に何か引っかかりや課題があると思うんです。でもそれって、『もっと良くしたい』という気持ちがあるからじゃないですか。

同じことを繰り返さないために、次はどうしよう、何が足りなかったんだろうとか、一つ一つに『こう対処しよう』はすごく考えますね。ただ、声優の仕事って一朝一夕でできるようなことでもないので、状況がすぐに変わらなかったりする。それでも、日々自分に足りないものを意識して仕事に望むと、知らず知らずのうちにできるようになっているということが多いような気がします」

■現場に行くのが楽しくてしょうがない

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――同時期に、さまざまなタイプのキャラを演じ分けなければいけないことも多いと思うんですが、そういうときの演じ分けってどうされているんでしょうか?

「声優の中にもいろいろなタイプの方がいるとは思うんですが、例えば、役に入り込んでなかなか戻ってこられない憑依タイプと、すぐに切り替えられる一歩引いた冷静タイプという両極があるとすると、ちょうど中間にいると思います。

自分がいい状態のときって、その現場に"馴染んでいく"感覚なんです。例えば、レコーディングが始まる前後で、立ち居振る舞いや考え方にしぜんと少しその役っぽさが入る。その状態でレコーディングにのぞんで、マイクの前に立った瞬間に一番、ピントが合う。現場でのリズムがうまい具合につくれているので、終わる頃にはまたそれが抜けて、わりとフラットな状態で次の現場に移動できていると思います」

――しぜんと、切り替えができている感覚なんですね。

「もちろん、経験的にそうなった、という部分もあると思います。今でこそ主要なキャラを演じさせていただくことも多いですが、元々は"生徒A・B"みたいに一話の中で何役も演じるなんてザラでしたからね。まして新人の頃は、生徒Aを演じて、Bを演じて、なんならCも......ってやっていたので、そんな現場で『すみません!生徒Aがなかなか抜けなくて......』なんて言えないじゃないですか(笑)」

――確かに(笑)。それを言った瞬間、現場が凍りつくのが簡単にイメージできます。現場で見ていて、「この人の演技すごいな!」と思うこともありますか?

「それはもう毎回、そうです。とくに僕、先輩が大好きで現場で見ていてもめちゃくちゃ面白いし、気になったらすぐ過去の作品もさかのぼって観ます。『いまの自分と同い年のとき、どんな演技していたのか』が気になって、作品を観て分析して、それで自分の演技を見直すことも山ほどあります。

もっと言えば、魅力的なお芝居をする人が好きで、先輩に限らず同輩、後輩に対しても同じなんですよ。いいなと思ったら、その人を追っかけてみて、自分に取り入れられる部分はないかな、ってすぐに探しちゃいますね。そういう意味で、現場には情報があふれているので、自分にとっては宝庫みたいな感じです。面白すぎて」

――例えば、現場ならではの面白さっていうのはどういうところに感じるんですか?

「演技はもちろんですけど、指示に対する受け答え一つとってもすごく面白いんですよ。例えば、監督からリテイクの指示があったときの返事一つでも、『すいません』『申し訳ありません』『失礼しました』『あはは』と色々な返し方がある。リテイクって、より良い作品をつくるためにすることなので、悪いことではないんですよ。だけど、その状況によってどんな回答をするかで、現場の空気感が変わっていくわけじゃないですか。

ほかにも、ミキサーさん側にミスがあって『録れていなかったのでもう一度お願いします』という指示があったとして、『失礼しました』と謝る先輩もいたりする。『厳密には、先輩のせいじゃない』とも思うけど、その一言があるだけでみんながどれだけ気持ちよく仕事ができるのかは変わってくるわけですよね。

そういう場面や状況に合わせた振る舞い、言動一つが、自分にとっては学びや発見なので、現場に行くのが毎回楽しくてしょうがないですね」

■「キャラを人間にしたい」声優として役に向き合うときの思い

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――前回に引き続き信長さんのお話を聞いていて、すごく声優というお仕事に対する熱量というか、"好き"なんだなということが伝わってくるような気がしました。そんな信長さんに、声優として大切にしていることをお聞きしたいです。

「僕は『キャラを人間にしたい』といつも思っているんです。アニメのキャラクターではなく、その世界に生きている生き物にしたい。

語弊を恐れず言えば、小手先のテクニックや声の出し方、あるいは何かしら"型"のようなものはあって、それで演じると『それっぽいもの』はできてしまうんですよ。例えば、鼻にかけるようにすれば艶っぽく粋っぽくなるし、聞かせるような喋り方や盛り上げ、盛り下げの抑揚もある。だけど、その型の組み合わせでよく聞いたことのあるようなキャラを作り上げるのではなく、その現場ごとにちゃんと作品専用の人間を手作りしたい。

その人、その生き物はその世界で何を思い、どう生きているのか。少なくとも自分はそれを表現できるような役への向き合い方をしているつもりですし、今後もそうしたいと思っています」

――そうやって聞くと、今まで信長さんが一人で演じてきた多くの役も、一人として同じ人間はいないし、何かキャラをタイプ分けすることもあまり意味がないように思えてきます。

「そうなんです。だから、よく取材などで『いつも同じタイプの役だと、違う役をやりたくなりませんか?』と聞かれるんですけど、自分の中ではすべて違う生き物なので、飽きるなんてことはないですね。最終的に出てきた音が、すごく似ていたとしても、その音が出てくるまでの過程は一人一人違いますから。

例えば、クールなキャラ。しゃべるのが苦手で結果的にそう見えている人なのか、意図してクールに振る舞っている人なのか、自然体で口数が少ない人なのか、口数は少ないけど奥底では頭がフル回転している人なのか、あるいは本当になにも考えていない人なのか。

クールキャラと一言で言っても、裏には無数の人間性があるわけです」

――そこにシチュエーションやその時の感情も、乗っかってくるわけですもんね。

「そうやって考えていくと、やっぱり"人間"なんですよ。みんな、『自分をシンプルな記号で表して』って言われても、そんなこと難しいじゃないですか。その一言では表せない人間性をどう表現できるかが、そのキャラの実在感に大きく影響する。だから、どんなキャラであっても全員が難しいし、セリフの多い少ないで難易度が変わるようなことではないんです」

――その「キャラの人間にしたい」という自分の信念に、何か気づくようになったきっかけとか出来事ってあるんでしょうか?

「『Free!』1stシーズンで七瀬遙を初めて演じたとき、もちろん自分の中では一生懸命のつもりだったけど、まだそこまで考えが至っていなくて、どこか天然素材的な演技をしてしまっていたんですよね。でも、その時は結果的にそれが良かったんです。

そこから1年ほど経ち、視野が広がって自分でもそれなりに成長したつもりで2ndシーズンにのぞみました。そこで、1stシーズンの遙から滲み出ていた"天然さ"を表現するのが、すごく難しかったんです。ちょっとややこしいんですけど、自分の中では成長したと思って天然さが抜けて、今度は狙って計算した上で"天然さ"をもった声を出さなければいけない。

2ndシーズン冒頭のモノローグナレーションを録ったとき、ディレクターに『信長、遙ってそんなだったか?』って言われてしまって」

――信長さんがどうやってその声を出しているのか、それすらも伝わったんですね。

「言われて『うわっ』って感じた瞬間に、現場で頭がギュルギュルって回り出して。僕の中ではこの1年間で成長して、それこそ聞かせる言い方だったり、盛り上げる、盛り下げるような抑揚だったり、いろいろな"型"を身につけたつもりだったんですが、そうじゃない。1stシーズンでの七瀬遙は、うまく聞かせようとか、盛り上げようとか、そんなことを考えずに自分の中にある言葉をまっすぐに言っていた。少なくとも、上手に聞かせるような作り方はしてこなかったよねって、きっとディレクターの方は言いたかったんだと思いました。

そこで『やばい』と思って、七瀬遙という役に改めて向き合って。そこから声優として、何を大事にしなければいけないのかがだんだんと明確になっていったような気がします」

■「道産子ギャルはなまらめんこい」作品の見どころと、四季翼の魅力

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――今期では「道産子ギャルはなまらめんこい」の四季 翼役を演じられていますが、改めて作品の見どころと、演じた四季 翼の魅力を教えてください。

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「パッと見ると、道産子ギャルに振り回されるドタバタラブコメみたいに見えるんですが、意外と人間性に寄り添った生々しい人間関係というのもあって、シンプルそうで奥深い部分があって。ギャグやお色気を楽しむラブコメと、人間味みたいな要素も含めて、全方位楽しめる作品になっていると思います。

とくに四季くんは、最初は冴えない感じで出てくるんですが、意外とスペックが高かったり、場面ごとに自分の考えをしっかり持っていたり。よくいるラブコメの主人公という感じではなく、わりと細かな心情や割り切れない思いを抱えていたりするので、そういう四季くんの"人間らしい部分"を感じていただけたら嬉しいな、と思います」

取材・文/郡司 しう 撮影/小川 伸晃

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