声優・山下大輝インタビュー #3「自分の中に積み重なった言葉や思いが、折れない心を作る」

声優・山下大輝インタビュー #3「自分の中に積み重なった言葉や思いが、折れない心を作る」

声優としてデビューしたての2013年に「弱虫ペダル」小野田坂道役で主役を演じ、以来、「僕のヒーローアカデミア」緑谷出久役、「あんさんぶるスターズ!!」朔間凛月役、「ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風」ナランチャ・ギルガ役など大人気作品で主要キャラクターを熱演してきた山下大輝さん。取材中、時折感じられたのは言葉のなかにほとばしる情熱と、まっすぐ物事を見る眼差し。過去の経験も、かけられた言葉も、すべてを大事に積み重ねていく山下さんのあり方は、戦いを通じて成長していく少年漫画の主人公のそれのようです。このインタビューでは、全3回にわたって、その人となりをひもときながら、声優・アーティストとしての山下大輝さんの信念に迫ります。

■声優仲間と夜な夜な「フォートナイト」で叫ぶ

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――お休みの日は、どんなふうに過ごされているんですか?

「食べるのが好きで、しょっぱいものも甘いものも好きなので、気になっているお店やふだんは行けないお店に、ちょっと遠出したりしています。今気になっているのは、千葉に早朝5時からオープンしているラーメン屋さんがあるらしく、そこにとてつもなく行きたいです」

――朝5時ラーメン、チャレンジしてみたいですね!そういうときは、お一人で行くんですか?

「一人で食べに行くのが全然苦じゃないので、結構一人で行くことのほうが多いです。とくにラーメンだと黙々と向き合いたいという気持ちもあるし、朝5時のラーメンだと誘いづらいというのも......(笑)」

――確かに(笑)。食べる以外はどんなことを?

「髪を切る、洋服を買う、マッサージに行くなどのメンテナンスはもちろんですけど、気持ちがオフってなったら完全に引きこもることもありますね。ゲームが好きで、今はほぼ毎晩『フォートナイト』をやっています」

――おお、「フォートナイト」!

「一時期、すごくハマった時期があって一度落ち着いたんですが、ここ半年くらいでまた再燃してきて。建築ありのモードだと上手い人に全然勝てないので、『ゼロビルド』っていう建築なしのモードで、毎晩、蒼井翔太とか大体同じ声優メンバーと叫びながら"ビクロイ"を目指してます(笑)」

――喉のことは気にせず?(笑)

「気にしつつ、いつの間にか忘れて......(笑)そしていつの間にか2人で叫んでますね。ゲームの魔力恐ろしいです(笑)。しょーたんってああ見えて好戦的で。誰よりも特攻していくタイプで気づくと激戦が始まっているので、そういう意味でも恐ろしいです......(笑)」

――蒼井翔太さん、意外ですね......でも仲良しで楽しそう。

■どんな声で歌っても自分は自分声優だからできる表現を追い求める

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――前回のインタビューでは、おもに声優としての活動をお聞きしましたが、今回はアーティスト活動を中心にお聞きしたいと思います。まず、アーティスト活動を始められたきっかけは?

「きっかけは、コロナ禍での自粛期間の出来事でした。その時期は、僕らの仕事も1ヶ月くらいパタリとなくなってしまったんです。

そこでSNSを見ていたら、いろいろなエンターテインメントの業界の人たちが、みんなの気持ちが落ちすぎないように『頑張ろう』『乗り越えよう』というメッセージを出していました。アーティストの方々も、音楽をバトンのように繋いでいくような取り組みをしていて、それを見たときに『素敵だな』と思うと同時に、羨ましさも出てきて」

――いろいろな取り組みがあるなかで、音楽がとくに山下さんの心に刺さったんですね。

「やっぱり音楽って、言語は関係なく共通の"言葉"なんですよね。日本だろうが海外だろうが関係なく、僕が小さい頃にジーニーの歌や好きな音楽を見て聴いて感じたのと同じで、楽しさや悲しさ、辛さ、腹立たしさが多くの人に届いていくのを目の当たりにして、『音楽って、多くの人と人が繋がるための、すごく強いツールなんだ』という気持ちになったんです。

そんなときに、ちょうどお声がけをしてくれたのがA-Sketchというレーベルで」

――ちょうどいいタイミングだったんですね。

「そうなんです。だから『これもなにかの運命だろう』『コロナ禍だからこそ、いまチャレンジしたほうがいい』という気持ちで、二つ返事で『ぜひやらせてください』と答えました。

活動を始めたときの、『自分自身に、そしてみんなにエールを送りたい』という思いが出発点になっているので、その思いは今も変わらず、アーティスト活動をする上で大事な自分の信条になっています」

――歌を唄ううえで、何か声優での経験が活きたというようなことはありますか?

「じつは、アーティスト活動を始めたときには『歌とお芝居って、棲み分けしなければいけないよな』というふうに考えていたんです。要は、自分の歌声を新たに発掘して、アーティスト・山下大輝としての歌を唄わなければいけないのかなって。ただ、それで唄い始めてみたものの、どこか縛られてしまってる感じがしてしっくり来なかったんです。

しばらくして『いままで声優として蓄積してきたものが、無駄になるわけないよな』という思いが出てきて。『それまで声優として、色々なキャラソンも唄わせてもらったんだから、あれも生かせるし、これも生かせるじゃん!』と思えるようになってからは、すごく自由に歌えるようになりました」

――声優とアーティストを、明確に切り分ける必要はなかったんですね。

「そうです。どんな声で唄っても自分は自分。『こうしなきゃ、ああしなきゃ』ではなくて、一曲の中にもいろいろなキャラを思わせる声が出てきてもいいし、声で遊べることが自分の強みなんじゃないかと思って、そこからは安定した気持ちで唄えるようになりました。

だから、僕の曲だけどキャラソンのようになってもいいし、むしろ僕は一曲ごとに曲を擬人化して、そのキャラを演じるぐらいの気持ちで、唄っていることがあります。そう考えると、声優もアーティストも、すごく近いところで考えられるようになって、楽しい気持ちで唄えるようになりました」

■「僕のヒーローアカデミア」7期 8年演じ続ける、主人公・デクへの思い

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――さて、5月からは「ヒロアカ」7期が始まります。物語もかなりクライマックスに近くなってきていますが、まずは8年間演じてきたデク(緑谷出久)に対する思いをお聞かせください。

「デクは、過去に人からもらった言葉をすごく大事にしている子だと思うんです。『あのとき、ああ言ってくれたから』『あの時の気持ちがこうだから』というのをずっと大切に持っていて、それを原動力に変えていく力を持っている。

そのスタンスは僕の中でもすごく大事にしていて、それを守り抜く上でデクからものすごくパワーをもらっているんですよ」

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――ここまでのインタビューでも感じていましたが、お父さんからのテニスのスパルタや、お母さんから影響を受けた音楽、日ナレ時代の恩師の言葉、「弱虫ペダル」での先輩方の教え。いろいろな人からもらった想いがいまの山下さんを形作っていると思うと、まさにデクと同じような気がします。

「だとしたら、すごく嬉しいです。そういう積み重ねた言葉、思いが自分の中にあると折れない心が作れる気がするんです。『あの人がこう言ってくれた。だから大丈夫』って。気持ちがリンクしている感覚があって、デクを演じているときの自分は、本当に無敵だと思いますね。僕の中の、力の源になっています」

――単純に必殺技が増えたとか、スキルアップしたとかそういう強さとは、また違った強さがあるような気がします。

「そうですね。そうやって蓄積したことが自分の自信に繋がっていく感覚というのは、デクと一緒に学んでこられたんじゃないかと思います」

――7期のデクを演じるにあたっては、どんなことを大事にしているんですか?

「演じていて一番びっくりするのが、彼の成長速度ですよね。これまでとは違って、一歩先を行く考えができるようになっていると思います。

ショックなことがあると、大体人ってそれに向き合う時間が欲しくて、一度立ち止まるじゃないですか。でもデクは立ち止まらない。そうじゃなくて、今追い込まれたその状況をどうしたら逆転できるかを常に考えている。

この考え方ってなかなかできることじゃないと思いますし、それだけデクが強くなったということの証でもあると思うんです。デクよりもそこに考え至れなかった自分が少し悔しくもある。だから、彼のその成長に離されないように、食らいついていかなければという気持ちでのぞんでます」

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――7期のデクを見るにあたっての楽しみが増えますね!「ヒロアカ」7期について、読者の方に改めてメッセージをお願いします!

「7期では、6期から引き続き敵<ヴィラン>との戦いが繰り広げられていきます。本当に、全力対全力。いつ、どこで、何が起きるのか予測できない戦いなので、いろいろなことを覚悟しながら見てもらいたいです。一話見逃すとわからなくなる可能性が高いので、ぜひ見逃すことのないように追ってもらいたいですね。

これから初めて観るという方には、ぜひ過去シーズンもチェックしていただいて7期のスタートに備えていただければと思います!」

■上も下も関係なく手を差し伸べられる存在でいたい

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――声優としての変化・成長という点では、ご自身でどう捉えられていますか?

「最近は少年キャラばかりでもなく、ミステリアスなキャラや、人間じゃないキャラ、腹に一物を抱えたキャラなど、幅広く演じさせていただくようになりました。今までは全力集中で一点型、まっすぐだった自分が、いろいろなキャラを演じることが増えて、いままでよりも広い目線で見たり考えたりできるようになってきたかなと思います。

あとは、昔は現場でも自信なさげに『かもしれない』『だと思います』みたいな曖昧な発言が多かったんですが、経験を蓄積したことで自信をもって発言できることが増えてきたかなとは思います。『絶対面白い!』『絶対大丈夫!』って。

それは自分の演技だけではなくて、やっぱり多くの人たちが全力で作り上げたものだから。自分以外の人たちのことを100%で信頼できるので、胸を張って作品を『面白い!』って言えることができるようになってきたのかなと感じます」

----山下さんは、作品を「みんなで作り上げている」という感覚が強いんですね。最後に、今後は声優・アーティストとしてどんな存在でありたいですか?

「上も下も関係なく、同じ作品を同じ目線で作っていける人でありたいです。前回のインタビューでも言いましたが、声優もあくまでパズルの最後のピースの1つなので。

例えば後輩の子が緊張していて、自分の個性やポテンシャルが出しづらいときに、その子が魅力を自然と出せるような空気作りであったり、緊張がほどけるような声をかけてあげたり。かつての僕がそうやって先輩方が作ってくれた空気感に助けられてきたので、後輩の子たちが羽を伸ばして生き生きと演技できるように、僕自身が手を差し伸べてあげられる存在でありたいです」

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取材・文/郡司 しう 撮影/小川 伸晃

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