声優・日笠陽子インタビュー#1「『声優になれば、性別や年齢も飛び越えられる』"無限"の広がりを夢見て選んだ声優の道」

声優・日笠陽子インタビュー#1「『声優になれば、性別や年齢も飛び越えられる』"無限"の広がりを夢見て選んだ声優の道」

「けいおん!」の秋山澪役をはじめ、「SHAMAN KING」の麻倉葉役、「戦姫絶唱シンフォギア」のマリア・カデンツァヴナ・イヴ役など、数々の人気作で多彩なキャラクターを演じ、その圧倒的な表現力と、お芝居の幅広さでファンを魅了し続ける声優・日笠陽子さん。クールな役柄から少年役まで幅広くこなす実力派でありながら、持ち前の明るさと飾らない人柄で、現場でもつねにムードメーカーとして愛されています。自身のことを「小6男子」とたとえ、いまでも真っ直ぐな心で仕事を楽しみながら走り続ける日笠さん。全3回にわたるインタビューで、そんな彼女の素顔に迫ります。

■根っこの気持ちはいつまでも「小6男子」

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――この連載でいろいろな声優さんにお話を伺ってきたんですが、現場の雰囲気について聞くと、よく日笠さんのお名前が挙がるんですよ。「日笠さんがムードメーカーとして盛り上げてくれる」って。だから初めてお会いするのに、「ついに今日お会いできた!」という感慨があります。

「あはは!本当ですか、ついに(笑)。よろしくお願いします!」

――本当に撮影のときから「ムードメーカー」という印象そのままという感じだったんですけど、小さい頃はどんな性格のお子さんだったんですか?

「ほんとにこのままです(笑)。とにかく『活発』って感じで、子供の頃は、もうしょっちゅう木登りとか鉄棒とかしてましたね。体育の授業をやったあとでも、みんなに『公園集合!』って号令かけて木登り......『ファイト一発!』ごっこみたいな遊びをやったりして。

中身は、結構"少年"だったと思います。割と男の子っぽくて、もちろん女の子と遊ぶのも好きだったんですけど、根がスポーツ好きなんですよね。もう保育園の頃から側転してましたから」

――保育園児で側転!?運動神経も相当良かったんですね...!じゃあ、わりとリーダー的な存在という感じだったんでしょうか?

「リーダー、というよりも、根っこにある気持ちが『小6男子』っていうか......なんなら今でも私、小6男子だなって思うときがいっぱいあるんですよね...!
川とか滝とかに行くと、いまでも飛び石を、ひょいひょいと渡って行ったりするし。そういうのを、あんまり怖がらない。靴がね、滑るやつ履いてきちゃったときはちょっと躊躇するかな、くらいです(笑)」

――(笑)。そんな「小6男子」な日笠さんが、声優になりたいと思われたきっかけはなんだったんでしょうか?

「きっかけは、『美少女戦士セーラームーン』と『新世紀エヴァンゲリオン』に出演されていた三石琴乃さんを見て、でした。『セーラームーン』の頃はまだ、『声優がいる』ということもわかってなかったですが。でも物心がつくうちに声優という存在がいることを知って、『新世紀エヴァンゲリオン』のときに初めて『ミサトさんと、うさぎちゃんの声優さんと、同じ人じゃん!』と、まったく別の役を一人の声優さんがやっていることに気づいて」

――それがきっかけだったんですね...!声優になる気持ちは、いつ頃、固まったんですか?

「具体的に『なるぞ!』って動き出したのは高校生になってからです。将来を考えなきゃいけない時期なのに、私ほんとに勉強がとっても嫌いで(笑)。

『好きなものしかやりたくない!』というタイプだったので、高校1~2年生の頃には、もう養成所のことを調べ始めてました。他の職業のことは......全然、考えなかったです(笑)。もうひたすらまっすぐ」

――やっぱり憧れの三石さんのような声優になりたい、という思いだったんですか?

「三石さんがきっかけではあったんですけど、『三石さんみたいになりたい』と思ったってなれるわけではないし、それよりもとにかく『声優をやってみたい』という気持ちが大きかったです。声優って、なんていうか......無限じゃないですか」

――というのは?

「それを感じたのは中学生の頃だったんですけど、当時、朴璐美さんをはじめ、少年役を女性がやっていることが多くて、そのときに性別の枠を軽々と超えていく声優という存在に、衝撃を受けたんです...!中学生の頃って、どうしても成長期で心と体を通じて、『自分が女性だ』と気づいていく時期だと思うんですけど、一方で、私の中では『そこに縛られたくない』という気持ちもあって。

女性にも男性にもなれて、さらには大人にも子供にもなれる、そんな声優という存在がすごく......なんだろう、"無限に感じられた"気がしたんです」

――「こうじゃなきゃいけない」という現実から、解き放たれるような。

「私、さっき『小6男子』って言いましたけど、子供の頃って世界をすごく広く感じるし、将来の不安も感じないし、その状態ってある意味、すごく無限な気がするんです。

いまでも根っこが『小6男子』であることも、まだまだ声優という職業を続けていることも、もしかしたらその"無限"な感じを、私自身がまだ味わっていたいからなのかもしれません」

■"物事には両面がある"と知った和菓子屋でのアルバイト

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――日笠さんはアルバイトってされていましたか?

「してました、してました!和菓子屋さんで働いていました。和菓子が好きだったから選んだというのもあるし、たまたま通いやすかったというのもあって」

――和菓子屋さん、渋いですね...!

「私、そもそも働きたくはなかったです(笑)。当時から、まったく働きたくなくて。でも、食べ物は好きだから『好きなものに関われる場所なら、まぁいいか』くらいの感覚で選んだ気がします」

――実際に働いてみてどうでしたか?

「とにかく『働くって大変なんだな』ってことだけは身に沁みてわかりましたね。
当時、お店の方に『君は四角い部屋を丸く掃くタイプだね』って言われまして...。部屋を掃除しても部屋の隅まではほうきをかけないよね、と。それは今でも記憶に残っている一言だなぁ(笑)」

――「四角い部屋を丸く...」たしかに、なぜか印象に残る言葉です(笑)。

「あと、意外と働くことって"肉体労働"なんだなとも思いました。

お客様としてお店に行くだけなら、『いらっしゃいませ』って言って、レジで和菓子を販売しているだけに見える。でも実際に働いてみると、翌日の仕込みをしていたり、すっごく大きな釜にお米を入れて運んだりと、裏側でやらなきゃいけないことも多くて。

そのとき、仕事って『目に見える華やかな部分だけじゃなくて、裏側の仕事がこんなにあるんだ』ということも初めて知りました」

――「目に見える華やかさだけじゃない」というのは、声優にも通じる部分がありそうですね。

「めっちゃあると思いますけど、多分どの職業もきっとそうだと思うんですが。表に見えているものだけじゃなくて、裏には見えていない苦労や作業がきっとあるんだって。

声優業界にしたって、やっぱり一つの『社会』ではあるので、表側で華やかに見えるものとは別に、裏側にはやっぱり厳しさはあります。

とくに、会社を経営しはじめてからは、余計にそう感じるようになった。これまで所属していた事務所が、『こんなことも、あんなことも、裏側でやってくれていたんだ』ということに、いまになって気づけることがあって。

それも含めて、自分で会社をやってよかったなと思いますし、前の事務所に対しても『あんなに支えてくれていたんだ』と、すごく感謝するようになりました」

■"てへぺろ"の生みの親

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――日笠さんといえば「てへぺろ」の考案者としても有名です。あれは、一体どんなふうにして生まれた言葉なんですか?

「それがもう、本当に"ノリ"だったんですよね(笑)。当時のことは全然覚えていないくらい、ラジオ番組でしゃべっている最中にしぜんと出てきた言葉で。そうしたら、番組の構成作家さんが『それ、おもしろいね!』と拾ってくれて、いろんな場面でフィーチャーしていただいて。

さらに、当時AKB48にいらっしゃった渡辺麻友さんに、いろんな場所で使っていただいたのがきっかけで、世間に浸透した大きなきっかけだったんじゃないかなと思います」

――たまたま発した一言が...!

「本当におっしゃる通りで、『たまたま』なんです(笑)」

――それにしても言葉のセンスが素晴らしいですよね。

「いやいや、そうですかね!?(笑)」

――「てへぺろ」に代わる言葉って、ほかにないじゃないですか。「てへぺろ案件」とかいって、僕もよく使わせてもらいます。

「てへぺろ案件...!?そんな使い方もあるんですね!逆に私、プライベートで使ったことは一度もないんですよ(笑)」

――ええ、本人なのに...!?(笑)当時、「女子中高生ケータイ流行語大賞」で金賞にも選ばれてましたし、いまはどんな世代でも使える言葉になっていますよね...!

「たまに、台本を見ているとト書き(動作や情景の指示)に書いてあったりするんですよ。『ここ、てへぺろな感じで』とか」

――たしかに。そういう状況を生みの親としてはどんなふうに眺めているんですか?

「現場で見かけても『え、これ私が考えたやつなんだけどな...』とはなかなか言いづらいんですけど(笑)。でも、『てへぺろ表現』ってかなりアニメーションチックな動きなので、アニメの演出として使いやすいんだと思います。

だから、『私が作りました!』と主張することはなくて、ナチュラルに日常や作品の中に浸透しているんだな、という事実をただ受け入れている感じです。

あの頃は純粋に『楽しい』とか『おもしろいことを言いたい!』という気持ちだけで口から出てきた言葉だったし、私はただの役者でしたから。『楽しければいいだろう』が先行していたんです」

■どんなに辛くても自分次第で世界は変わる|「お気楽領主の楽しい領地防衛~生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に~」パナメラ・カレラ・カイエン

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――2026年1月から放送されている「お気楽領主の楽しい領地防衛~生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に~」(以下、「お気楽領主の楽しい領地防衛」)ではパナメラ役を演じられています。まずはキャスティングや現場の雰囲気について教えていただけますか?

「今回の現場は、主演の内山夕実ちゃんをはじめ、伊瀬茉莉也ちゃんや堀内賢雄さんといった気心知れたキャストばかりで、ものすごく恵まれていました。

だからこそ、『周りに合わせてお芝居のバランスを取ろう』みたいなことを一切考えずにのぞめた。もう、最初から素でお芝居ができた。それが、ものすごく楽しかったですね」

――気を遣わないメンバーだったんですね。演じられたパナメラについては、どんな魅力を感じていますか?

「彼女はすごく強くて、つねに冷静な女性です。主人公にとっても『良き味方』であり、豪快な一面もある。そしてなにより、すごく『人思い』な人だなと思います。

――どんなところに、それを感じたんでしょうか?

「彼女の場合、目に見えてわかりやすい"やさしさ"というのはあまりないんです。自分の中に一本、芯がスッと通っていて、自分から『やってあげるよ!』と押し付けるようなことはしない。相手が求めていないのに手を出すのって、本当のやさしさじゃないこともあるじゃないですか。

パナメラはそこを的確に見極めていて『いま、私の力が必要だな』というタイミングでのみ、スッと手を差し伸べる。自立した姿勢の奥に、そんな"真のやさしさ"が垣間見える人だと思います」

――相手との距離感が絶妙なんですね。まさに「大人」の強さを感じます。

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「そうなんです、すごく大人で、カッコいい女性なんですよ」

――現場でのエピソードもお聞きできますか?

「伊瀬茉莉也ちゃんと仲が良いので、いつも隣に座ってずっとピーチクパーチク話してました(笑)。推しの話から、お芝居や業界の深い話まで。

あと、印象的だったのは座長の内山夕実ちゃん。彼女はすごく責任感が強い子で、収録中に『もっとギャグ寄りに振ってください』といったディレクションを受けたときに、キャラクターの整合性が取れずに少し悩んでしまった時期があったんです。

そのときに、ほかのキャスト陣が『私たちが主役を支えねば...!』と、気持ちが一つになったときがあって」

――周りのキャスト陣で、座長の内山さんを支えた。

「私自身、サブで入っている声優のいちばんの仕事って、『主役が楽しくお芝居に集中できる環境を作ること』だと思うんです。現場に入ったら、少しでもその方法がないかっていうのをずっと考えてる。

だから、そのときも収録が終わった後に『お茶しよう!』って誘って、女性声優5~6人で集まって。『私だったらこうするかな』『こういう解釈もできるよね』とかって、みんなでお芝居の方向性を、いろいろな角度から話し合ったりしました」

――素敵なチームワーク...!めちゃくちゃ温かい現場ですね。

「本当に、めちゃくちゃいい現場でした。前向きに向かっていく空気ができていましたね」

――そんないい現場で生まれた「お気楽領主の楽しい領地防衛」の作品の魅力について、最後に教えてください。

「タイトルには『お気楽』ってついていますけど、実際は領地を守るための戦いがあったり、大変なことも多い。でも、主人公は『みんなが楽しく生きられるように』と考えて、あえて面倒な仕事を引き受けたり、民に仕事を与えたりしている。

人生において『仕事』って大きな要素じゃないですか。領主として、民の人生を良くするために動いている姿にはグッとくるものがあります」

――「領地防衛」という物騒な言葉と、「お気楽」「楽しい」という言葉が同居しているのがおもしろいですよね。

「そうなんですよ。だってぶっちゃけ、攻め込まれてるわけですから、キツいはずじゃないですか。でも、キャラクターたちは、やたらとバーベキューをしてる印象なんです(笑)。

普通なら『辛い』と思う状況でも、『楽しい』と思ってやれば楽しくなる。『これ、ウケるね』って笑い飛ばせば、それはおもしろいことになる。どんな状況でも自分次第で世界は変わるんだ、ということを感じさせてくれる作品だと思います」

■初めての完全なドラゴン役は、"お姉さんな感じで"|「勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録」ニーリィ

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――同じく2026年1月クールの「勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録」(以下、「勇者刑に処す」)ですが、ついに(?)ドラゴン族や竜人ではなく、完全なドラゴンとして、ニーリィ役を演じられますね。

「そうなんです(笑)。『ありふれた職業で世界最強』という作品で、ティオという竜人族のキャラクターとして、ドラゴンに変身したことはありましたが、人型とは違って変身中の声はだいたいSE(効果音)での表現だったんです。

でも、『勇者刑に処す』に関しては、もう完全にドラゴンそのもの。私自身、こういったガッツリとしたドラゴン役というのは初めての経験です」

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――日笠さんにとっても新しい挑戦なんですね。

「すでに原作をご覧になっている方は、『あのシーンはどんなふうに喋るんだろう?』と想像してくださっているかも。加工が入るのか入らないのかも含めて、一体どんな声で『ドラゴン』という存在が表現されているのか。

それと、スタッフさんから『絵がとにかくヤバい』と言われるくらい、映像美が本当に素晴らしくて。すごく良くできているので、私自身も完成した映像を見るのをすごく楽しみにしています」

――ちなみに、ドラゴンの姿からどんな役作りをしたんでしょうか?

「そこが役作りのおもしろいところで。動物ってある意味、オスかメスかわからないような中性的な部分があるじゃないですか。だからオーディションのときは、少し年齢不詳で中性的なイメージでやってみたんですが、スタッフの方からは『もっとお姉さんでお願いします』と言われまして(笑)。

パートナーのジェイスと、ニーリィとの関係性も含めて、あまりほかの作品では見られないキャラクターなので、ぜひそのあたりも注目してみていただけたら嬉しいです!」

■心の動きを空気だけにまとわせる|「アルネの事件簿」エイミー

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――またまた2026年1月クールの「アルネの事件簿」ではエイミーというキャラクターを演じられています。彼女を演じるにあたって、どのようなアプローチや役作りをされたのでしょうか?

「エイミーは、見た目の表情からして、とろんとしているというか、どこか熱量がない感じなんですよね。キャラクターデザインを見たときから、そんな印象を感じていたので、オーディションでもそれを意識して演じていました。

ただ、いざアフレコが進むと、それとはまったく違うお芝居になっていきました。演技がどんどん、『複雑』になっていったんです」

――というのは?

「エイミーは、単に"感情の起伏がない"のではなくて、"内側に感情はあるけど、表には出さない"タイプなんですよ。そのあんばいが難しくて、回を追うごとに繊細なバランスになっていきました。

例えば台本に『楽しい』と書いてあったら、普通は楽しいお芝居をするじゃないですか。でも、人間って不思議なもので、顔は楽しそうに笑っていても、心の中では泣いていることだってある。逆に、『楽しくなさそうな顔だな』と思っても、心の中ではテンションが上がってることもある」

――見た目とは、真逆の感情を抱いていることがある...?

「そう。じつは養成所に通っていた頃、講師の方に『肉体とハートは違うんだ』と教わったことがあったんですが、当時はその意味がよくわかっていなかったんですよね。言葉としては理解できるんですけど、感覚として身についてはいなかった。

最近になって、ようやく、『ああ、こういうことか!』と理解できたんです。そして、きっとお芝居の醍醐味って、こういうところにあるんだと思います」

――もう少し詳しくお聞きしたいです。

「つまり、目に見えるものだけじゃなくて、映らないもの、見えない部分を表現することこそ、お芝居の楽しさなんだなって。

エイミーの場合、『楽しい』とか『あの子が好き』という感情は顔には出ないけれど、彼女からその空気が、滲み出ている。心は確実に動いているんです。

でも、それを声に乗せると感情が乗り過ぎてしまうので、あえて声には乗せない。乗せないけど、微々とした振動や空気感だけでそれをどう表現するか。シンプルに見えて、すごく複雑なアプローチでした」

――あえて「声に乗せない」という選択。ある意味、声優としての究極の表現かもしれませんね...!

「いや、本当に表現の可能性って無限大なんだな、ってあらためて感じました」

――作品全体としてはどのような魅力を感じていますか?

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「元はゲーム原作の作品ですが、アニメはアニメのオリジナリティを活かした表現を突き詰めていて、かなり攻めた作りになっていると思います。もちろん原作があってのことですが、構成や表現の仕方をアニメオリジナルに大胆に変えている部分もあって、アニメとしてまた新しい作品を作り出しているな、っていうくらい。

原作の先生も制作に関わってくださりながら、『もう一つのアルネ』を一緒に作り上げている感覚があって、それは制作に関わる一人としてもすごく楽しみながら参加させていただいています」

■異世界系は、子ども時代の「真っ白な自由帳」

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――いまや、アニメやゲームのジャンルとして広く定着した「異世界系」ですが、本当にたくさんの作品がありますよね。日笠さんは、なぜここまで多くの人が異世界というものにハマり、楽しんでいるのだと思いますか?

「そうですね......端的に言ってしまうと、やっぱりみなさん、いまの現実につらい部分を感じているのかな、わからないけど。

だから、子どもの頃に思い描いていた想像や妄想を、大人たちになってから実際に形にして叶えているのかな、とも思うんです。子どもの頃って、想像力がすごく豊かじゃないですか。『空を飛んでみたいな』とか、『冒険してみたいな』とか。大人になるにつれて忘れかけていたそういう想像を、作品を通して投影しているんじゃないかな。休み時間に、自由帳に描いていた落書きのような感覚というか」

――自由帳...!すごくわかります!

「大人になると、そんな自由帳を持っている人なんて少ないじゃないですか。使うノートといえば、大学ノートのように等間隔の線が引かれていて、『この線の中に均一な文字を書きなさい』と決められているものがほとんどで。

でも本来、私たちの未来や想像っていうのは、線なんて引かれていない真っ白なものだったはずなんです。この世界に、自分の好きなものを描いてよかったはずで。その真っ白な白紙に描くという感覚、『こうだったらいいのに』という空想を、形にしてくれているのが異世界系というジャンルなんじゃないかな、と思います」

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取材・文/郡司 しう 撮影/梶 礼哉 衣装協力/sahara

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