「クレヨンしんちゃん」ひろしの大人ランチに共感!アニメ「野原ひろし 昼メシの流儀」【松井玲奈】
アニメ 見放題連載コラム
2026.01.22
私はとにかく食べ物が出てくる作品に目がない。どのジャンルでも、食べ物を描くシーンには作り手の食への向き合い方が如実に現れて興味深く感じている。そんな私にとって、アクションもの、スポーツもの、SFものなど、さまざまなジャンルがあるように、グルメものがジャンルとして確立されていることは大変幸せなことだ。「グルメ アニメ」と検索すれば、次から次へ面白そうでおいしそうな作品が出てくる。さて、今回紹介する作品はそんなグルメもののど真ん中をいく「野原ひろし 昼メシの流儀」である。

(C)臼井儀人・塚原洋一/「野原ひろし 昼メシの流儀」製作委員会
ひろしの昼メシに向き合う姿が心に響く!
「クレヨンしんちゃん」の公式スピンオフであるこの作品は、普段の「クレヨンしんちゃん」シリーズでは描かれない、サラリーマンとして家族のために働く野原ひろしの束の間の息抜きである昼メシにフォーカスを当てている。限られた予算と、時間の中でこだわり抜くのが「昼メシの流儀」。漫画として注目を集めていたこの作品が、ついにアニメ化されたのだ。大人気アニメの父親キャラであるひろしが、仕事の合間に昼メシに向き合うストーリーは決して派手なものではないが、現代を生きる私たちにも共感できる部分の多い作品だと感じている。作品は各回に2本のストーリーが展開されており、各話完結式。どの回から見ても楽しめるのが魅力だ。

(C)臼井儀人・塚原洋一/「野原ひろし 昼メシの流儀」製作委員会
ひろしが今日のお昼は何を食べようか、どう食べるべきか考える姿は真剣そのもの。「どんなふうにおいしいか」より「どのように食べたらおいしいか」、メニューのチョイス、量、食べ方は適切か、事細かに自問自答しながら向き合う姿は、この作品の大きな個性だと感じられる。食べることに勝ち負けはない。予算内でお得に食べることができたか、予算オーバーをしても満足感のある食事だったかが、ひろしにとっての昼メシの流儀のポイントになっていた。

(C)臼井儀人・塚原洋一/「野原ひろし 昼メシの流儀」製作委員会
昼メシに垣間見る見栄と妥協、当たりとハズレ
「クレヨンしんちゃん」の中でのひろしは穏やかなお調子者として存在しているが、本作の中ではサラリーマンとしての彼の日常が垣間見える部分がとても面白い。部下を気遣い昼メシをごちそうしたり、上司やクライアントの顔色をうかがったりなど、普段は知ることのできないひろしの姿がそこにはあった。部下に対し見栄を張り、ごちそうをする場面が何度か出てくるが、寂しくなるお財布の中身と裏腹に、彼は信頼を得ているのだ。見栄と妥協のバランスがあまりにもリアルに描かれ、世のお父さんたちもこんなふうにランチタイムを過ごしているのかなと、思わず想像してしまう。

(C)臼井儀人・塚原洋一/「野原ひろし 昼メシの流儀」製作委員会
昼メシはいつも大当たりのわけではない。時折ハズレを引いてしまうこともある。それはお店がおいしくなかったのではなく、注文の仕方を間違えてしまったり、値段を見誤ってしまったりするから。ひろしはおいしいものは快活に食べ、失敗した時はその理由を分析しながら食に向き合っている。大盛りのから揚げ定食が出てきた回は、山のように盛られたから揚げを見てこちらが思わず「これは多すぎる」と尻込みしてしまった。それはひろしも同じで、一瞬、彼の頭を食べ切れるかどうかの不安がよぎる。しかしその日は、どんなこともゲーム的に考えれば楽しく乗り越えられるマインドで生活していたひろしは、思考を巡らせさまざまな味変をしながら、どうにかから揚げを食べていく。

(C)臼井儀人・塚原洋一/「野原ひろし 昼メシの流儀」製作委員会
昼メシの流儀がランチタイムを幸せな時間に
失敗してもそこで終わらない。食に真摯(しんし)に向き合う学びと満足感がどの回にもあった。ランチタイムは癒しの時間。家でも会社でも役割がある彼にとって、昼メシは唯一最初から最後まで自分で決めることのできる選択なのである。限られた時間の中で自分のお財布と相談をし、幸せを自ら選び取ることができる時間は、誰の期待も感じなくていい気楽な時間なのかもしれない。
物価が上がっている中で、外食のランチは贅沢だと感じる人がいるかもしれない。しかし、たまには贅沢をしたっていいじゃないか。周りを見渡してみれば、思いがけないところに穴場のランチスポットがあるかもしれない。あなたもぜひ、自分なりの「昼メシの流儀」を見つけてみてはいかがだろうか?




