声優・白井悠介インタビュー#2「ひとつの作品で声優人生が変わった。事務所に入って4年、29歳で訪れた転機」

声優・白井悠介インタビュー#2「ひとつの作品で声優人生が変わった。事務所に入って4年、29歳で訪れた転機」

「美男高校地球防衛部LOVE!」鳴子硫黄や「佐々木と宮野」の佐々木先輩をはじめ、「東京ミュウミュウ にゅ~♡」赤坂圭一郎、「アイドリッシュセブン」二階堂大和、さらには「ヒプノシスマイク」ではシブヤ・ディビジョンのMCグループ「Fling Posse」の飴村乱数役としてラップも披露もするなど、持ち前のイケボを武器に、役に合わせて幅広い演技を見せる白井悠介さん。数々のヒット作に出演する人気声優ながら、そこに至るまでの道のりは、けっして平坦ではありませんでした。このインタビューでは全3回にわたってその道のりと転機をたどりつつ、出演作品に対する思いも交えながら声優・白井悠介の素顔に迫ります。

■「美男高校地球防衛部LOVE!」で人生が変わった

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――前回のインタビューから白井さんの下積み時代についてお聞きしてきましたが、声優として転機になった作品というと?

「僕にとっての転機は、オーディションに初めて受かった『美男高校地球防衛部LOVE!』という作品ですね。
25歳で事務所に入ってから、アニメやゲームのモブキャラの仕事はやらせてもらっていましたが、アニメのオーディションにはやっぱりなかなか通らない。そんな日々が4年間続き、気づけば29歳。30歳目前です。

前回のインタビューで『兄も声優をめざしていた』というお話しをしましたが、兄も事務所には所属したものの、なかなかうまくいかず30歳でその夢を諦めたんです。僕も、基本的には楽観的なタイプなんですが、そんな姿の兄を見てるから『30歳までにはなんとかしなきゃ......』という気持ちもありました。

そんな時期にオーディションでようやく勝ち取ったのが『美男高校地球防衛部LOVE!』だったんです」

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――白井さん的には「この作品がなかったら声優を続けてなかったかも」という作品なんですね。

「そうなります。だからすごくありがたくて。それに初めての作品ながら現場がすごく楽しかったんですよ。メインキャストの5人は、みんな新人に近い声優だったのですぐに打ち解けて。だけど、そんな5人だから最初はアフレコもガチガチに緊張してるんですよね。ギャグが多い作品なのに(笑)。

そんな僕たちに『もっとこうしたほうがいいよ』といろいろなアドバイスしてくれたのがライバルの征服部メンバーを演じていた神谷浩史さん、福山潤さん、寺島拓篤さんの御三方と、ズンダーを演じていた安元洋貴さん。頼れる先輩たちでした。

しかも『美男高校地球防衛部LOVE!』って毎回怪人役として、ゲスト声優さんがいらっしゃるんですけど、その先輩方も本当にやさしくて。回を重ねるごとに僕たちも『こうすればいいのかな』というのがだんだんとわかってくるような感じがしました」

――なんか、いい空気感で収録している現場が眼に浮かぶようですね......!

「そうなんですよ。とはいえ、原作がないアニメオリジナルの作品だったので、オンエアされるまではすごく不安な部分もありました。原作が人気作品だったらある程度は観てもらえるけど、アニメオリジナルって観てもらえる保証がまったくないんですよね。

たとえメインキャストだとしても、話題にならなかったり、反響が少なかったりすれば、次の仕事につながっていくとは限らない。せっかく初めての大きな仕事も、これっきりでまた悶々とする日々に戻ったらどうしようって。

でも、ふたを開けてみれば多くの方に観ていただき、話題にのぼる作品になってすごく安心したのを覚えています」

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――その後、アニメシリーズの続編とOVAをはじめ、いろいろなメディアミックスで展開しましたよね。来年には誕生10周年ということで、新たな劇場版も公開されますし!

「声優として転機になった作品がこれだけ長く愛される作品になったというのは、やっぱり嬉しいですよね。みんながみんなそういう経験ができるわけではないですし、思い入れは強くなります。

この作品に出てから声優・白井悠介という存在もだんだんと知っていただけるようにもなりました。指名でゲームのお仕事をいただいたり、ほかのオーディションでもちょこちょこ目に留まるようになったり。それまで経験しなかったことが『美男高校地球防衛部LOVE!』を機にどんどん増えてきて、本当にこの作品で『人生変わったなぁ』と思います」

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劇場版「美男高校地球防衛部ETERNAL LOVE!」2025年冬公開!

オリジナルアニメ「美男高校地球防衛部LOVE!」が2025年に放送10周年を迎える。10周年を記念して、これまでのシリーズのその後を描く劇場版「美男高校地球防衛部 ETERNAL LOVE!」がオール新作カットで公開決定。防衛部5人(箱根有基、由布院 煙、鬼怒川熱史、鳴子硫黄、蔵王 立)がバトルラヴァーズにラブメイキング(変身)して新たに戦う今回の敵とは...?

■仕事以外は、子供とリヴァプール

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――休日は、どんな過ごし方をされているんですか?

「土日とか、子供が保育園お休みだと。とにかく家族でおでかけですね。連休なら旅行に行くし、うちの子は魚が大好きなので水族館にもよく行くし。夏ならグランピングとかプールとかね。

僕一人だとインドアでずっと家で寝ちゃうんですけど、家族だとアクティブに結構動き回ってます。それはやっぱり、自分も小さい時に親にキャンプやアウトドアにたくさん連れて行ってもらった経験が大きいのかもしれないですね」

――それと白井さんといえば"熱狂的なリヴァプールFCファン"と公言してますよね。結構、生活を占める「サッカー」の割合は大きいんですが?

「もちろん『サッカー』という大きなくくりも、好きは好きなんですけど、ぶっちゃけ日本の代表戦とかは全然観ないんですね。ワールドカップはリヴァプールの選手が出てる国を応援しちゃいます。あくまで好きなのはサッカーよりも、"リヴァプールFC"という感じです」

――そんなに好きなんですね!

「どのチームだって熱いファンはいると思いますが、そのなかでもとくにリヴァプールのサポーターって本当に熱狂的なんですよ。

なぜって、選手たちの気持ちが前面に出ているから。プレーの内容、試合中のジェスチャー、掛け声から選手たちの熱気が伝わってきて、ファンもその興奮に包まれるんですね」

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――リヴァプールFCが好きになったきっかけは?

「もともとわりと好きなチームではあったんですが、がっつりファンになったのは、チャンピオンズリーグ2004-05シーズンの決勝、リヴァプールファンは『イスタンブールの奇跡』とも呼んでいるあの一戦を観て、ですね。

対戦相手はイタリアの名門クラブ、ACミラン。前半はACミランの圧倒的な攻撃で3点取られてしまっていた。圧倒的に不利な状況で迎えた後半、ジェラードのヘディングから1点を返すと、そこから一気にリヴァプールが勢いづいて、3点返して同点まで追いついた。その後、延長戦でも決着がつかずに、PKをリヴァプールが制して、逆転優勝。

その劇的な展開とすさまじいプレ-を、当時一人暮らしだった部屋で、リアルタイムで観ていて、もうガシッと心を掴まれてしまいました。多分、観終わったのは朝7時ごろだったと思うんですが、一人で興奮して、叫んで、泣いて......」

――めちゃくちゃ熱いですね......!

「そうなんですよ。その試合もそうですけど、リヴァプールってそういう劇的で胸アツな展開が多くて、全然目が離せないんですよね。今は配信サービスも増えて、試合がどんどん観られる環境になってきたので、もう毎試合リアルタイムで観戦しています」

――そこまで...!あなたにとって、リヴァプールFCとは?

「生きがいそのものですね」

■「アイドリッシュセブン」二階堂大和への思い

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――ゲーム、ライブ、アニメと数々のメディアで大ヒットとなっている「アイドリッシュセブン」では、IDOLiSH7の二階堂大和役を演じられています。白井さんから見た、二階堂大和はどんな人物ですか?

「彼は、物語が進むにつれて頼れるリーダー的な存在になっていきますが、元々は『復讐のためにアイドルになった』と複雑な思いを抱えて芸能界に入っているんですよ。『飄々とした面倒くさがり屋のお兄さん』という人物像の奥には、実は強い思いがあって、メンバーに対する思いも熱い。

そういう彼だからこそ、物語の中で成長した部分ってすごく大きかったし、彼の成長がメンバー同士の絆、結束力に与えた部分というのもあると思います。

第3部で自分の過去を曝け出してふっきれてからは、飄々とした態度こそ変わりませんが、リーダーとしての責任感や自覚が彼の中でより大きくなっていくのが目に見えてわかって、グループやメンバーを成長させようと引っ張っていく姿がすごく魅力的だったと思います」

――どんな思いで、二階堂大和を演じていたのでしょうか?

「自分のことを『面倒くさがり屋』だと言うくせに、メンバーの変化にいち早く気づいて気遣ったり、メンバーのためなら泥をかぶることもいとわなかったり。最初の頃はグループの最年長リーダーとして"頼れるお兄さん感"を前面に出すように意識していたんですが、途中からは彼の心の中にある情熱を感じてもらえるよう心がけていました。

あとはストーリーが進む中で、彼に起こる変化は、やっぱりどうしても意識しますよね。

本来持っていた芸能界に対する嫌悪感に近い感情も、メンバーやほかのグループとの時間を重ねる中で変化していって、だんだんと大和自身の"アイドル"に対する目線が変わっていくんですよね。そしてグループのために自分の過去と向き合い、メンバーにも過去を打ち明ける。

そうした彼自身に起こる変化があって、単なる"頼もしいリーダー"を超えて『唯一無二のIDOLiSH7のリーダー』へとなっていく。マネージャーさんたちにもそんなふうに感じてもらえたら、僕自身が大和の変化をうまく演じられていたのかなって思います」

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――ライブでは、大勢の観客の前で歌唱やパフォーマンスをされています。その緊張感たるや、相当なものだと思いますが......

「それが、意外と僕ライブは緊張しないんですよ。もう観客が多すぎて、逆に人前に立っている感覚ではなくなってしまうんです。もっと人数が少なくて、目と目が合って表情までわかってしまう距離感だと緊張するのかもしれないんですが。

大和としてライブをするときは、僕自身もライブを楽しむというか、ステージに立つとわりと自然にスイッチが入るタイプなので、ふだんの声優・白井悠介だったら絶対にしないようなことでも、けっこうできてしまうタイプなんですよね」

――それは意識的に、っていう感じとは違うんですか?

「そう、やろうと思ってやる、って感じじゃないですね。それよりもステージに立っていると自然にそういうパフォーマンスが出てくる、というか。

ただ、唯一緊張するとしたらライブ中のMCかなぁ。歌唱やパフォーマンスよりも、挨拶や締めくくりの言葉、感想を求められたときは結構緊張します。

大和自身がリーダーという存在だから、やっぱりどこかで『リーダーらしい言葉で締めなきゃ!』とか考えちゃうんですよ。しかも、考えれば考えるほどMCのときの緊張が大きくなる。

そんな時に『リーダーとしての緊張感も大和自身がリーダーとして抱えてるものに近いのかな』と思うと、やってやろうという気持ちになる。本当、僕ら声優のほうがアイナナのメンバーから力をもらってパフォーマンスをしてるんだなと思います」

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取材・文/郡司 しう 撮影/小川 伸晃

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