声優・本渡楓インタビュー番外編

声優・本渡楓インタビュー番外編

幅広いキャラクターを的確に演じ分ける力と、繊細な感性で直向きにキャラクターに向き合う姿勢を武器に、「魔女の旅々」イレイナ役、「夜桜さんちの大作戦」夜桜六美役、「ゾンビランドサガ」源さくら役、「パリピ孔明」月見英子役など、数々の人気作品でヒロインを演じている声優・本渡楓さん。

■人と過ごすのがなによりも癒し

――休日はどんなことをしてリフレッシュしているんですか?

「最近は、洋服を買いに行くのが好きです。コロナ禍を境にどうしても通販が増えてしまったんですけど、最近お店に出向いてみたらやっぱり楽しいなって。試着したり好きな色で合わせてみたり。それに、お店に行けば行くほど店員さんが覚えてくれますし。いまだに人見知りではあるんですけどそれを忘れてしまうくらい、少しずつ仲間が増えていく感覚です。一つのお店にちょこちょこ通うと、『ちょうどいいサイズの洋服が入りましたよ』と教えてくれたりもするんですよ。そういう店員さんとのやりとりに癒しを感じて、その服を買います(笑)」

――ただ買うだけじゃなく、コミュニケーションも含めて楽しむんですね。ほかの声優さんと遊びに行かれたりもするんですか?

「そんなに多くはないけど、行くなら桑原由気ちゃんかな。彼女とはラジオを7年間やっていて、私のすべてを知っている人です。あとは、『ゾンビランドサガ』で仲良くなった田野アサミちゃんと河瀬茉希ちゃん。その2人なら、思い立ったときに『明日空いてる』『今日、新宿で3時間空くんだけど、誰か〜』とか、いまだに気軽に言い合える仲なのがありがたいですね」

――集まるとどんなことをして遊ぶんですか?

「遊ぶというよりも話し込むことが多いですね。『最近こんなことがあって、どうすればいいかな?』というような。テーマは仕事からプライベート、肩こりまで本当なんでもなんですけど、ほとんどは仕事のこと。お互いに相談したり、最近あったことを報告しあったり、という感じです。3人それぞれに性格、考え方、服の趣味までバラバラ。3人全員が似ている部分はないんですが、2人ずつで見るとどっか似ている部分もある。そのバランスがすごくよくて、意見を仰ぎたいときに頼りになるんですよね」

――例えば、本渡さんは最近どんなことを相談されたんですか?

「最近は、『頭と心で思うことが違うときにどうすればいいか』って相談をしました。『常識的に考えてこうでしょ』と頭ではわかっているけど、『いや、でも本心はこっちを選びたいわけよ。選ばないと後悔するだろうな......』とか、悩むときってありませんか?それでご飯が食べられなくなるくらい悩んじゃって。『ちょうど痩せたかったし、ラッキー!』とも考えたりはしたんですが(笑)。田野アサミちゃんと河瀬茉希ちゃんは、自分のそういう弱さも見せられる存在ですね」

――強い信頼関係があるんですね。

「すごく親身になってくれるので、私のことなのにまるで自分のことのように笑ってくれたり、怒ってくれたり。めちゃくちゃいい仲間です。あと"飲み友達"という意味では、諸星すみれちゃんと内山夕実ちゃんも。諸星すみれちゃんとは『ゆびさきと恋々』での友達役からのお付き合いで、内山夕実ちゃんとも共演がずっと多くて。お酒が好きな女性の声優さんってそんなに多くないと思うんですけど、その中でお互いに『やっと飲める人、見つけた!』という感じでいい飲み友達っていう感じです」

■彼女の目を通して、日本の魅力にもう一度気づく|『日本へようこそエルフさん。』マリー

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――『日本へようこそエルフさん。』について伺いたいのですが、設定からしてとても面白い作品ですよね。

「面白いですよね!私が演じているマリアーベル・通称マリーは異世界側、別の世界から小林裕介さんが演じる『北瀬一廣=カズヒホ』に連れられて日本にやってきて旅をするんです。もちろん見るものすべてが初めての経験で。『車って何?動くの怖い!』みたいな(笑)。"見るものすべてが初めて"っていうのって、現実にはもうないじゃないですか。『カツ丼っていうの!?美味しい!』なんて、羨ましいですよね。私も全部忘れて、もう1回カツ丼に感動したい(笑)」

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――マリーが驚くものって、私たちの日常にあるものばかりですもんね。本作はカズヒホにとってはファンタジーの世界が、マリーにとっては日本が、それぞれ異世界になっている、相互に異世界転生なのも面白い設定ですよね。

「彼女を演じてみて、それは実感しましたね。演じるときはキャラと同じ気持ちになるので、マリー役でいるときは私もルンルン、キラキラした気持ちになれるんです。そこから本渡楓に戻ると、『待って、日本ってこんなに桜がきれいだったんだ』『こんな美味しいものがあったんだ』とか。マリーを演じてから、改めて食べたくなったり、行きたくなったりした場所が結構あります。『私、いいところに生まれてきたかも』って(笑)」

――逆に、演技で苦労されたところなどはありますか?

「マリーのカズヒホに対する態度って、少しお姉さんぶってるんですよね。『まあ、あなたったら眠そうな顔してる』みたいな。でもマリー自身は、初めて体験する日本での生活に『何これ!』って子供みたいにキラキラと感動する部分もある。その対照的なキャラクターのギャップにどのくらい落差をつければいいのかな、というのは最初の頃、結構悩みました。

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『お姉さんぶる』も、やりすぎると違う。むしろ、純粋で見栄っ張りな気質もあって、自然とお姉さん的な振る舞いになってしまうくらいなのかな、とか。最初の頃はアフレコをしながら『ここかな、このくらいかな』って考えながらでしたね。とくに最初に日本に来て『カズヒホってそんなに年上だったの!?』というセリフは、その演技のバランスで出す声が変わってくるので、そこが自然に聞こえるようには気をつけていたと思います」

――お話聞いているともう一度、最初のほうを見返したくなりますね!現場での思い出話などは、ありますか?

「カズヒホ役の小林裕介さんからは、現場ではタメ口で下の名前で呼べと言われて、最初は『無理です!』って言ったんですけど、なんとかいまは『裕介くん』におさまっています。その流れで、内山夕実ちゃんも『夕実ちゃん』って呼ぼうって話になったんですけど、そのときはまさか二人が結婚するなんて思いもしませんでしたね(笑)。『日本へようこそエルフさん。』の現場は、わりと少人数で小林裕介さんと二人も、夕実ちゃんも混じって三人でアフレコをするときもあります。お二人とは共演する機会も多くて、掛け合いのシーンなんかもすごくリラックスしてのぞめていたと思います。カツ丼が出てきた回は、アフレコ終わりでみんなでカツ丼が食べたくなって、お店を調べてその足でみんなで食べに行ったりもしたなぁ(笑)」

――確かに、アニメを観ていてもあのシーンはカツ丼が食べたくなりました(笑)。あらためて、見どころなどありましたら教えていただけますか?

「物語を観進めていただくと、マリーとカズヒホの関係性が『どういう関係なんだろう』って、みなさんなんとなく気になると思うんです。子供の頃から夢の中でマリーに会っていたカズヒホと、カズヒホに日本の魅力を教えてもらうマリー。まるで恋人みたいに仲がいいような気もする二人なんですが、核心に迫る気持ちや言葉を口に出しているわけではない。美味しいものや美しい景色に加えて、その二人の関係性というところは、この作品の見どころにもなっているのかなと思います」

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取材・文/郡司 しう 撮影/小川 伸晃

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