坂本家の家訓が炸裂!元殺し屋の奥さんに拍手喝采「SAKAMOTO DAYS」【松井玲奈】

松井玲奈

松井玲奈 (役者、小説家)

役者、小説家。アニメ好きとしても知られる松井玲奈が毎回1つの作品を取り上げて、その魅力を再発見する。

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坂本家の家訓が炸裂!元殺し屋の奥さんに拍手喝采「SAKAMOTO DAYS」【松井玲奈】

今回ご紹介するのは絶賛放送中の「SAKAMOTO DAYS」。週刊少年ジャンプで連載中の本作は、全ての悪党が恐れ、全ての殺し屋が憧れた「坂本太郎」が主人公。スレンダーな体に誰もがときめくビジュアルを持った彼は、恋をして殺し屋を引退。その後、結婚して娘が誕生し、のどかな街で家族と「坂本商店」を営んでいた。しかし、以前のスマートな坂本の姿はどこへやら、彼はかつての面影がないほどに太っていた!

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(C)鈴木祐斗/集英社・SAKAMOTO DAYS製作委員会

日常から一転!坂本が見せるスピード感あふれるアクション

そこへ昔の殺し屋仲間である後輩・朝倉シンが現れることで物語が始まるのだが、この坂本、本当に昔はすご腕の殺し屋だったのか?と疑わずにはいられないほどの重たそうな体つきである。しかし、また殺し屋に戻ってほしいと懇願するシンの思いを、あっさりと断る坂本。それならば、殺し屋の掟(おきて)に従い、この世から去ってもらうことになると、坂本商店の中でバトルが始まってしまうのだ。見た目からは想像のつかない、機敏かつ無駄のない動きで応戦する坂本の姿からは、確かにかつてはすご腕の殺し屋だったことがうかがえる。アクションシーンもスピード感があり、見応えたっぷりである。

何より、坂本の声優を務める杉田智和さんの少し気怠(けだる)げな声とお芝居が、キャラクターにぴったり。穏やかながら重みのある一言で、坂本がいかに家族との幸せな生活を大切にしているかが伝わってくるのだ。

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(C)鈴木祐斗/集英社・SAKAMOTO DAYS製作委員会

普段は家族を愛する普通のかわいらしい奥さんだけど...

幸せで平凡な日常と、殺し屋が次々と襲ってくる非日常の対比は作品のポイントでもあるが、今回注目したいのは坂本の奥さん「葵」である。伝説的な殺し屋でもあった彼が恋をして引退をしたそのお相手、一体どんな人かと思いきや、ごくごく普通のかわいらしい女性。娘である「花」や坂本のことを深く愛し、料理の腕もピカイチ。食卓に並ぶおいしそうな食事を見ると、もしや坂本は胃袋をつかまれたのか!? やはり、意中の人を射止めるには胃袋からなのか!?と考えてしまうほど。

坂本に敗れながらも彼に助けられたシンが、坂本一家と食卓を囲む場面。シンは葵の手料理を頬張りながらあまりのおいしさに「うまい。あったかい」と涙する。そんな彼を見た葵は坂本に「昔のあなたとおんなじ反応してる」と笑顔で語りシンを見守るのだ。そのやりとりから、殺し屋という陰に潜んで生きている者たちの生活環境が垣間見える。温かい食事をとることなど、本当にまれだったのだろう。そんな温かな愛も、坂本が葵に惹かれた一つだったのかもしれない。

しかし、やはり元殺し屋の奥さん、そんな型にハマったいい奥さんではなかった。坂本がやって来た刺客を倒していたことに気がついた彼女はキッと表情を変え、かわいらしい文字で書かれた「坂本家家訓」を取り出す。「また人を殺したら離婚」と書かれたノートを前に、震える坂本。いやいや、そりゃあ人を殺しちゃいかんのですよ。

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(C)鈴木祐斗/集英社・SAKAMOTO DAYS製作委員会

幸せな家庭を守るため、坂本と葵それぞれの強さが光る!

他にも家族で遊園地に遊びに行った際に、殺し屋に追われる坂本。家族にバレないように次々と現れる敵を倒していくのだが結局、葵に騒動がバレてしまう。顔色を変える彼女に坂本は縮み上がり、体を小さくして震えている。自身に懸賞金が賭けられ、殺し屋が襲ってきていることを打ち明ける坂本に、葵は「なんでそんな大事なこと黙ってたの!」と怒るわけだが、私も心の中で「ごもっともです」と彼と同じように体を小さくする。そこでまた「坂本家家訓」の登場。

坂本家家訓 第6条「隠し事はしないこと!」 第7条「嘘はつかないこと!」

「こそこそするくらいなら堂々と片付けてきなさい!」とピシャリと言い渡す彼女に、さすが葵! おれたちにできないことを平然とやってのけるッ! そこにシビれる! あこがれるゥ!と私は一人で拍手喝采です。

幸せに満ちた家庭と、愛する人たちを守りたいと強く願う坂本の元には、これからもまだまだ殺し屋がやって来る。人を傷つけるために戦ってきた坂本が、今度は人を守るために戦っていく。日常と非日常をかいくぐりながら、坂本家に平穏な日常は戻ってくるのか。まだまだ続いていく放送を追いかけながら、坂本家の幸せを願うばかりである。

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