大同生命SVリーグ2025-26注目の新戦力を徹底分析「女子、男子ともにセッター移籍が目玉」【ぺえ】
スポーツ 生中継見放題連載コラム
2025.10.24
バレーボールをこよなく愛するタレント・ぺえによるバレーボール連載企画。今回は、10月に開幕する「大同生命SVリーグ 2025-26」に備えて行われた各チームの補強状況から、ぺえが気になる新戦力を紹介。男女ともに新体制の注目ポイントなどを語ってくれた。「大同生命SVリーグ 2025-26」は、男女全試合を「J SPORTSオンデマンド」でLIVE配信中。
男女共に移籍が多いなと感じました。チームによっては、昨シーズンのスタメンから総入れ替えになるくらいでした。
■女子
■中田久美ヘッドコーチ、籾井あき選手(SAGA久光スプリングス)

籾井あき選手(SAGA久光スプリングス)
(C)SV.LEAGUE
選手の移籍もそうなのですが、監督の交代もチームにとってすごく大きな変化なので、見逃せないところですよね。そんな中で、移籍の情報に一番驚いたのは、SAGA久光スプリングスの中田久美ヘッドコーチの帰還と籾井あき選手の加入です。
SAGA久光は、かつて中田監督から酒井新悟監督に代わって、じっくりと酒井監督が目指すチームに変わっていき、若手も順調に成長してすごくいいチームに仕上がっていたところだったので、知った時はとても大きな衝撃を受けたのと同時に、「これからどうなっていくのだろう?」と楽しみな気持ちになりました。
SAGA久光は長年、セッターの栄絵里香選手が、辛抱して、辛抱して、ずっと支えてきたチーム。「再びこのチームがトップを目指すためには、そろそろ起爆剤となるセッターが必要なのでは?」と感じていた中で、その最後のピースとして籾井選手が加入したのは、本当に楽しみです。
籾井選手自身も、東京オリンピックで中田監督と共に、いろんな経験をして、いろんな思いをして、今バレーボールと向き合っていると思うので、今までとは違う彼女のトス回しやメンタルの変化を見ることができたらうれしいですし、SAGA久光がまた常勝軍団としてトップに君臨するためには籾井選手の活躍が必要不可欠だと思います。
ミドルブロッカーの荒木彩花選手や平山詩嫣(しおん)選手、アウトサイドヒッターの北窓絢音選手、オポジットの吉武美佳選手といった、これからがすごく楽しみな若手の選手に加え、ここ最近いろんな経験を積んで成長している選手がすごく多いので、籾井選手の世界で戦ってきた経験と、若手&成長株の選手たちがうまく融合して、いいバレーボールにつながったら、と期待しています。
■内瀬戸真実選手、入澤まい選手、オクム大庭冬美ハウィ選手(埼玉上尾メディックス)

オクム大庭冬美ハウィ選手(埼玉上尾メディックス)
(C)SV.LEAGUE
そしてもう一つ驚いたのが、2022-2023シーズンで引退し、昨シーズンは職員として働いていた内瀬戸真実選手の埼玉上尾メディックスでの現役復帰&キャプテン就任です! 復帰してすぐにキャプテン就任ということに驚かされましたが、彼女としては一度プレーヤーから離れて外から埼玉上尾のバレーを見た時に、すごくもどかしい気持ちを抱いたのではないでしょうか。そして、いてもたってもいられなくなって、外から見て感じた"伝えたいこと"があったからキャプテンに就任したのかな、と。
埼玉上尾はすごくいい選手がそろっていますし、チームの雰囲気もすごく良くて、バレーボールファンからも期待が集まるチームなのですが、"最後の一押し"というところで悔しい思いをしているので、内瀬戸選手が2年間外から見た景色を、キャプテンとしてチームメイトに伝えて、どうチームが変わっていくのかというところに注目です。
そして、ミドルブロッカーの入澤まい選手、アウトサイドヒッターのオクム大庭冬美ハウィ選手という、かなり攻撃力の高い選手が移籍してきてくれたので、内瀬戸選手がもたらす変化との相乗効果で、これまでとはひと味違ったバレーが見られるんじゃないかと思います。
あと、リベロの岩澤実育選手が「ネーションズリーグ2025」や「世界バレー2025」を経て、とてもいい経験をして帰ってきてくれると思います。昨シーズンまでは山岸あかね選手がいたので、レシーバーとして試合に出ることが多かったんですけど、今シーズンはおそらく岩澤選手がメインでリベロを務めることになると思うので、そこも注視していきたいと思います。
■シルビア・チネロ・ヌワカロール選手(NECレッドロケッツ川崎)

シルビア・チネロ・ヌワカロール選手(NECレッドロケッツ川崎)
(C)SV.LEAGUE
NECレッドロケッツ川崎は今季も優勝候補の一角だと感じているのですが、昨シーズンに東レアローズ滋賀で大暴れしていたシルビア・チネロ・ヌワカロール選手が加入して、盤石の態勢になってきた印象です。
ただ、オポジットで和田由紀子選手と同じポジションなんですよね。和田選手は昨シーズンも同じポジションに外国人選手がいて、二枚替えのタイミングで入ってくるという展開が多かったので、「ネーションズリーグ2025」「世界バレー2025」ですごい活躍を見せてくれてパワーアップしているぶん、「もっと和田選手が見たいな...」というのが個人的な願いです。和田選手はバックアタックもありますし、サーブも良く、間違いなく日本の中でもトップクラスの攻撃力を有している選手なので、昨シーズンのように出場機会が少ないのはなんとももったいない...。今後の日本代表のことを考えた上でも、もっと試合を重ねてほしいんですよね。新しく就任した中谷宏大監督がどう采配を振るうのか非常に気になります。最も攻撃力が高い布陣は、佐藤淑乃選手、和田選手、ヌワカロール選手の3選手が同じコートでプレーするという状況だと思うので、ヌワカロール選手を佐藤選手の対角に...? うーん、なんとかならないですかねぇ...(笑)。
■松井珠己選手、西川有喜選手、横田真未選手(PFUブルーキャッツ石川かほく)

松井珠己選手(PFUブルーキャッツ石川かほく)
(C)SV.LEAGUE
PFUブルーキャッツ石川かほくに移籍してきたセッターの松井珠己選手は思い切ったトスワークがストロングポイントなので、今までのPFUのバレーと比べて、より速いテンポの観ていて面白いバレーを展開してくれるのではないでしょうか。
そして、大阪マーヴェラスから西川有喜選手、クインシーズ刈谷から横田真未選手といった即戦力の選手が加入しているので、松井選手とコンビネーションの完成度をどこまで高められるかが、今シーズンのチームの成績を左右するポイントだと思います。プレッシャーに感じてほしくないのですが、期待も込めてPFUは松井選手の活躍が今シーズンの鍵を握っていると思います。
松井選手は、毎回代表の候補には挙がるのですが、いつも悔しい思いを重ねているので、そういった思いも今シーズンにぶつけて、新天地ですけど無駄な遠慮などせず、チームを引っ張って行ってほしいです。日本以外のバレーボールの景色を知っている選手は松井選手しかいないと思うので、彼女しか見ていないものや経験していないものを、チームにスパイスとして加えてくれたら、チームが飛躍的に進化するはずです。
■ヌットサラ・トムコム選手(クインシーズ刈谷)

ヌットサラ・トムコム選手(クインシーズ刈谷)
(C)SV.LEAGUE
クインシーズ刈谷にコーチ兼任選手として入団したヌットサラ・トムコム選手は、タイの代表で、予想外のトスを上げてくる変幻自在のセッター。見ていて、勝手に面白い展開を期待してしまう大好きな選手です。コーチ兼任ということで、日本代表チームBに選出されている高佐風梨選手の成長を促すという意味でも呼ばれた気がしますね。彼女との邂逅によって、高佐選手が今後どう成長するのかにも期待してしまいます。
■花岡千聡選手(東レアローズ滋賀)

花岡千聡選手(東レアローズ滋賀)
(C)SV.LEAGUE
大阪・金蘭会高等学校から東レアローズ滋賀に新加入したセッターの花岡千聡選手は、今年の「バレーボール女子U21世界選手権」でベストセッターに輝いた選手で、すごく周りの選手の使い方が上手なんです。高校を卒業して間もないと思うのですが、いいトス回しに加えて、トスに安定感もあって、「卒業してからも、すごくいいバレーボールを学んでいるな」と感じています。しかも、若いのにすごく度胸があって、どっしりと構えていて、メンタル的にも強そうな印象を受けたので、まだまだ未知数ではあるのですが、今後が楽しみな選手の一人です。同じチームの先輩にベテランの田代佳奈美選手がいるということも、彼女にとってはすごくいい環境だと思うので、田代選手からたくさんのことを学んでほしいと思います。
■男子
■関田誠大選手、小川智大選手(サントリーサンバーズ大阪)

関田誠大選手(サントリーサンバーズ大阪)
(C)SV.LEAGUE
男子の目玉は、なんといってもセッターの関田誠大選手とリベロの小川智大選手がサントリーサンバーズ大阪に移籍したこと。うそみたいな現実ですよね。セッターに関田選手、リベロに小川選手がいるチームとなると、「他のチームは、どうやってサントリーを崩すんだろう...」と思ってしまうくらい盤石になりました。サントリーは昨シーズンの時点で安定感があったのですが、さらに安定感のある選手が加入したことで、他のチームとしてはあまり信じたくない状況になったと思います(苦笑)。
日本を代表するセッターとリベロが、高橋藍選手のいるサントリーに入ったことで、完璧すぎるセッター、リベロ、エースのトライアングルが完成してしまいました。このトライアングルから成る"安定感"を、他のチームはどう攻略していくかというのが、今シーズンの男子全体のキーポイントになるのではないでしょうか。

小川智大選手(サントリーサンバーズ大阪)
(C)SV.LEAGUE
■宮浦健人選手、佐藤駿一郎選手(ウルフドッグス名古屋)
前述したように、地力勝負の当たり前過ぎるバレーをしていては、サントリーの牙城を崩すのは難しいでしょう。そんな中で、ジェイテクトSTINGS愛知から移籍した宮浦健人選手とフィンランド帰りの佐藤駿一郎選手という、爆発力のある2選手が加入したウルフドッグス名古屋は、その可能性を持っていると思います。WD名古屋は元々、水町泰杜選手などの勢いのある若手選手がたくさん所属しているので、持ち前の爆発力でどこまで振り切れるかというところに期待感がありますね。
昨シーズンは、サントリーとの準決勝で「あと一歩で勝てなかった」という悔しい思いがチーム全体としてあると思うので、その悔しさを包み隠さず、アグレッシブにサントリーにぶつかっていってほしいです。
■永露元稀選手(広島サンダーズ)、大宅真樹選手(日本製鉄堺ブレイザーズ)

大宅真樹選手(日本製鉄堺ブレイザーズ)
(C)SV.LEAGUE
また、関田選手が代表活動をお休みしている間に、同じポジションを任された永露元稀選手と大宅真樹選手も移籍しました。このタイミングで、特に期待されている2人のセッターが新天地でバレーするというのが、すごく彼らの成長につながるように思い、ぜひ応援したいなと思っています。やはり代表でプレーするとなると、所属チームが違う選手にトスを合わせなければならなかったりと、どうしても対応力が求められるので、いろんなタイプの選手に、いろんなパターンのトスを上げて、たくさんの経験を積んで、どんな選手に対してもすぐにトスを合わせられるようにスキルアップしてくれるんじゃないかなと思います。
2人とも、今はいろんな思いをして、もがきながら、苦しみながらバレーに向き合っていると思うので、そんな時に新しいチームでプレーするというのはものすごい財産になるから、必ず今よりパワーアップして、「関田選手の控え」なんて言わせないくらいのセッターになってくれると私は信じています。だから、個人的に"注目"ではなく、"応援"したいなって思っています!
皆さん「日本代表に勝ってほしい」という気持ちが強いのはもちろん分かるんですけど、選手に対する過度な期待や、残念な気持ちからくる心ない言葉などで、これから日本を担っていく選手たちの成長の芽を摘んでほしくないな、潰してほしくないな、という気持ちが個人的にあります。永露選手も大宅選手も実力のある選手ですし、「どのくらい伸び伸びと、自由にトスを上げられる環境を作ってあげられるか」が日本代表がより強くなるポイントだと思いますし、そういった環境作りが最優先なのではないかと思います。
たとえ優秀な選手がいたとしても、時代が変われば、必ず他の選手が入るものです。他の選手と比べるのではなく、「この選手にしか出せない味」を楽しんでいただきたいですし、しっかりとその部分を評価してあげてほしいです。私も学生時代はずっとセッターだったので、"勝っても、負けても、セッターの責任"じゃないですけど、何かどこかにそういう空気があるんですよね。アタッカー陣がそろっているチームだと、特にそういう空気がセッターの重荷になるというか...。作らないようにしていても生まれてしまうのが、バレーボールの変なところでもあるのですが、そういう変な空気が、これから活躍してくれる選手の才能を潰してしまうのは、とっても残念ですし、悔しいので、提言させていただきました。
■アントワーヌ・ブリザール選手(大阪ブルテオン)
アントワーヌ・ブリザール選手は、今シーズンの台風の目になるかもしれません。アタッカーに外国人選手が加入するというのは多いのですが、セッターが外国人選手というのはとても珍しく、日本のセッターとは全くタイプが違うので、相手チームにとっては、相当読みづらくなるのではないでしょうか。しかも、ブリザール選手はフランス代表でバリバリ活躍していて、プレーは一級品。大阪Bは昨シーズンも強かったですが、それに加えて、読み切れない攻撃をたくさん仕掛けてくるセッターが加入したことで、新しいフェーズに突入しましたね。
日本代表の甲斐優斗選手、西田有志選手、山本智大選手らも擁しているので、外国人セッターによる攻撃のバリエーションも含めて、今までになかったバレーの作り方、チームの作り方で、SVリーグに新しい風を吹かせてくれると思います。
※高佐風梨、高橋藍の「高」は正しくは「はしご高」
取材・文/原田健
ぺえ (タレント)
タレント。小学生からバレーボールを始め、中学時代に山形県選抜になった経験を持つ。バレーボールを愛してやまないぺえが、独自の視点でバレーボールの魅力を熱く深く伝える。
ぺえ (タレント)
タレント。小学生からバレーボールを始め、中学時代に山形県選抜になった経験を持つ。バレーボールを愛してやまないぺえが、独自の視点でバレーボールの魅力を熱く深く伝える。














